14 ハグハグ
私はマツバを抱き締めた。
抱き締めた?
何をやっているのか私は。
ビックリしたマツバがこちらを見上げている。
そりゃそうだ、抱き締めてるんだもの。
私だって自分の行動にビックリだ。
「あわわ、お兄ちゃん。」
慌てている、可愛い娘め。
いや、そうじゃない、何とかして彼女を安心、そう、安心させなければ。
私はマツバの頭を撫でた。
優しく、丁寧に。
「大丈夫。」
「だ、大丈夫って。」
「私が前に寝込んだのと同じだよ。」
「え?」
「それよりもかなり楽だろうけど、たぶん明日くらいには楽になってると思う。」
「え、あ、そ、そうなんだ。」
「うん、そ、そうなんだよ。」
いかん、これ以上なにを話せばいいか思い付かない。
アルティさんならばどうするだろうか。
えーっと、えーっと。
くっ、わからん。
もっとアルティさんから指導してもらえば。
いや、待て、それでは何の師匠だ。
そんな風に悩んでいると、マツバが私に体重を預けてきた。
マツバの顔が私の胸のあたりに。
「このまま、落ち着くまで抱き締めて
貰ってていいかな。何だか、とても安心するの。」
「あ、うん、い、いいよ。」
「後、ちょっと座っていいかな。立ってるのちょっと辛いかも。」
「うん。」
私達はマツバを抱き締めたまま座った。
私はマツバの頭をなで続けた。
マツバは何かに耐えているかのような小さな呻き声を出していたが、しばらくして彼女は眠りについた。
私は彼女を馬車の中に運んだ。
お姫様だっこで運んだ。
馬車から出ると、アルティさんが笑ってこちらを見ていた。
「な、なんですか。」
「なかなか見せつけてくれるじゃないか。」
「あ、安心させるためですよ。」
「照れる事無いだろ。」
「照れてなんていません。と、ところで精霊のお爺さんは何処に行ったのですか。」
「ん、ああ、あの爺さんなら逃げた盗賊どもをこの森から追っ払いに行ったよ。」
「そうですか。」
「それにしても、私の女巡り旅行のつもりで始めたのに、お前達の新婚旅行になりそうだな。」
「いや、結婚してませんけど。」
「キスぐらいしてやればよかったのに。男は度胸だぞ、男で無くとも行動せねば何も始まらん。」
「むぐぐ。」
キス、その言葉を聞いて私は寝込んでいた時にマツバにキスをされた事を思い出した。
彼女が私にキスをすると言う事は、マツバは私に好意を寄せていると考えてよいのだろうか。
あれから、キスされた後もマツバの態度は特に変わらなかった。
向こうも照れてその事は表に出していないだけなのだろうか。
ううむ、考えてもらちがあかない。
もう寝よう、そうしよう。
「もう寝ます。」
「女を抱けん日は辛い、夜這いしていい?」
「駄目です、絶対に。」
「ケチんぼ。」
「ケチじゃないです。普通です。」
「もういい、私も寝る。」
「どうぞ寝てください。」
こうして私達は再び眠りについたのだった。
っ●~




