08 果たし合い当日
「そろそろ時間かな、お兄ちゃん。」
「うん、そろそろ出発しよっかね。」
アルティさんと早乙女さんの果たし合い当日。
マツバ姉妹の店でコーヒーを飲んだりしたり、たまに店を手伝ったりしながら時間をつぶしていた。
マツバに言われ、私は席を立ち、出発する事にした。
「怪我させないでくださいね。」
「ならば行くのを止めさせればいいんじゃないかな。」
「お兄さんを信じてますから。」
怪しさがこもったような笑みを浮かべるサルビア。
そんな顔もできたんだね。
私達は果たし合いが行われるであろう平原を訪れた。
ただっぴろい平原、平原のどこら辺で果たし合いが行われるかよく分かっていなかったが、いけばその内ドンパチが始まって分かるだろうという適当な感じでむかったが。
「人、いっぱいだねぇ。」
「皆アルティさんの果たし合いを見に来たのかね。」
「そうなんじゃないかな。」
「どっから聞きつけて来たんだ。」
「昨日のお客さんが喋ったのかしら。」
「にしたって広まるの早すぎじゃないか?」
「うーん、あのあと娼婦達に宣伝してもらったり、飲み屋で言いふらしたりしたからかね。」
私達の後ろにいきなり現れたアルティさんが答えた。
「うわ!」
「ビックリした!」
「いきなり現れないでくださいよ。」
私は文句を言った。
「今回の主役は私だ。現れて何が悪い?」
「ビックリさせんでください。」
「それにしても、マツバちゃんまで見に来てくれるとは思わなかったな。」
「アルティさん達が戦っているところ、一度見てみたかったんだ。」
マツバが楽しそうに答える。
私の話はそらされた。
「ああ、存分に見ていっていくといい。さぁて、私の相手である・・・名前何だったか・・・パンダメだったか?」
「早乙女だ。」
「うわ!ビックリした!」
マツバの背後に突然現れる早乙女さん。
「あなた達はいちいち後ろから現れないと気がすまないのですか?」
「おお、アルティの弟子か、昨日は世話になったな。」
「いえ。」
「それで、お嬢さんの店では笹の葉は出るのかね。」
「うちの店では笹の葉もでますよ。どうぞご贔屓にしてください。」
笹の葉の問いにはマツバが答えた。
「おお、それは楽しみだ。ぜひまた寄らせてもらおう。」
「いつでもお待ちしておりまーす。」
こう言う感じに常連さんを増やしているんだろうか。
「それにしても、そこらの飲み屋で今日の果たし合いを言いふらしたりしたからか、見物客がいっぱいいて少々驚いておるぞ。」
あんたも言いふらしとったんかい。
硬派な口調に反して軽いなこの人。
「さて、ギャラリーの皆さま方も我々の存在に気づいてきたようだし。そろそろ、始めようか。」
「ふむ、よかろう。」
「二人は離れているがいい。巻き込まれたくなければな。」
アルティさんに言われ、私とマツバ、その他の観客は二人から距離をとった。
売店を開いている人もいたので何か軽く食べる物でも買おうかと思ったが。
「お弁当、持ってきたんだけど。」
っと、マツバが言うので止めた。
二人から大分距離をとったところで私達は観戦する事にした。
「ずいぶんと離れるんだね。」
マツバが聞いてきた。
「こんなに離れないと危ないの?」
「これでギリギリかな。」
「これ以上近づくと?」
「火傷じゃすまない。」
さすがにアルティさんと言えど、マツバに怪我を負わす事はしないと思うが。
確実にそうだとも言い切れん。
「よっこらしょ。」
マツバが近くの岩に座る。
私は隣で立っている。
「座らないの?」
「いざというときに備えてね。」
「いざというときになったらどうしてくれるの?」
「身を呈して君の盾にでもなるよ。」
さて、そんな事を話している内にアルティさん達が臨戦態勢に入ったようだ。
早乙女さんがアルティさん相手にどこまでやるのか、油断せず見させてもらいましょう。