22 その頃のマツバ
私達がリコッホ山を登っている間、マツバは村の探索をし終えていた。
今は宿屋の野外テーブルでゆっくりお茶を飲んでいた。
「ふう、この村はだいたい探索し尽くしたかな。じゃあ、次はコレだね。」
マツバはそこら辺で拾った木の枝を持った。
枝に魔力を込め始める。
「前よりも大きくしなくちゃ。むむむ。」
「おや、お嬢ちゃん魔法使えたのかい。」
店のおばちゃんが話しかけて来た。
「うん、でもまだまだ葉っぱを生やす事しか出来ません。むむむ。」
「懐かしいねぇ、ウチの息子もそれやってたよ。」
「ぷはっ、ふう。おばさんの息子さんは冒険者何ですか。」
「そうよ。あの子ったら手紙の一通も寄越しやしない。まあ時々帰って来るから良いけどね。」
「う、そう言えば、私もお姉ちゃんに手紙書いてないや。」
「あはは、暇な時にでも書いてあげな。」
「そうします。」
「おかわりいるかい。」
「あ、じゃあお願いします。」
「懐かしいねぇ、ウチの息子もそれやってたよ。」
「おかわりソコ?」
「あはは、冗談だよ。ちょいと待ってな。」
空になったカップを持っておばちゃんは店
内に引っ込む。
マツバは再び木の枝に魔力を込め始める。
「お、あの子可愛くね?」
「おー、なかなか良さげじゃん。」
「よし、突撃だ。ねぇ君。」
冒険者二人がマツバにナンパを仕掛けてきた。
「君、可愛いね。ちょっと俺達とお茶しない?」
「え、しません。」
「ちょっとくらい良いでしょ。」
「良くないです。そもそも貴方たち誰?」
「僕達はただの冒険者さ、君は冒険者志望?それ魔力の初歩練習でしょ、僕達が練習に付き合うよ。」
「いえ、結構です。」
「優しく教えてあげるから。」
「結構ですってば。」
多分こんな感じのやり取りをしていたのだろう。
不届きな奴らだ。
そんな不届き者達に話しかける人がいた。
「貴方たち、その子が嫌がっているでしょ。」
「お、美人なお姉さん。」
「いや、待て、この人は確か吸血鬼の・・・。」
「え、あ、アハハ・・・失礼しました!」
不届き者どもは退散した。
「大丈夫かしら。」
「あ、ありがとうございます。」
「マツバちゃんよね、アルティさんから聞いているわ。」
「アルティさんから?」
「貴女は聞いているかしら、私の事。」
「え、えと。」
マツバは顔を赤くした。
「あら、その様子だとあの人、何を話しているのかしら。イヤねぇ。」
山を登っている途中、私は見知らぬ場所に一人残してきたマツバが心配だった。
その事をアルティさんに訪ねたが。
「心配いらん、対策はしてある。ゲップ。」
「対策?」
「首を噛まれてわかり会う事もあると言う事だ。」
「そんなわかり合い嫌ですよ。まさか対策ってあなたと寝た吸血鬼ですか。それって大丈夫なんですか。」
「ああ、平気だ。」
心配だなぁ。