表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マジカルD ~異世界でも横滑り~  作者: 咲舞佳
第一章 マジカルレーサー養成学校入試編
11/53

第十一話 ヨーコの心配


内容に変更はありませんが文章の小変更を行いました。

 アマノヨーコは自分の番が終わり満足した気分と少し心配な気分でマコトの実技試験の始まりを見ていた。


マコトのことだから多分大丈夫だと思うんだけど、と思いながら今までのことを思い返していた。



 マコトは不思議な奴だった。いや、変な奴だった。家がお隣さんで物心ついたときから一緒にいることが多かった。


しかしヨーコが思い出せる一番昔の記憶でもマコトはすでに家の外をたまに通る魔導車をぼーっと見ていた。


最初はぼーっとしてるやつかと思ったらそうでもなく、魔導車以外のことは普通で何一つ取り柄のないそこら辺にいる男の子と何ら変わりなく見えた。


ただ、暇さえあれば魔導車を眺めるのだ。それは飽きることなく今も続いている。



 あれはヨーコとマコトが8歳のときだった。マコトの家にもとうとう魔導車がやってきた。


ヨーコの家にはまだやってきておらず「マコトんちいいなー。まどうしゃいいなー。」とヨーコは何度も羨ましがったのを覚えている。


当時はマコトと一緒に魔導車を眺めていることが多く今よりもずっと魔導車が好きだったのだ。



 そしてマコトが魔導車の運転席に座らせてもらっていたときのことだ。


ステアリングを握ったかと思えばいきなりマコトがびくんっ!と体を跳ねさせたのだ。見ているヨーコも驚いた。


見たことはないが感電した人がこのようになると聞いたことがあった。マコトのおじさんが何事かとすぐさまマコトの肩をゆすって大丈夫か聞いていた。


マコトは呂律が廻っていなかったようだが大丈夫だったようだ。ヨーコはほっとしたのを覚えている。



 その後からだろうか、マコトがより魔導車好きになった、いや異常に固執するようになった。


マコトは街中でもほっとくとふらふら魔導車のほうへ呼び寄せられるように行ってしまうのだ。傍から見ると魔導車の前に飛び出しそうでヨーコは何度も注意した。


通りすがりの人に自殺と間違えられて止められたこともあったとマコトが言っていたほどだ。しかし何度注意しようともマコトが魔導車を見ようとするのをやめなかった。



 中等部に入ったころだろうか。マコトがいきなり「俺、前世の記憶があるんだ。」と言い出した。


そのときはいきなりのことで「寝ぼけるのもいいかげんにしなさいよ。」と一蹴してしまったが、マコトの異常ともいえる魔導車への固執から心配になってきた。


そのままどこか違うところへ行ってしまうような危機感を持つようになったのだ。


学校でも窓から魔道車を眺めているマコトがどこかに行ってしってしまわないよう、引き留めるようにいつもちょっかいを出すように声をかけるようになった。



 それに加えマコトはマジカルレースに夢中だった。ヨーコが初めてマジカルレースを見たのはマコトと一緒にお互いの父親に連れていかれたときだった。


初めて見たマジカルレースでヨーコははしゃぎまわるほど興奮していた。


マコトもはしゃぎはしなかったがフェンスに顔をへばりつけんばかりにマジカルレースを凝視していたのでよほど興奮していたのだと思う。


はじめのころはヨーコもマジカルレースへ父親について行っていたのだが年齢を重ねるごとに興味は薄れていった。


しかしマコトはそうではなく事あるごとに父親にねだってマジカルレースへ連れて行ってもらっていた。それこそマコトが行きたいがために父親を引っ張っていく勢いだった。



 そしてマコトが16歳になったある日学校でいつものように魔導車を眺めるマコトに聞いたのだ。


マジカルレーサーになるのかと。それまでマコトに直接聞いたことはなかったが様子を見ていればわかった。


マコトは迷うことなく「おう。」と言った。学校を辞めるとも。



 それを聞いたヨーコは決心した。このままだとどこかへ消えていきそうなマコトを放ってはおけない、自分もマジカルレーサーになろうと。


マコトはあたしが見ていなくてはだめなのだと。どこかへ行かないよう監視が必要だと。


ヨーコはそれが恋愛感情なのかどうかは分からなかった。ただマコトがこのままマジカルレーサーになってヨーコの知らないところへ行ってしまう、それこそ消えてしまうかもと考えるといてもたってもいられなくなったのだ。



