26 レム
「さっき君、奴を倒さなきゃならない理由はそれだけじゃねぇとか言ってたような気がするんだけど。」
私は魔物の解体現場を観察しながら妖精の少年に聞いた。
そういえば私は彼の名前も聞いてない。
「まだ名前を聞いていなかった、君、名前は。」
「レム、俺の名前はレムだよ。」
彼の名前は聞いた後、私は自分の名前を名乗った。
おっと、相手にものを訪ねる時は自分からだったかな。
まあいいか。
「レム、どうして君はあの魔物を倒したかったんだい。」
「あの魔物は、多分だけど、村にいた奴だ。」
「リコッホ村に。」
「そう、前に最強になる事を目指してた男がいてさ。多分そいつだ。」
「妖精だからそう言うのが分かるのか。」
「うーん、確証は無いけど、多分そうだと思う。どっかの雪山とかで、熊か鳥相手に痛い目にあったりした後に凍え死んだりしたんじゃないかな。その無念さが精霊とかと結び付いてあの魔物が出来上がったってところだろうと思う。」
「ふーん。」
「そいつとは子供だった時からの付き合いでさ。」
君は今も子供だと言いたくなったが止めた。
妖精は人間よりも長生きだ、こう見えてもレムは私達よりも長生きしているのだろう。
「冒険者になって村を旅立ってそれっきり帰って来なくなっちまった。あんな形で強くなっちまうなんてなぁ。」
「そっか。同じ村の人なんだろ、今の解体作業をどう思う。」
アルティさんの方を指差して聞いてみる。
「元々村の嫌われものだった奴だから別になんとも。俺自身大嫌いだったからな。いい気味だ。よく喧嘩した。」
「炎を操る妖精と喧嘩?子供が?」
「あいつの親が魔法を使えた。そいつは親から魔法を習ってたんだよ。そのうち俺といい勝負するようになった。」
「村の人達はこの事を知ってるのか?」
「いや、今のところ村長にしか話してない。」
「ほう、村長は知ってたのか。」
気がすんだのか解体作業を終えたアルティさんがこちらへ近づいて来た。
私達は距離を取った。
まだアルティさんの顔には汚物が付着している。
「何を距離取っている。泣くぞ。」
「向こうの方に川があるから洗ってこいよ。汚ねぇな。」
レムが川がある方向を指差し、答える。
「ま、村長がそんな事を知ってようが私には関係無いことだな。」
アルティさんは川がある方向へ向かった。




