あらし01
研究室で楕円形の会議テーブルに座り、メモリーカードを渡された。
〈姫〉と一つ席を開けて〈俺〉が座り、タブレットコンピュータにメモリーカードを入力する。
テーブル中央の全方位テレビを起動して空中に画面が展開してそこに映像が映し出されると、寝ていた〈観察者〉が執務机の上で起きてテレビを睨んでいた。
「おはよう〈騎士〉と〈姫〉、音量は下げてくれ」
そして再び〈観察者〉が机に突っ伏して眠り始めてしまう。彼女もまたいろいろと忙しいらしい。
映し出されたのは演劇部の演劇らしい。古い形式をそのまま保存し、構成へ伝える。様式美だろうか。
演目はシェイクスピアのテンペストだ。高校生がやるにしても、内容にしてもよく理解しにくい話だとは思う。むしろ演出が高校生には難しいのではないだろうか、とそんなことを思いながら眺めているといつの間にかうとうとしまった。
〈姫〉は真剣に映像を見ているが、一本丸々通す練習だということで話が長い。
すり鉢型の劇場、観客は誰もおらず、固定されたカメラ。赤いシートが並び観客に向けて設置され、木板のステージにスポットライトが当てられて演目が進んでいく。
妖精、怪物、魔女、神、王と様々な人物が入り乱れて来る。役者の顔と本名と役名を覚えるのに苦労しそうだったが、あきらめて寝た。
しばらくしてふっと目が覚めた。
顔を上げると劇の終盤、終わりも終わりだった。
ミラノ大公プロスペロー役の少年が劇場から観客に向かって何かを語りかけている。
確か…。
知っている内容を思い出そうとしたとき、〈俺〉は目を見開いた。
くるん、とプロスペローの首がかしげるように傾き、そのままに回転ほどして首がねじ切られるようにして頭がぽとりと落ちた。
「わーお」
「劇的なドローザカーテンね」
〈姫〉はこちらを見て、言外にどう思う?と尋ねている。
「本人が生きてるのなら話を聞きたいところだな」
「生きているけれどね、主役が抜けるにはこの時期にはちょっと厳しいと思う」
「あぁ…五月の初めにある進入部員獲得のあれね」
〈俺〉は一週間後に迫ったそれをキャンセルしたりキャスト変更したりは出来ないだろう。
「解決を求められたわ」
「やってみようか」
〈俺〉は首が落ちていても生きている人物に興味が沸いた。