12 盗賊襲来
人が迫ってくる気配がする。
一人じゃない、複数人だ。
おおかた盗賊か何かだろう。
私は起きた。
アルティさんはとっくに起きてた。
マツバはまだ夢の中にいた。
幸せそうに寝ていたけれども起こした。
やがて、盗賊どもが我々の前に姿を表した。
「親分、女がいますぜ。」
「あっちの男の鎌、なかなか値が張りそうですぜ。」
「おい、てめーら。死にたくなけりゃあ金目の物と女を置いていきなぁ。」
盗賊どもが次々にこう言った。
私は立ち上がり、鞘から剣を出し、地面に突き刺した。
これは降伏するためではない。
「あの娘に血は見せたくはない。ここはどうか引いてもらえませんか。」
一瞬キョトンとした盗賊達だがやがて私を馬鹿にしたように笑いだした。
「てめー、この人数相手に勝てると思ってるのかよ。」
「さぁ、私ではどうだかわかりませんが、後ろにいるでっかい鎌を持ったかっこつけたオッサンならば余裕でしょうね。」
「へ、てめーも充分かっこつけてんだよ。とっとと死んであの世で女が俺達に犯されるところでも眺めてろや。」
「おや、さっきと言ってる事が違う。それならば仕方ありませんね。」
私はこちらに向かってくる盗賊を鞘で殴り倒した。
「こいつ、手ぇ出しやがったぞ。」
「喚かんでください、あの娘がびっくりする。」
「きゃあ。」
アルティさんが悲鳴をあげるフリをするが無視する。
「1つ忠告しましょう。相手にするならば私にした方がいい。今回はあの娘がいるため、私ならばこの鞘で良くて気絶する程度に止めてあげましょう。だがあのオッサンはやめた方がいい。あの娘やオッサンを狙うのはやめた方がいい。その場合は命は保証しない、出来ない。」
「舐めてんじゃねぇぞ餓鬼がぁ。」
「仲間やられて引き返すと思うんじゃねぇぞ餓鬼がぁ。」
盗賊どもが襲いかかってくる。
やれやれ、無知な盗賊どもだ。
私はともかくアルティさんを知らんのか。
私はファイナさんに貰ったペンダントに魔力を込めた。
ペンダントは私の魔力に応え、私の身体能力を増幅させた。
とろい、奴らの動きがとろく感じる。
盗賊どもの剣を避けつつ、私は鞘で相手を殴り倒す。
一人、二人、三人。
「この餓鬼、強えぇ。」
「怯んでんじゃねぇ。相手は餓鬼一人じゃねえか。」
「女だ、女を狙え。」
盗賊達はマツバに襲いかかろうとした。
マツバが怖がっているのが分かる、それだけで怒りが込み上げてきそうだ。
だが私は忠告した筈だ。
あの二人には襲いかかるなと。
奴らがマツバに触れようとした瞬間、アルティさんが張った結界が盗賊どもを弾き飛ばした。
「あの小僧の忠告を聞いていなかったのか、お前達は。私とこの娘に手を出せばどうなるか、知りたいのか。ならば教えてあげよう。だがマツバちゃん、君には内緒だ。今から目をつむり、耳を塞いどけ。」
アルティさんがそう言うと、盗賊を一人左手で持ち上げる。
持ち上げられた盗賊は掴まれた部分からどんどん凍っていく。
あまりに冷たいのか、あまりに痛いのか、盗賊は絶叫を上げる。
その内絶叫は鳴りやみ、氷の塊が1つ出来上がった。
アルティさんは氷の塊を他の盗賊に投げつけた。
鈍いうめきのような声と音、そして氷が中身ごとコナゴナになる音が響いた。
マッタリはどこか?
私はアルティさんに殺される前に盗賊どものもとに跳躍し、鞘で眠りにつかせた。