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マジカルD ~異世界でも横滑り~  作者: 咲舞佳
第二章 マジカルレーサー養成学校編
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第十六話 養成学校の一日

 マジカルレース養成学校に入学して1週間が過ぎた。


マジカルレース養成学校が軍隊並みに厳しいとは聞いていたがここまでとは思っていなかった。


まず、起床は6:00、着替えをすませ布団をたたみすぐに点呼場所へ向かう。その際布団、枕、カーテン、着替えた服等全て所定の位置、形がありこれが乱れていると教官のチェック後に鉄拳制裁を受けてしまう。


そう、べッドが乱れていただけで拳が飛んでくるのだ。このマジカルレーサー養成学校はそんなところなのだ。



 俺ももちろん殴られた。そして前の世界なら殴られた時に誰でも思うはずだ。「親父にもぶたれたことないのに! 」って。俺も最初殴られた時に思ったぐらいだ。


「歯を食いしばれ!」といわれて殴られたのだが歯を食いしばれなんて言われたの前の世界の小学校以来だ。昭和の時代にはまだ体罰なんて言葉が言われていなかったのですよ。


そしてこれは指導なのだそうだ。マジカルレースは700Kgもの鉄の塊が突っ込むとケガでは済まない危険な競技だ。


だからケガをしないため、それこそ命を危険にさらさないために日ごろから緊張感をもたせるよう指導しているとのことだった。


点呼場所へ集合したのち男子は上半身裸で寒風摩擦、女子はダンベル上げだ。もちろん冬もこのまま行うそうだ。これが終わり次第点呼がとられる。



 その後学校内の掃除だ。隅から隅まで掃除する。

掃除が終わり7:00から朝食となる。


朝食はもちろん食堂があるがすぐには食べれない。1年先輩である41期生が食べ終わるのを直立不動で待つのだ。


先輩が食べ終わるのを待ってから自分たちの食事になる。食事に許された時間は15分のみ。


しゃべっている余裕もないのほどだ。かき込むように食べ終わった後国旗並びにマジカルレース協会の旗を掲揚する。



 8:00から課業が始まり小休憩をはさんで12:00まで行われる。昼食、夕食も朝食同様だ。


13:00から17:00まで課業がありその後夕食となる。夕食後は自習の時間となっておりここで予習、復習をしっかり行っていないと課業の内容についていけない。


19:00から入浴でその後にやっと自由時間になる。そして21:00には就寝となる。本当の自由の時間と言えば寝る前の1時間ほどだろう。


寮内の電気は一斉に消され夜更かしなどできようはずもない。まだスマホどころか携帯電話すらない世界なのである。



 課業にはマジカルレースについての座学、整備技術、基礎体力、実技、教練などがある。中でも教練がとても厳しい。


教練とは気を付け、右向け右、左向け左、回れ右、休めをひたすら続けるのだ。少しでもタイミングが遅れようものなら怒声が飛び、それでもそろわなければ鉄拳制裁だ。


これが2時間ほどぶっ続けで行われる。男子はまだしも女子はきつい。体力的に耐えきれず遅れだす娘もいる。


さすがに女子には拳ではなく平手打ちだ。それでも前の世界ではありえない厳しさだが。


前の世界でボートレースが同じように厳しいということをTVで見たことあるがあちらは水面にぶん投げられていた。真冬にやられることを考えると身震いがする。


ボートレースはプロペラがあり落水すると直にひかれてしまうのでマジカルレースより危険が危ないというやつなのである。



 教練の最後は揃うまで終わらない。連帯責任だ。遅れる娘は決まってきていて中にあの元みつあみの娘タカハシさんも入っていた。


これに文句を言う男どもがいる。あの試験の時のヤな感じとその取り巻き3人組だ。あのヤな感じはミヤモトケンというらしい。そう、ヤな感じことミヤモトケンも試験に合格していた。


