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ファーストコンタクト3

 喫茶店から出た〈姫〉を追いかけることにする。


 比較的〈姫〉の教室を突き止めることは簡単に出来たので安心していたのだが、目を逸らすと〈姫〉は視界から消えてしまう。


 またいなくなった。


 遊歩道のある道を進んでいくと、ふっと〈姫〉が消える。立ち止まって周囲をよく観察するとそこに〈姫〉は突然現れてゆっくりと歩いていくのが見え、追いかけると消える。


 その繰り返しだった。


 人間が簡単に消えるはずがないと思っていても、こうも蜃気楼のように現れたり消えたりされるとさすがに自分に視力障害が起こっているのではないかと心配になったりもするが、杞憂だろう。


 美しくかわいらしい〈姫〉は同級生から見ても魅力的な存在である。それが調査結果だった。


 時折、耳にする〈姫〉の噂は彼女に好意を持った人間がいて、失敗に終わったという話だけ。まぁ中学生になれば色恋沙汰もありえるのだろう。自分には無縁だったのでそこら辺は疎いので触れないでおく。


 〈俺〉は〈姫〉が再び学園に入ったのを見て確信した。


「何で外に出るんだ?」


「リーダーが大学生で、授業が終わらないとサークル研究室に来ないの」


「なるほど」


 大学教授執務室の入っている教授棟と呼ばれている建物に入り、エレベーターに乗る〈姫〉の隣で〈俺〉は納得した。


 徒歩で大学の建物の中は全て見て回ったのだがここは盲点だった。


 大学の教授や助教授たちの個別に与えられた執務室のあるここではないと勝手に決め付けていたのだ。


 五階の教授執務室の並ぶフロアの一室に入ると、八畳ほどの広さの部屋に楕円形のテーブルが置かれていて、その向こう側の執務机がこちらに向いて置かれてある。そしてそこに座っていたTシャツ姿の目つきの鋭い女性がこちらを見た。どう見ても勝気な性格だろう。


「遅かったじゃないか〈巫女〉がつれてくることになる予想は出来てたけどな」


 そしてこの口調だった。美人なのにもったいない気がするが、引っ張ってもらいたい装飾系だか草食系だかの男にはぴったりだろう。


「んで〈巫女〉なの?」


 どちらかと言うと魔女だろう、と思ったが〈観察者〉はにたりと獰猛な笑みを浮かべた。


「お前…〈騎士〉から見てどう思う?」


「俺ですか。俺からしてみると〈姫〉だと思いました」


「そりゃあいい。じゃあ〈姫〉だな」


 〈俺〉は上機嫌そうに笑う〈観察者〉に怪訝な顔をしていると〈姫〉は声を出さずに口だけを動かした。


 今日は機嫌がいいらしい、と。

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