34 メロンの行方
お留守番が決まったところで私は自分の部屋に戻った。
ベッドの上ではマツバがウンウン唸りながら眠っている。
「ううん、あ、お兄ちゃん。お帰り。」
「ただいま、アップルジュース持ってきたけど、飲むかい。」
「飲むー。」
マツバは上体を気だるそうに起こし、アップルジュースをちびちびと飲み初めた。
火山が噴火し初めた直後、私達はマツバが買ったメロンを盗んだドレスを着たネズミを捕まえた。
ネズミの仲間によってメロンは巣に運ばれたので私達は巣に向かった。
メロンは、ネズミの仲間によって食い尽くされた後だった。
レムは激怒した。
ネズミは悲しんだ。
「チューちゃんの分はないの!?」
「お前の分なんて元からねぇよ!」
仲間のネズミ達は一目散に逃げ出す。
「チュ?じゃあ依頼を請け負ったのはあなた達なの?」
しばらくしてお詫びの紅茶を出した(と言うか出させた)ネズミが聞いてきた。
「あんなところでメロンなんか食べようとして何ちてるんだろうと思ってちゅい手が出ちゃったの、ごめんなちゃいなの。チューなの。ちゃい近ね、ちゃむい狼が増えて困ってたの、助かったの。お礼をしなきゃいけないの。」
ネズミは何も乗ってない皿をテーブルに置いた。
ネズミの手から魔力を感じたと思った時、皿の上に一切れ分の魔力が込められたチーズケーキが現れた。
「お前、守護精霊だったのかよ。」
レムが驚いた。
「チューなの。チューちゃんはこの草原の守護精霊なの。えっへんなの。」
そのチーズケーキをマツバの方に差し出す。
「えっ?私?」
当然困惑するマツバ。
「おい、狼を追い払ったのは俺達だろうが。」
レムが抗議する。
「チュッ、これはメロンのお礼なの。チューちゃんは食べれなかったけど・・・。あなたが買ってきたのを盗む前に聞いたの。しょれに、四人の中で一番弱そうなの。だからあげるの。」
「うーん。」
マツバはしばし考えた後。
「レム君、ごめんね。」
そう言ってマツバはケーキを受け取った。
国に戻った我々は火山灰によって汚れた街並みを見て驚いた。
リーナさんは笑っていた。
国に戻ってからマツバは体の不調を訴えた。
「さっきのケーキがきたかも、この感覚、覚えがあるよ。」
マツバを宿で寝かせ、私達は報酬金を貰いにギルドに寄った。
そこには激闘を終えて噴火も何とか止めたアルティさんがいた。
アルティさんは私達を見つけた後、私の肩に手を置き、走って何処かに消えた。
「ちょっとアルティさん。」
ギルドの受付の男性がアルティさんに向かって叫ぶがもう彼の姿は見えない。
「あ、あなたはアルティさんのお弟子さんの。」
「どうしたんですか。」
「街、ご覧になりましたよね。」
「ええ、火山灰まみれになっていましたね。」
「アルティさんが戦いの最中にやり過ぎて火山を噴火させてしまったので掃除するようにお願いしたのですが、走って逃げてしまったんです。」
「まぁ、そうでしょうね。」
「明日からでいいのでお願い出来ますか。」
「えっ。」
「勿論、他の冒険者や街の方々も掃除します。アルティさんの代わりとして、掃除に参加してください。もしくは、アルティさんを連れて来て下さい。」
「・・・わかりました。掃除します。」
「あ、狼退治の報酬金ですね。三人分合わせて此方になります。掃除は明日からで構いませんのでよろしくお願いいたします。」
私は翌日から掃除に駆り出した。
掃除を初めて数日、だいぶ綺麗になったところでアルティさんが戻ってきた。
この国の王様直々に出払ってとうとうアルティさんはお縄についたようだった。
そして、王直々に迷宮に潜るように命令された。
「なかなか、収まらないね。この前よりもだいぶ楽になってきたけど。」
マツバは苦しそうだが無理して笑って言う。
「私は1週間ぐらい続いた事があるよ。」
「1週間、頑張ったんだね。私ももう少し頑張るよ。」
よく見ればマツバは汗をかいている。
「汗、すごいね。」
「うん。」
「拭こうか。」
「うん、お願い。」
私は濡れたタオルで汗を拭いてあげた。




