29 メロンとネズミ
「みてみて、お兄ちゃん。このメロンを。」
「すっごく大きいね。」
私達はマンロック城から少し出た草原にいた。
ギルドでレムを冒険者として登録し、初めてのお仕事を請け負った。
仕事がどんな風か見てみたいとマツバが言い出し、私とリーナさんもそれに同行した。 私とリーナさんも同じ仕事を受領する。
ちなみにアルティさんは別の仕事に向かった為、別行動である。
「俺一人でいいのに。」
レムはそうぼやいていた。
実際このレベルの依頼ならばレムだけで十分だろう。
だがマツバはそうではない、何かあっては困る。
マツバに色々して良いのは私だけだ。
依頼の内容はここ最近増えてきた狼のモンスターの討伐である。
本来は雪国にいるはずのモンスターなのだが雪っ気1つ無いこの草原で何故だか増え続けている。
規定数の討伐の仕事が終わり、マツバが例のでっかいメロンをカバンから取り出した。 人の顔より一回り大きい。
「うはーでっけー。」
レムの目が輝いている。
「よーし、切って見るよー。」
マツバが最近リーナさんに勧められて購入した杖に魔力を込める。
杖から鋭利そうな葉っぱが生えた。
生えた葉っぱでメロンに切りかかる。
メロンに少しだけめり込んだ・・・がそこで止まった。
葉っぱはヘニョリと固さを失った。
「うーん、駄目かー。」
マツバが無念そうに唸る。
「そんな事まで出来るようになったんだ。」
「ふっふっふ。驚いた?密かにリーナさんに特訓して貰ってたんだ。」
「驚いた、凄いよマツバ。」
「えへへ。」
「なー、それはいいから早くメロン切ろうぜ。」
レムがせがむ、うっさい奴だ。
メロンは私の剣で切る事にした。
一回剣に魔力を込めて光らせた。
「何したの、今。」
「消毒。」
光の魔法にはこんな便利な魔法があるのだ。
魔物とかを切る剣だ、きちんと消毒しとかないと腹を壊すかもしれない。
私はメロンに向かって剣を降り下ろした。
その時、何者かがメロンをかっさらった。
私の剣は地面に刺さった。
「ちゅっちゅっちゅ、このメロンはチューちゃんが頂いたの。」
メロンを奪ったのはドレスを着た二足歩行するネズミであった。
ネズミはメロンを抱えて走り去る。
「待てぃコンニャロウ!」
レムはネズミを追っかける。
「あらあら、仕事の後なのに元気ね。」
リーナさんが微笑む。
「とりあえず、追いません?」
「追っかけよう。レム君待って。」
マツバの承諾を得て、私達はとりあえずレムを追っかける事にした。