まあ、実技試験も初めて運転する受験者より魔導車を運転できてたしね。もちろん運転できれば受かるものでもなく初めて魔道車を運転する受験者も呑み込みの早さや要領の良さなど伸びしろも見られているだろうから。


憎まれっ子が世にはばかるどころかはびこってるなー、時代劇の仕事人的な人が片付けに来てくれないかなーと他人事のようにちょっと怖いことを考えていたが少々目に余る。


大抵ああいう輩に呼応するやつがいるのがなんだかなーと思う。類は友を呼ぶという奴だろうか。



 今日の教練後もヤな感じことミヤモトケンが声高に誰に言うでもなく文句を言っている。


というかヤな感じことミヤモトケンって言いにくいな、じゃあ「ヤなケン」だな。もちろん口には出さない。


俺は平和主義者なのだ。下手なことを言って余計な火種をまく気はそうそうないのだ。たまにあるんだ!ってツッコミはなしでお願いします。



「どんくせーやつのせいで教練が大変だぜ。ほんと学校辞めてくんねーかなー。」



ヤなケンが言った文句にそうだそうだと取り巻きがあざ笑っている。実際にこの厳しすぎる環境にすでに1名辞めている。


これはとりたてて珍しいことはない。毎年数名脱落者が出るのがマジカルレーサー養成学校なのだ。



 ちょうどタイミング悪くタカハシさんが通りかかってしまい文句が聞こえてしまったらしく身を固くする。


ちょうど一緒に来ていたヨーコがタカハシさんの肩を抱きよせるようにかばい、元ヤンキーのナカタさんがヤな感じ事ミヤモトケンに食って掛かった。



「あ!?なんだてめー! 言いたいことがあるなら目の前で言えや!! 」



ナカタさんの剣幕にちょっとビビりながらもヤなケンが言い返す。



「だってそうだろう? そいつらのせいでどれだけ教練が長引いてると思ってんだ! 」



「なんだとてめー!! 」



おっと、これ以上はいけない。ナカタさんがつかみかかって殴りそうな勢いだ。



「ちょっとまって。ナカタさん落ち着いて。」



俺は慌てて止めに入った。暴力沙汰を起こせば退学なのだ。



あ!?って顔で振り向いたが俺の顔を見てナカタさんはお前かと言って引いてくれた。


そのまま俺はヤなケンに言葉を続ける。



「ミヤモト、お前連帯責任の意味知ってるか?」



俺は唐突にそう告げた。ヤなケンは忌々しそうに俺に食ってかかった。



「あ!?もちろん知ってるさ! だから教練でこれだけ長引いてんだろうが!! 」



ナカタさんとやりあい始めた手前引けなくなっているのかどんどんヒートアップしているようだ。



周りも何事かと人が集まり始めた。俺は説明を続ける。



「いや、そうじゃない。ここでやる教練の連帯責任とは組織としての一員であることを自覚するためのものだ。組織とは個人の集合であり、個々人には得手不得手がある。それが証拠にお前タカハシさんより座学の小テストの点はよくないだろう?」



週の終わりには小テストがあるのだ。タカハシさんはクラスで一番の点数だった。真面目な見た目通り学力はとても良い。



「組織として不得手な部分はカバーしあい、得手とする部分はより伸ばす、そのための方法を考えることが大事なんだ。不得手な部分を切り落とす組織の業績はあがらない。すなわり俺たちの能力が上がらないということだ。」



そう、俺は前の世界の仕事の現場で組織というものを嫌というほど見せられてきた。仕事ができない人を切り捨てるよりいかにフォローして組織全体のボトムアップを計るかが業績につながることを学んでいるのだ。



「あ!? なんでお前がそんなこと知ってんだ!? いい加減なことを言うなよ!! 」



ヤなケンはヒートアップして俺の言葉は耳に入らないようだ。というか16歳が組織について語ってもなー。


あー、これは一発もらっちゃうやつかなーと覚悟を決めていると横から声がかかった。


仲裁に入る人物がいたのだ。




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