めろんばーがー2
警護対象は〈狐目〉の兄であることはわかったし、相手が人間でないことも理解できる。むしろ最近ではずいぶん〈俺〉も柔軟な思考になった気がした。
〈姫〉や〈サクラ〉のおかげなのだろうか。
「環境には習うよりも慣れろってねぇ。お前の場合は何でも対応できそうだ」
「嫌味だなぁ」
〈ゴリ男〉に〈俺〉は笑って見せるも、どうもうまくごまかせなかった。
学校に通う必要もないはずなのにだらだらと学校生活を続けている自分自身が何をしたいのかもわからない。
「大学に行って何を?」
「研究だよ。途中で戦争に巻き込まれるとは思わなかった」
「米帝だって戦争に負ける日が来るとは思ってなかったはずだしなぁ」
〈ゴリ男〉はどうでもいいか、と伸びをする。
「お、来たぞ」
〈ゴリ男〉の隣に〈狐目〉が「おまたせ」と声をかけて座る。
「どこまで話をしたの?」
〈狐目〉が〈ゴリ男〉に尋ね、〈俺〉が割ってはいる。
「夜な夜な君の魅力的なお兄さんのケツを狙って変な奴が部屋に入り込んでるってところまでかな」
「なにそれ、アメリカンジョークか何か?」
「いや?」
〈俺〉はむっとした〈狐目〉に失言に気づいた。何せ自分の兄弟が危険な状況下にあるのに冗談は聞きたくないはずだ。
「気にしないけど、彼はいつもこうなの?」
〈狐目〉の辛辣な言葉が突き刺さる。
「まぁいつもかどうかはわからないけど、比較的愉快な奴だよ。頭と顔もよくて要領もいい。問題点といえば口の悪さだ」
「わお、最強に性格が悪そう」
酷いことをさらりと言われた上に納得されたのか。
〈俺〉は帰ろうかな、とまで思うと〈狐目〉が一枚の写真を手帳から取り出した。
「生徒手帳を持ち歩いている生徒がいるとは関心だ」
「財布だと失くしたときに困るのよ。盗まれるしね」
〈狐目〉がIDカードを見せて〈俺〉は納得した。
「で、これが件の?」
痩せ型だが身長の高い好青年のようだ。
「年齢は…」
スマホをいじってBMNSに接続する。
「大学二年で二十歳になるんだな」
「個人情報はどうなってるの?」
〈狐目〉が呆れて〈ゴリ男〉もまじまじとこちらを見てくる。
「秘密の七つ道具の一つかな」
「七つもあるの?」
〈狐目〉に尋ねられる。あるわけがない、口からでまかせだ。
「喋ったら秘密にならないだろ?」
「面白い奴だね」
「ありがとう」
〈俺〉はスマホをいじって情報を集める。
「ちなみにアメリカンジョークじゃなくて、ケツの話はホモの話だ」
〈狐目〉はそれを聞いて目を丸くしていた。