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04 ファイナさんの家

傭兵達のアルティさんに対する怨みをその身で引き受けた私は命からがらある家にたどり着いた。

ここは私達が住んでいる国『エデン』とは隣国にあたる国『ユータリー』、昔は『パルタン』と言う国名だったようだがそれはどうでもいい。

家の主であるファイナさんが私を出迎えてくれた。

「まぁ、ボロボロね。大変だったでしょう、さあどうぞ。」

「お邪魔します。」

私は家の中に入った。

「おお、やっと来たか。」

家の中にはワインを飲んでいるアルティさんがいた。

「随分と遅かったじゃないか。迷子にでもなったか。」

「あんたのせいで鬼ごっこするハメになったんですよ。よくもヌケヌケとワインなんか。」

「まあお前も飯でも食えよ、姉さん飯頼む。」

ファイナさんはアルティさんの姉である、アルティさんと違い良心だけで構成されたかのような神々しさを放っている。

アルティさんの良心は全てこの人に持ってかれたに違いない。

「ごめんなさいね、ウチの弟がまた迷惑かけたみたいで。」

「これも修行だよ、姉さん。」

「あなたは黙ってなさい。すぐにご飯にするわね。」


しばらくして、ファイナさんが料理を持って来てくれた。

暖かそうなシチューが美味しそうだ。

実際旨かった。

「ごちそうさまでした、相変わらずとても美味しかったです。」

「ふふ、お粗末さまでした。」

「ああ、お姉さんはこんなにいい人なのに、何故弟の方はあんなんなんでしょうね。」

「あら、お世辞かしら。」

「お世辞なんかではございません、心の底から本当にそう思ってますとも。」

「まあ、嬉しいわ。」

「お世辞なんか言ったって何も出ないぞー。」

アルティさんが口を挟む。

「あなたは黙ってればいいの。」

「へいへい。あ、そうだこの前頼んでいたアレ、出来てる?」

「アレね、出来ているわよ、ちょっと待ってね。」

ファイナさんが奥の部屋へ向かった。

何か出るようだ。

「何です、アレって。」

私はアルティさんに聞いた。

「ま、お詫びの品とでも言っておこうか。」

「お詫びですって、あなたが私にですか。」

「意外だと言うのかね。」

「あたりまえです。」

そんな言い合いをしているところでファイナさんが戻って来た。

その手には首飾りが握られている。

「それをお前にやろう、御守りだ。」

「これは、パールですか。ただの首飾りではないですね。」

「昔私達のお母さんが身につけてた首飾りよ。それには高位の精霊が宿っているのよ。貴方をきっと守ってくれるわ。」

ファイナさんが説明してくれた。

「確かに、この首飾りからはとても力強く、それでいてとても安心するような温かさを感じます。」

「貴様は危なっかしいからな、その首飾りが貴様を守ってくれるだろう。」

「アルティさんのせいで危険な目にあってることも多い気がしますが。今回の件だって。」

「今回は私が言い寄られている間に逃げればよかったのだ。事前にここに泊まる事は決めていただろう。」

「それ以前に言い寄られるような事しなければいいじゃないですか。」

「何がどうあれ貴様は決断を誤ったと言う事だよ少年。自分の身は所詮自分の身で守らなくてはならんよ。その為には決断力をまず磨きたまえ。私の無理難題を捌ききれればもうお前が負ける事はない。多分。」

「多分ですか。」

「この世に絶対なんて事はないよ、私とていつか敗れて死ぬかもしれんのだから。」

この人が負けて死ぬ光景など想像できない。

「この首飾り、ファイナさん達のお母さんの物なんですよね。出来ていると言うのは何かしたんですか。」

「しばらく使ってなかったからね、中の精霊が拗ねちゃったから魔力を補充したりしたのよ。それがもう大変、すごい精霊さんが宿っているからちょっとやそっとの魔力では満足してくれなくてね。やっと使っていた頃の力ちかくまでの力を取り戻せたわ。うふふ、おかげで少し痩せちゃった。」

「こんな私のために申し訳ございません。」

私はおもわず土下座した。

しかしアルティさんのお詫びと言うよりファイナさんのお詫びなのでは。

しかしこの首飾りを頼んだのはアルティさんなのでやはりアルティさんのお詫びとも言えるのであろうか。

どちらにせよ私のために苦労してくれた事なので頭を下げ続けた。

「あらあら、良いのよ。いつも私の弟が迷惑をかけているんだから。それにこの首飾りもちゃんと使ってあげないと可哀想だものね。」


その後、私は二階の部屋を使わせてもらい、その部屋でまじまじとその首飾りを見つめた。

そう言えばこれ程の力強さを誇るアルティさんやファイナさんの母親は一体どんな人だったのだろうか。

アルティさんの母親と言うからには相当すごい人だったのだろうか。

しかしそれならもっと有名であってもおかしくないはずだが。

明日あたりファイナさんにでも聞いてみよう。

そう思いながら私は眠りについた。

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