 今は昔ほどではないが魔導車も好きだしマジカルレースも面白いと思う。何かで競争するというのも好きだ。


自分で言うのもなんだが中等部ではチアリーディング部で主将として全国まで行ったほど運動神経には自信がある。


学校の勉強も全く問題がない。マコトよりどちらも優れているという自負もある。マジカルレーサー試験も今からでもなんとかなるはずだ、とヨーコは考えていた。



 そして予想通り第一次試験を無事にクリアし第二試験でも難なく実技試験をやり遂げて見せた。


結果はこれからだがたぶん大丈夫なはずだ。試験官の操作をしっかりと目に焼き付け動きをトレースできたはず。


試験官がデモ走行の途中でやってくれた実戦さながらのターンは無理だったが、それでも他の受験者よりもしっかり運転できたと思う。



 試験官のデモ走行が始まり3周して帰ってきたマコトだがずいぶんと興奮していた面持ちだった。


声は発していないが目を見れば分かる。いつも魔導車を見ている以上に目を輝かせているからだ。


もうこれでもかというぐらい爛々としている。目が血走りそうなほどだ。それでも事前の点検、確認は問題なくこなしており魔給を行った後運転席へ乗り込んでいった。


魔導エンジンが始動され、試験車両がスーッと走り出した。ヨーコの時はクラッチの感触をつかむのに少し時間がかかったがマコトは一発だった。


これを見てもヨーコは何も驚かなかった。これくらいはやるだろうと思っていた。それどころかもっと、それこそ予想のつかないことすらやりそうに思っていた。


それぐらい今までの魔導車への固執が異常だったから。



 ホームストレートを全開で加速していき、シフトチェンジもスムーズだった。ヨーコよりもスムーズで試験官と同じくらいだったかも。


そして第一ターンマークへ向けてブレーキングを始めたときだった。いきなりフロントタイヤがロックした。一瞬のスキール音とともに煙が舞い上がる。


ロックは一瞬だったがピットにいる多くの受験者たちが何事かとマコトの試験車を見た。


隣の班からバカにする声がした。



「あいつブレーキでアンダー出しやがった。ヘタクソだな。」



あのイヤーな感じのやつだ。呼び方が長いから「ヤな感じ」と呼ぼう。とマコトと一緒のことを考えるヨーコだった。



 アンダーというと車が曲がるときに減速が間に合わずブレーキを踏みすぎフロントタイヤがロックしたりしてステアリングを切った方向通りに曲がらず外に飛び出ていくことだ。


しかしこの場合のフロントロックを差す言葉ではなかったがヨーコにはそこまでの知識はなかった。



 だがヨーコは思った。マコトだったら他人が失敗してもそんなことは絶対に言わない。あたしが失敗して転んでもいつも隣で励ましながら手を差し伸べてくれると。


立ち上がることが大事だとリカバリーすることが大事だといつも言っていた。そんなマコトを見ていたからこそ中等部のチアリーディング部で主将を務めみんなを引っ張って全国へ行くことができた。


ヨーコがそう思いながらキっ!とにらむとヤな感じは「けっ!」とそっぽを向いた。


一次試験のときから「けっ!」としか言えないのかとヨーコはいら立ちを隠しきれない様子だったが、マコトはそのまま魔導エンジンを何度か吹かせながらブレーキングしていた。



 試験官が実践同様に行うと言っていたときと同じブレーキの仕方だ。確かブレーキを踏みながらアクセルを踏んでいたやつだ。


試験官の説明もなかったしこれはさすがにまねできなかった。マコトはあれができたんだとヨーコは感心した。


マコトはその後しっかりと減速し綺麗に第一ターンマークをターンしてバックストレートへ立ち上がって行った。


ブレーキをロックさせたのはほんの一瞬の事だったようだ。マコトは本当にいろんな意味で目が離せないところがあると、心配になりながらも期待する目でヨーコは見るのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