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没落令嬢の旦那様  作者: くまきち
第一部:初めての春
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エピローグ ~なんてことない一日~

「んん……」


 窓の外が明るくなっているみたいで、日差しが部屋に入ってきた。

 鳥の鳴き声も増えてきて、ああ朝だなとわたしはぼんやり目を覚ます。


「んー……、やっと涼しくなったかな」


 春先に結婚してから半年。夏の暑さも和らいだ秋の日。

 腕を伸ばして勢いよく布団を剥いで、天気を見ようとベッドから出ようとして気が付いた。


「……動けない」


 長い腕がわたしの身体に巻き付いていて、起き上がれても動けない。

 腰の辺りに顔が埋まっているのが見えるけど、小さな寝息が聴こえるだけで起きる気配は皆無だ。

 さらに窓から差し込む光が銀の髪に反射して、今日も憎らしいくらいの輝きを放っている。


「起きないな、これは」


 前まではわたしが先に寝て、先に起きていたからわからなかったことだけど。シュトレリウスは寝付きはいいのに寝起きが悪い。とても、かなり、ものすごく。


「すー……すー……」

「……」


 仕方がない。だってまだ起きないんだもん。

 だから剥いだ布団を寝ている旦那様の上に被せて、わたしももそもそと潜り直す。


「すー……すー……」

「気持ち良さそうに寝てんなあ」


 起きたら目付きが悪くなるのに、寝ている時は垂れ目とかどういうことだ。可愛いすぎか。


 わしゃわしゃと頭を撫でたら、ちょっとだけ緩んだ腕の中に潜り込む。

 外はいい天気みたいだけど今日は休みで、全然起きない旦那様の規則正しい寝息が聴こえるだけの布団の中。


 起こすの面倒だから、ちょっとくらい朝寝坊をしてもいいよね。


 起きたら朝食を一緒に食べながら、今日は何をするのか訊いてみよう。


 秋薔薇が見頃だから、食後のお茶を庭園でするのもいいかもね。デザートは何がいいかなあ?秋はやっぱり芋か栗かな。


 それともたまには街に出て、美味しいものでも食べに行こうか?

 まだローブは被りっぱなしだろうけど、はぐれても目印になるからいいってことにしてやろう。手はいつも繋いでいるから、はぐれないとは思うけど。


 半年前までは考えられなかった、考えたこともなかった一日の過ごし方が起きたら待っているなんて。


 なんて普通の、いい一日なんだろうか。


「起きたらおはようって言ってよね」

「ん」


 まだ眠っている旦那様の頬をつまんだら、次は三人でどこに行こうかと思いながら、わたしもゆっくりと瞳を閉じていく。


 ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

 異世界で転生で魔法使いも出てきますが、普通の恋愛もののつもりです。


 少しでもお楽しみいただけていたら幸いです。


 こちらまでを【第一部】として、現在、続きにあたる【第二部】投稿中です。

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