18 おやすみ
「ふう、ちょっと疲れちゃったね。」
「平気かい、慣れない長旅で疲れてない?」
「うーん、今のところは大丈夫かな。それに今日は久々のベッドだからぐっすり眠れそうだよ。」
ベッドに転がりながらマツバが言う。
夜になり、私達は寝ることにした。
マツバはともかく、私は明日アルティさんと共に魔物退治しに山へ登らなくてはならないのだ。
正直、あの盗賊共との戦闘で本当に筋肉痛になってしまった。
早く治ってくれる事を願って、早く眠ろう。
「ランプの火、消すよ。」
「うん、お兄ちゃん、お休み。」
「お休み。」
部屋は真っ暗になった。
マツバはベッドで眠り、私ももう1つのベッドで寝転がる。
二人用の部屋だからそりゃあベッドは2つありますよ。
さて、神様から嘔吐物をいただいて寝込んでいた時、あれが本当に夢でなければマツバは私にその、せ、接吻をしたと言う事になる。
もしかしたら、今回もマツバは私が寝ている隙をついて私のちょっとカサッとした唇を奪って来るのでは無いだろうか。
いや、べ、別に期待している訳ではないぞ、断じて、うん。
五分後・・・。
来たとしたら、どうしようか。
十分後・・・。
頭をガッと掴んで逃げられないようにしようか。
十五分後・・・。
私はマツバの様子をうかがった。
マツバはすぅーふぅー、すぅーふぅーっと静かに寝息をだしてぐっすり眠っていた。
何故だ、私は今とても凄く残念がっている気がする。
慣れない長旅で疲れて、しかも今夜はベッドだ。
そりゃあぐっすり眠るに決まっているさ。
私も寝よう。
街と違って静かだ。
虫が鳴き、フクロウが鳴き、女が鳴く。
・・・女?
隣だ、隣の部屋、アルティさんの部屋から女の声が聞こえる。
あのオッサン、部屋に女を連れ込みやがった。
女性の声が鳴り響く、これでは気になって眠れない。
私は毛布を被り、耳を塞ぎ、必死に眠ろうとした。
翌日、私は結局あまり眠れなかった。
悶々としながらも眠ろうと頑張ったが隣が気になって仕方がなかった。
「おはよう、お兄ちゃん。」
マツバが起きた。
あの時マツバが起きていたらどういう反応をしただろうね。
「おはよう、マツバ。」
「うーん、よく寝た。」
「そっか。」
「お兄ちゃんはあまり眠れなかったの?何だか凄く眠そうだけど。」
「そんな事無いよ、ご飯食べに行こうか。」
「うん。あ、アルティさんも起こしに行った方がいいかな。」
「いや、あの人はすぐに起きてくると思うよ、今日は。」
「え、そうかな。」
「うん、そうだよ。さあ、ご飯を食べに行こう。」
私達は食事に向かった。
食事が終わり、コーヒーを飲んでいる頃、アルティさんが起きてこっちにやって来た。
だが、そのアルティさんの首には何故か包帯が巻かれていた。




