02 精霊さん
昔、ある国では拷問だか見せしめだか何かで車輪か何かに手足を折られた後に縛り付けられてたりしていたらしい。
昔の人は怖い事をしてたもんである。
その怨念、苦しみ、後悔等といった強い想いがたまたま大量発生した精霊達に影響を与え、車輪なのか生物なのか見境のつかない怪物を生み出したらしい。
それも大量に。
この世界には精霊がいたるところに存在する。
物に宿ったり、生物に宿ったり、そこら辺をフヨフヨしていたりしている。
私が持っているこのただのショートソードにも精霊が宿っている、大事に扱ってやればただのショートソードでも精霊のご加護によって強力になるということだ。
アルティさんの大鎌や右腕、左腕の手袋にも精霊が宿っている。
アルティさんの元からとんでもない魔力が精霊の力によって更に強力なるのだ。
ただ精霊の力を借りていつもより強力になった魔法などを調子にのってバカスカ使いまくればtあっという間に魔力を消耗してしまう。
下手すれば極度の過労でぶっ倒れる。
故に、精霊の力を借りるのにも自己鍛練は不可欠なのである。
そんな精霊が宿った物を無下に捨てたりとかすると精霊による怒り、悲しみ、憎しみによって怪物に変貌したりする。
無下に捨てたりせず、誰かに譲ったり何かにリサイクルしたりする事を忘れてはならない。
人の想いにも大きく影響されたりもするようで例えばかなりの無念を持って死んだりすればその無念に影響されて精霊が宿っていた鎧とかが勝手に動きだしたりする事もあるようだ。
今回の車輪怪物発生事件もそんな人の無念に影響されて精霊が起こしたものだろう。
その怪物鎮圧に私とアルティさんも参加することになった。
前回の卵運びと違い、今回の車輪事件はほっとけば周囲に被害が及ぶであろう、今回は出払わない訳にはいかない。
「気をつけてね、お兄ちゃん。」
マツバ達の店で朝食を取っていると、マツバが心配してくれた。
「大丈夫だ、アルティさんもいるし、それに私だってそこそこ強いのだ。必ずここへ無事に帰ってくるよ。」
「うん、絶対だよ、絶対無事に帰って来てね。」
「ああ、約束するよ。」
「うん、約束。」
そう言うとマツバが小指を差し出してきた。
「なんだい、それは。」
「お兄ちゃんも小指出して、そう、こうやって小指をからめて、指切りゲンマン嘘ついたらハリセンボンのーます、指切った。」
ハリセンボン飲ますとひどく恐ろしい事を言われてしまった、これは何かのまじないだろうか。
「この前教えてもらったんだ、アルティさんに。ちゃんと帰ってこないとハリセンボンだよー。」
「それは痛そうだ、じゃあ無事に帰って来たらマツバにキスでもしてもらおうかな。」
「えっ。」
「うん、マツバのキス、何かすごくやる気が出てきた。」
「も、もうバカ、知らない。」
そう言って顔を赤くしながら奥へ引っ込んでしまった、可愛い娘だ。
「お兄さん、あんまりうちの妹をからかわないでください。」
「ではサルビア、君がキスをしてくれるのかな。」
「しませんよ。」
「さてと、ごちそうさま。そろそろ行ってくるよ。」
「お気をつけくださいね。」
私は店を後にしようとする。
「お兄ちゃん。」
顔だけ出したマツバが呼び止める。
「いってらっしゃい。」
「いってきます。」
こうして私は店を後にした。
アルティさんと合流し、現場へ向かう。
オッサンが今回ほとんど登場していないが、たまにはこういうのもいいであろう。
ほのぼのにこんな禍々しいオッサンはいらんのだ。