25 必死の足掻き、そしてデジャブ
その後も魔物の猛攻が続いた。
蹴りあげてきたり羽根を発射してきたり。
飛び掛かってきたり。
私は必死になって避けた。
避けて避けて避けまくった。
できるだけ魔力を節約しつつ、自力で避けられる場合は自力で。
無理な場合は魔力を使って跳躍したり防御したりした。
それでも私の魔力はどんどん消費していっているのが分かる。
「くそ、アルティさんはどこまで吹っ飛んだんだ。」
今だに戻って来る様子が無い。
あのくらいで死ぬような人ではないはずだ。
それにしたってあの人にしては遅すぎる。
なにをやっているんだ本当に。
そんな事を考えているうちにも私の魔力はどんどん消耗していく、こいつはそろそろ本当に包み隠さずやばいぞ。
魔物がブレスを放つ。
限界だ、魔力も体力ももうカツカツだ。
もう駄目だ、もう避けきれない、もう無理だ。
ああ、マツバ、ごめんよ。
文句はアルティさんに言ってくれ、私自身はこんなやつと戦いたくなんて無かったんだ。
叶うならば、もう一度君に会いたかったよ。
君の屈託の無い笑顔が今、何よりも恋しい、愛しい。
ブレスは直撃したと思ったが途中で何かに遮られた。
こんな、こんなギリギリになってようやく到着か、アルティさん。
「大丈夫かよっ、覗きの兄ちゃん。」
背中の羽、君かよ。
「な、なにやってるんだ、君は。」
「み、みみっ、見りゃ分か・・・るだろ。」
「動けたのならさっさと逃げなさい。そうすれば私も逃げられたのに。」
「逃げてたまるかぁ。ま、まぁどっちにしろ・・・ここまで動くのが精一杯・・・なんだけどさ・・・ぐぐ。」
妖精は炎の魔法で応戦しているがみるみる押されている。
この光景、デジャブだ。
「アホたれ、勝てるわけないだろう。今だってみるみる押されているじゃないか。」
「でも、こいつは俺の手で・・・倒したかったんだよ・・・。」
「名声に釣られるような奴はアホだよ。もっと強くなってから挑むべきなんだ。」
「へへ・・・有名にはなりた・・・かったさ。だけどな、こいつを倒したい理由は・・・それだけじゃねぇ。」
「なに。」
魔物のブレスが更に迫ってくる、もう限界か。
「ち・・ちくしょぉ。だめかぁ・・・。」
魔物の顔が勝ち誇っているかのように見える。
その魔物の脇腹をチョンチョンとつつく男が横に立って・・・・・あれはまさか。
魔物が目だけそっちに向ける。
だがその時には血が飛び散り、魔物の残った腕も上に吹き飛んでいた。
男の目は血走り、口元は笑い、顔面は何か茶色く汚れていた。
「うわ・・・。」
私の口から思わずそんな言葉が出た。
一瞬、殺気の籠ったアルティさんの目がこちらを見た。
だがその目線はすぐに魔物の方へと戻る。
魔物の命運は既に決まっている。
さようなら強敵。
成仏しろよ。




