1:『先輩!?』
中華街戦争から、2週間が経った。デイブの家はまだ改修中で、今はショーンの家を拠点にしている。
今日は暇だったし、俺たち3人は一緒に外をぶらぶら歩いていた。
「暇だなー。何するよ?」
「何するっつっても、ここら辺ゲーセンくらいしか無くないか?」
「んじゃ、ゲーセン行くか?」
「そうだな。行くか」
俺たちはゲーセンに向けて歩き出した。すると、「あのー」と背後から話しかけられた。
「あ?」
そちらを振り返ると、いかにもチンピラ(人のこと言えねぇけど)というような奴らが3人立っていた。
「んだよ?」
俺はそちらに向いて身構える。
「グレン先輩!デイブ先輩!お久しぶりです!」
「は?」
突拍子もないこと言われてきょとんとする。
「なんだ?グレンたちの……後輩?」
ショーンは俺たちとコイツらを交互に見比べている。
「覚えてないですか?ローリンズ高校1年のルークですよ!」
ローリンズ高校ってのは、俺やデイブが通っていた高校だ。
「ん……?あ、お前らどっかで見たことある顔だと思ったら……思い出したぞ」
コイツはルーク・コールマン。たしかコイツがカツアゲされてた所を俺が助けてやったんだっけ?
「良かった。で、こっちの2人はマイクとケネスです。ローリンズ高校の俺の同級生です」
「「よろしくでーす」」
「ふーん……あ、コイツはショーン。最近つるんでるんだ」
一応ショーンの紹介をしておく。
「ショーンさんよろしくお願いします」
「あ、あぁ。よろしく」
「……んで、なんか用か?」
「あ、それなんですけど……」
「俺たち、ギャング始めました!」
……は?今なんて?ちょっと聞こえなかったなぁー。
「はぁ!?お前ら何やってんの!?」
デイブが焦りまくっている。
「先輩たちがギャングやってるのは知ってますよ!俺たちも先輩たちみたいなクールな奴になりたいんです!」
「……はぁ……お前らなぁ……。俺たちゃ別にクールなんかじゃねぇし、お前ら他にやりたいこと無いのか?やめとけ」
「やです」
「即答すんなよな……。まぁ、俺たちがそんなとやかく言えることじゃねぇしもう言わねぇけどよ。で?話はそれだけか?」
「まだありますよ。先輩たちのギャング『スラッガーズ』と、俺たちのギャング『タッパーズ』で、つるみません?」
「はぁー?」
「俺たちがヤバイ時にちょっと手伝って欲しいんですよ!俺たちまだ3人しかいないし……。その代わり俺たちも何かあったらすぐ手伝いますから!」
デイブがため息をつく。
「お前らなぁー……そんな簡単に言うなよ。お前ら、死ぬかもしれないんだぞ?覚悟はできてんのか?」
「もちろん。そのくらいの危険なんていくらでも覚悟してやりますよ!」
「当たり前でしょ!」
「えぇ。もちろん」
ルークたちは頷きながら答える。
「……そうかい。ほら、これが俺の携帯番号だ。何かあったらかけな」
そう言ってデイブは財布に入っていたレシートの裏に、持ち歩いているボールペンで自分の番号を書いて渡した。
「……!!ありがとうございます!」
ルークは大喜びでそのレシートを受け取った。
「喜ぶのはいいけど、お前の番号も教えろよな」
「あ、はい。てか、今携帯持ってます?」
「ん?持ってるぞ」
「じゃあ普通に交換した方が早いんじゃ……?」
「あ、たしかにそうだな。ハッハッハ」
なんかこう……たまーに抜けてるよな、デイブって。
その後番号を交換して6人で歩き出した。
「先輩、今からどこ行くんですか?」
マイクが俺の顔を横から覗き込んで言う。
「ゲーセン。一緒に行くか?」
「あっ、行きます行きます!」
俺たちは6人でゲーセンへと向かった。
5分後、ゲーセンにて。
「先輩たちは何やるんすか?」
とケネスが聞いてきた。
「んー……まぁ、レースゲームかなぁ。ガンシューティングは現実の方でウンザリだったりするしな」
デイブが溜息をつきながら答える。
「えっ、やっぱりドンパチとかやるんすか?」
ルークはデイブの方を見る。
