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1.黒い魔法に潜む「影」
ここは地下室。朝も晩も彼には関係ない。椅子に座って「黒いもの」を生み出し続けるこの男には、唯一にして絶対の野望があった。「ーまだだ、まだ早いー」
すぐにでも壊しに行きたい気持ちがあるが、彼は自分を抑えつつ作業を進めた。
彼はもう、以前のように笑ったり、泣いたりすることはないだろう。そのような感情は、もうずいぶん前に失ってしまっていた。彼は覚えている。青が渺然と構えていたのを。赤が赫赫と睨んでいたのを。そして黒が鬨を上げたのを最後に、全てが失われてしまったのを。