27 リコッホ村に帰ってきました
無事にリコッホ村へ帰ってきた私達は村人達の拍手喝采に包まれたが、アルティさんから漂う異臭により一瞬だけ皆静かになった。
「風呂です。彼らはあの魔物と激闘を繰り広げたのです。まずは我が村自慢のリコッホ温泉でじっくりとお疲れを取って頂きましょう。」
村長は村人達に向かって言った。
村人達はその言葉に従い、我々をリコッホ温泉へ導いた。
「此度のお仕事、お疲れ様です。」
念入りに身体を洗い、お湯に浸かっていたアルティさんに村長が熱燗を差し出す。
「うむ、上手い。仕事の後の酒はいつでも格別だな。」
「お弟子さんもどうぞ。ご遠慮なく。」
村長は私にも熱燗を注いでくれた。
上手い。
たまには麦やワインではなくこう言うのも良いものだ。
「じゃあ俺も。」
「おや、レム。貴方もいたんですか。」
「俺が最初にあの魔物と戦って弱らせていたんだぜ。」
「嘘おっしゃい。無謀にも一人で立ち向かってやられそうな所を助けて頂いたのでしょう、きっと。」
いやはや全くその通り。
「そんな無茶な君にはお酒なんてあげません。」
「ちぇー。」
「ところでアルティさん、壁の穴の事を誰かに話したりしていませんか。」
声を落として村長がアルティさんに尋ねる。
「いいや、誰にも話していないがどうかしたかね。」
私とマツバに話しているが勿論そんな事は口にしない。
「穴が誰かによって埋められていたのですよ。」
「それは残念だな。」
「まあ、この際どっちでも良いですな。穴は私の羽根で再び開ければ良いのですから。」
この人を村長にしたのは誰だ。
その後、私達は温泉から出た。
改めて拍手喝采で迎えられた私達、村人による酒宴に参加する。
旨そうな料理、旨そうなお酒。
「アルティさん、お腹の具合はいかがですか。」
「嫌な事を思い出させるな、お前は。もうすっかり大丈夫だ。お、あの子可愛いな。フフフ。」
可愛い娘の方へと向かうアルティさん。
私はある程度の料理を皿に盛った後、人があまりいない方へ向かった。
人の多い所はどうも苦手だ。
そんな私の元に近付いてくる物がいる。
「お兄ちゃんやっと見つけた。」
マツバだ。
「お帰り、お疲れ様。」
「ただいま。」
マツバは私の隣に座った。
「アルティさんは?」
「ナンパしに行ったよ。」
「そうなんだ。」
「そっちは大丈夫だったかい。変な奴に絡まれたりしなかった?」
「リーナさんっていう吸血鬼の人がいてくれたから大丈夫だったよ。魔法の特訓にも付き合ってくれたんだ。見てて。」
マツバは木の枝を拾って魔力を込めた。
以前よりも大きくなった葉っぱが生えた。
「おー、大きくなったね。」
「うん、でもまだお花にはならない。」
「練習あるのみだね。」
「うん、そうだね。頑張るよ。」
「うん、頑張れ。」
私はマツバの頭を撫でた。
「ちょっと照れるね。えへへ。」
「・・・。」
私はマツバの肩に手をやり、抱き寄せて見た。
「え、ちょっ、お兄ちゃん?」
慌てるマツバ。
やってみた自分も何だかとても恥ずかしい。
うぐぐ、これ程までに心臓がバクバクするとは予想外だった。
しばらく私達は黙った。
「ねえ、お兄ちゃん。」
「な、なんだい。」
「お兄ちゃん人が多い所あまり好きじゃ無いよね。」
「うん。」
「じゃあさ、お部屋に戻ろうか?」
「・・・・・うん。」
その後、私達二人は部屋へ戻った。