「あたりめぇだろ?なんだ、怖いのか?」
「いや違いますよ!?でもウンザリするくらいって、そんなにドンパチ経験あるのかな、って」
「あるぞ。もうギャングやって1年とちょっとになるからな……。ちょうど2週間前にドンパチやって来たばっかりだぞ」
「えぇー!スゲェ!凄いですね!」
ルークたちは目をキラキラさせている。ホントに怖くないんだなコイツら……。
「あとお前らさぁ……」
デイブが呆れたようにルークたち3人を見る。
「へ?」
「つるむんなら敬語はやめろ。なんか他人行儀感が凄いぞ」
「えっ、タメ語でいいんですか?」
「いいから言ってんだろ?あと名前も呼び捨てな」
タメ語の方が気楽なんだよなぁ。
「うんうん」
ショーンが俺に賛同する。
「……へへ、じゃあ、これからはタメ語にするぜ。よろしく」
「おう。よろしくな」
その後俺たちはゲーセンで遊びまくった。ゲーセンで何したかは、また別の話。
ゲーセンで遊び尽くし、俺たちはゲーセンから出た。
「ふぅ……久しぶりにゲームでガンシューティングやったぜ……」
デイブは手を上で組んで伸びをする。結局ガンシューティングやったのな。
「さーて、ゲーセンに入る前が午前9時で今は……お、今1時か。丁度今昼飯時だなぁ。どうする?お前らも一緒に食いに行くか?」
「おおっ!」
「行く行く!」
マイクがノリノリで応える。
「……あ、でも俺もう持ち合わせがねぇや……」
ルークは財布の中を覗きながらため息をついた。
「今日は奢ってやるよ。1回くらい奢っとかないとな」
今日は俺の持ち合わせが多かったしな。
「良いのか!?」
「あぁいいぞ。ただし、ファミレスで安い物限定な」
「やったぜ!あざーす!」
まったく、コイツも現金なヤツだなぁ……。
「グレンが奢るってんなら、俺たちも奢ってやらなきゃなぁ。な、ショーン?」
「そうだな」
デイブとショーンも奢る気のようだ。
「やったぁ!」
「ありがとう!」
マイクとケネスも大喜びだ。
というわけで、俺たちは近所のファミレスへと向けて歩き出した。
近所のファミレス『リカーション』。ここは珍しくファミレスのくせにカクテルやらその他諸々酒が飲める店だ。晩飯時には、呑んべぇなオッサンがいっぱい居るし、もう少し遅い時間には、仕事帰りのOLやらサラリーマンが集まっている。
「いらっしゃいませ!何名様ですか?」
「6人」
「6名様ですね!四番テーブルへどうぞ!」
俺たちは指定された席に座る。こちら側にはスラッガーズの3人、向かいにルークたちタッパーズの3人が座る。俺ら側は奥からショーン、俺、デイブ、ルークたちの方は奥からケネス、ルーク、マイクというふうに座った。
「ご注文がお決まりになりましたら、そこのボタンを押してお呼び下さい」
店員はお冷を置いて立ち去った。日本式の接客を取り込んでるらしいけど、すごく親切だよな、ここ。
「好きなの選べ。ただし安いのな」
「もちろん」
ルークたちはルンルン気分でメニューを開く。
「俺たちも選ぼうぜ」
「そうだな」
俺はチーズハンバーグ、デイブはペッパービーフステーキ、ショーンはツインハンバーグ……ちょっと待ったショーン地味にめっちゃ食ってんな。
「じゃあ俺らこれにする」
ルークたちはペッパーハンバーグのお得セットにするようだ。
「それでいいな?店員呼ぶぞ」
テーブルの端に座っていたショーンが空気を読んでボタンを押した。ピンポーン、と音が鳴り、店員がこっちに早足でやってくる。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
「えーっと、コレとコレと…コレ一つずつ。で、このセットを3つ」
デイブがそそくさとメニューを指さして注文する。
「かしこまりました!少々お待ちくださいませ!」
十数分ほどで注文した料理が運ばれてきた。
「お待たせしましたー。では、ごゆっくりどうぞー」
俺たちは持ってこられた料理を食べ始めた。