21 魔物との戦い
あの後もしばらく妖精の少年は戦っていたが、結局効果的なダメージは与えられなかった。
「う、クソぅ。」
魔物が腕を少年に向かって降り下ろす。
吹き飛んだ、盛大に。
魔物の腕が血を撒き散らし、吹き飛んだ。
「妖精の割にはよく粘ったじゃないか。私の弟子もそれくらいの粘り強さが欲しいところだ。」
魔物が腕を降り下ろす時、アルティさんが妖精と魔物の間に割って入り、大鎌で魔物の腕を切り飛ばしたのだ。
「お、おめーらはスケベ親父と覗き見兄ちゃんじゃねーか。こいつは俺の獲物だぞ。」
「いーや、こいつは私の獲物だ。」
「こいつは俺が倒すんだ。」
「譲ってやれんな。私にはこいつを殺らなければならない理由がある。」
そう、村長からの報酬。
それを手にいれると言う理由がアルティさんにはあった。
それはともかく、腕を切り飛ばされた事で魔物は怒り心頭だ。
殺意を込めて、魔物はアルティさんを睨み付ける。
「怒ったか、魔物風情が。ふふふ、怒れ怒れ。どんどん怒れ。そしてとっとと掛かって来るがいい。」
魔物に挑発するアルティさん。
魔物は氷のブレスを放った。
妖精と戦っていたときとは比べ物にならない威力だ。
本気ではなかったブレスで妖精は苦戦していた。
私でも苦戦するだろう。
だが本気のブレスだったとしても、アルティさんには効かない。
右腕から炎の魔法を放ってブレスを相殺していた。
「す、すげえ。」
妖精が呟く。
自分よりも桁違いの炎を操るオッサンに信じられないような眼差しを向けている。
っと、後にアルティさんは語った。
「ほーれ、その程度じゃ私には届かないぞー。」
徐々にアルティさんの炎が魔物に近づいて行く。
魔物の顔に焦りが見える。
「はい、ターッチ。」
炎が魔物にたどり着き、爆発した。
爆発の衝撃で妖精が吹き飛んでいった。
私は何とか堪えた。
「ほう、まだ生きているのか。」
あれをくらって生きているとは。
魔物が怒りの咆哮をあげた。
魔物は翼から羽を発射してきた。
アルティさんは鎌を前に伸ばし、先端から重力の塊を展開。
羽はアルティさんの足下に勢いよく落下する。
魔物はアルティさん向かって突っ込んで行った。
アルティさんは鎌でぶった切ってやろうと構える。
「ほうら、最後はこの鎌で格好よくキメて・・・う、ぐ、腹の調子が。」
まさかのここで腹痛再来。
腹部を押さえたアルティさんはそのまま魔物に叩き飛ばされた。
あ、アルティさーーーん。
アルティさんが、遠く、遠く、離れていくよ。
ちょっとちょっと、こいつどうすればいいの。
私がやれというの。




