4:『After Wars』
中華街戦争の次の日。
「……ん……ふわぁあ……」
俺はショーンの家のソファーの上で目が覚めた。……あー、そういや昨日はみんなで祝杯あげてどんちゃん騒ぎしたんだっけか……やべ、あんまり記憶無い。しかも頭痛てぇ。
「……今何時だ?」
時計を見ると午後2時。……めっちゃ寝たなぁ。
周囲を見回してみると、ビールやらウイスキーやら、なんか漢字……だったかな。そんな文字で『霧島』(漢字の横に『kirishima』と書いてあるから多分そう読むんだろう)とか書いた酒の瓶やらが転がっている。普段飲まねぇのに、こんなに飲むもんじゃねぇな。他にはぐっすり眠ったデイブの姿も見える。
「よっこらせ」
ソファーから立ち上がり、また周囲を見回す。そういや、ショーンはどこだ?
「おい、デイブ。起きろ」
俺はデイブを揺さぶって起こそうとする。
「……んー、なんだよ……ふぁあ……」
デイブはわりと寝起きはいいみたいだ。デイブはゆっくりと身体を起こす。
「ショーンが見当たらねぇぞ」
「はぁ?アイツどこ行ったんだ?」
すると突然ソファーの後ろからショーンが顔を出した。
「ふあぁ……あ、2人ともおはよう」
「おはよう、ってもう午後2時だぞ」
「えぇっ」
ショーンが時間を聞いて立ち上がる。次の瞬間俺たちは目を疑った。
「……ん?どうかした?」
「「お前……なんでスッパなんだ?」」
「え?……!?」
ショーンも自分の姿を確認してギョッとする。そう、ショーンは素っ裸だったのだ。ショーンって酒癖悪かったんだなぁ。
「えぇ…………ちょっとシャワー浴びてくる」
ショーンは顔を真っ赤にして浴室へと歩いて行った。
「……」
シャワーから戻ったショーンは、ソファーに座り落ち込んでいた。
「まあまあ、次、気をつけりゃいいだろ?どーせ俺らしか見てねぇんだから、気にすんなって」
「……うん」
……これは話を切り替えた方が良さそうだな。
「そういや、チャイニーズマフィア潰したわけだけどさ、いつレスターさんに会いに行く?」
「明日行こうか。結構な数の弾使ったし」
「そうだな。てか頭痛てぇ」
「俺も。これ車運転できなさそうだし」
「じゃあ、今日はもう寝よう。早いけど、多分寝れるだろ」
「そうだな。今日の晩飯は食いたい奴だけコーンフレークでも食っとけ。んじゃ、寝る。おやすみー」
デイブはショーンに貰った自分の部屋へと入って行った。
「俺も寝る。おやすみ」
俺もそのまま自分の部屋でベッドに横になり、眠りについた。
次の日。二日酔いも治り、俺たち3人は『Tony-Gun』へと向かった。店の扉を開け、中に入る。
「お、らっしゃい。今回はいつもより来る間隔が短いな」
「うっす。いやー、色々あって弾を大量に使っちゃってさ」
デイブはいつも通り世間話をするかのようにおっちゃんと話す。
「ほぉ。やっぱりアレか?この前のチャイニーズマフィアでも潰したのか?」
「お、よく分かったな」
「やっぱりか。でもお前たちどっちかっていうと、『やられたらやり返す』スタイルじゃなかったっけ?」
「アイツら俺達の隠れ家ボロボロにしやがったから、実際仕返し」
「はぁ!?隠れ家ボロボロって、相当やられたなぁ」
「まあな。でも保険が効くから大丈夫大丈夫」
「そうかい。んで、お求めはどの弾だ?」
「えっと、9×19mmを200発と7.62×39mmを240発、7.92×57mmを1箱……あ、あとマシンガンの弾薬ベルトも3本くれよ」
「お、マシンガン使ったんだな?えっと……これとこれと……たしかお前たちのマシンガンはPK74だったから……7.62×54mmRか。……はいよ」
「あ、あと12ゲージのOOバックショットも1箱くれ」
「はいはい」
弾薬の箱で山ができる。いやー、凄い量だよなぁ。
「えーっと、お会計420ドルだ」
「はい」
デイブは500ドル出した。
「まいど。はい、釣り80ドル」
「ありがとう……あ、おっちゃん。この銃中華街で拾ったんだけどさ、これの予備弾倉って売ってる?」
デイブが自分の背負っていたリュックの中から一昨日拾ったサブマシンガンを取り出して見せる。
「ん?こりゃあ『UZI』だな。あぁ、もちろんあるぞ」
「じゃあ、それを8本くらいくれ」
「はいよ。80ドルだ」
「はい」
デイブはさっきのお釣りを出した。
「まいどー」
少し間をあけておっちゃんが再度口を開く。
「……レスターに会いに行くんだろ?そこの戸は開いてる。行き方分かるよな?」
「あぁ。ありがとなおっちゃん」
俺たちは地下の集会所を目指して店の奥へと入って行った。
WECA、地下集会所にて。
「アイヤー、ホーント助かったよぉ!」
俺たちの目の前には、地味に甲高い声でなまりをきかせながら喋る中国人がいた。レスターがこの男の紹介をする。
「コイツはホン。あのチェン・タオの懸賞金の依頼者だ」
「あぁ、この人が」
デイブは納得したように頷く。
「これでまたお店出せるー!ホーントにありがとーネー!!」
「ホン、報酬金は?」
「あー、そうだったねー。はい、これ約束のお金3300ドルヨー」
ホンは分厚い封筒を手に持ったカバンから取り出した。
「どうも」
ショーンが封筒を受け取り、中身を数えてカバンの中に入れる。
「感謝してもしきれないヨー!あ、そうだ、噂によると中華街のマフィアたち、中国に帰るみたいネ。嬉しいけど、その後誰もいなかったら多分またマフィア戻ってくるヨ。良かったら中華街を君たちのナワバリにしてほしいネ」
「いやー、でも隠れ家にする場所も隠れ家買う場所も無いし……」
「それなら心配要らないヨー。僕が大家をやってる小さな空き家が中華街にいくつかあるネ。それの1つを無償で貸してあげるヨ」
デイブが腕を組んで考える。
「まぁ、それなら……」
「交渉成立ネ!よろしく頼むヨー!」
「え、えぇ……」
半ば無理やり話を進められてデイブは困惑している。レスターが爆笑する。
「アッハッハッハッハ、まぁ、堅いこと言わずに頼まれてやってくれ。縄張りが増えるのは良いことだろ?」
「まぁなぁ……」
「ま、いいんじゃねぇの?」
「俺はいいと思うな」
「そ、そうか……?じゃあ、分かりました。中華街も縄張りにさせてもらいます」
ホンは嬉しさに跳ね回っている。
「やったネ!これで少しは商売も安泰ヨ!これからよろしくネ、スラッガーズの人たち!」
「……ま、いっか」
縄張りがまた広がった。
「……それじゃ、俺たち帰りまーす」
「おう。またな。纏まった金が欲しかったらまたWantedをこなしに来るといい」
「ま、その時はもちろん来ますよ。それじゃ」
俺たちはレスターに一礼をして歩き出した。
「またなー」
レスターもこちらに手を振って見送ってくれた。
「お、おかえり」
地上の店に戻るとおっちゃんが商品を磨きながら出迎えてくれた。
「うぃ。じゃ、また入り用なり世間話があったら来るぜ」
「おう。じゃーなー」
俺たちは店を出て、隠れ家へと向けて出発した。