原因究明01
階段出口で呆然とその風景を眺める。
紫色の夕日の中、誰もが列車の乗降口の前に並んで列車の到着を待っている。
階段を下りてくる気配に振り向くと四十代前半、スーツ姿の小太りの男性がにかっと笑っていた。
「君たちはまだ列車に乗るには早いんじゃないかな?」
「見送りに」
〈俺〉は適当に返事をするとおっさんは「なるほど」と適当に合わせたようにも思えた。
「列車が遅れているようだけれど?」
〈姫〉が指摘するとおっさんが頷く。
「ここ三日ほど列車が来ないんだよ。邪魔をされているのか、私たちが来るべきはずのホームに入れないんだ」
場所はここで間違っていないはずなのに、と付け加えるおっさんに〈俺〉は違和感を覚えていた。
「何かが入り口で邪魔をしている?」
「なぜ?」
割って入ったのは〈姫〉だった。
「〈サクラ〉が〈姫〉と何か示し合わせていたことが気になってね。あの子は何をしてるんだ?」
「なるほど〈騎士〉をつれてきてくれたんだね?」
おっさんが今度は何か確信したように呟く。
「待ってくれ、〈俺〉がどうこうすればこいつらは無事にいけるの?」
いける、となぜ思ったのかわからないが、彼らを無事に見送れる気がした。
「まもなく…三番線、上り列車が入ります」
恐ろしく聞き取りにくく、ノイズの入った低い声がぼそぼそと聞こえてくる。
列車特有の振動、音が入って来ると薄ら汚れた灰色の列車が駅のホームに滑り込んできて、ドアが開いた。
「お別れだ」
おっさんは列車に乗り込み〈俺〉は乗客の様子を見てぎょっとした。
影、影、白い影。
目を凝らすと全員沈んだ顔の乗客がお見合い列車に乗っている。
「乗車率は悪くないな」
〈俺〉が呟くと、列車のドアが閉じて走り出していく。
「出ようか」
〈俺〉は影も人もいなくなったホームで〈姫〉を促すと、二人して駅の改札をくぐった。
街の喧騒が突然戻ってそちらのほうに驚きつつも先ほどまで座っていたベンチに戻る。
「二時間過ぎてる」
「今は二十時前ね」
〈姫〉もそれは否定しない。
目の前を人が横切り、その向こうに〈サクラ〉が現れ、こちらに向かって歩いてくる。
「ありがとう、ここはね」
〈サクラ〉が言うには、死者が集まる場所らしい。
それがしばらく前にここで事故死した人物が通り道を塞いでしまっていて、どうしようもなかったらしい。
「その原因を取り除いた?」
「そういうことになるかな」
〈サクラ〉はにこりと微笑み、〈俺〉は〈姫〉を見ると満足そうな顔をしていた。