11 楽しい迷子
「あー、空気が美味しい、どこもかしこも木、植物、植物天国だー。」
マツバが楽しそうにはしゃいでいる。
初めての森の中、植物好きのマツバにはここが天国に見えていることだろう。
マツバが喜んでいる事はいいことだ。
連れてきて良かったと思う。
私達がこの森で迷子になっていなければ。
アルティさんにしばらくついて行った後、彼はこう言った。
「迷った。」
その後、私達は一旦休憩する事にした。
マツバがここら辺のキノコや木の実などを集めたそうにしていたので少し付き合ってあげる事にした。
彼女はこんな状況でも本当に楽しそうにキノコや野草、木の実の採集に勤しんでいる。
「マツバ、このキノコはどうだ。」
「それは毒キノコだね。」
「じゃあこれは。」
「それも毒キノコ。」
「これは。」
「それは性欲材になるよ。」
「よし確保。」
「エッチー。やっぱりアルティさんの弟子だね。」
その後も私は毒キノコばかり見つけた。
見分けがつかん。
キノコや野草はマツバに任せて私は木に実っている実を採ることにした。
「おや、こんなところに人とは珍しい。」
採取しているところに、一人の老人が現れた。
マツバが元気良く挨拶をする。
「こんにちはー。」
「こんにちは。道にでも迷ったのかね。」
「そうなんです、お爺さんはここの人ですか?」
「うむ、ここら辺はワシの庭、いや体の一部みたいなもんじゃ。」
「良かったー。それじゃあこの近くに人が住む村とかわかりますか。」
「うむ、あっちの方角にまっすぐ進めばリコッホ村ってのがある。こっからだと、2日はかかるかのう。」
「ありがとう、お爺さん。」
「そうじゃ、この木の実、先ほど拾ったのだがお嬢ちゃんにやろう。」
「いいんですか。」
「可愛いお嬢ちゃんには目がないんじゃ。」
「ありがとうございます。いただきます。」
進む方角はわかった。
木の実もいくつか貰った。
アルティさんがいるところまで戻る事にした。
「それで、そのじいさんは近くに住んで無いのかね。近くに住んでいれば泊めてもらうことも。出来たのでは?」
「あ。」
うっかりしていた。
アルティさんの言う通りじいさんの家が近くにあるのなら泊めてもらうように頼めば良かった。
「まあいい、暗くなるまでもう少し時間がある。もう少し進もう。」
アルティさんが馬車に乗り込み、馬に指示を出す。
いい忘れていたが私達は馬車で旅をしていた。
暗くなり、近くに川がある場所で野宿の準備を整えた私達は食事をとることにした。
採ってきた野草でシチューを作ったり、キノコなどを焼いたりした。
「そういえば、マツバちゃんは魔法を使えるようになりたいんだっけ。」
アルティさんがマツバに聞いた。
「うん、使えるようになりたい。」
「じゃ、これ。」
そう言ってアルティさんはマツバに木の枝渡した。
マツバは頭に?マークを浮かべる。
「念じるんだ。」
「え、」
「その木の枝から花が咲くように念じるんだ。こんな感じに。」
そう言うとアルティさんは同じような木の枝に魔力を込めて花を咲かせた。
うわ、毒々しい色してる。
幸い毒々しいのは色だけだった。
魔力を解くと花はすぐに消えた。
「むう、むむむ、むむむむー。」
マツバが頑張って念じている。
だが花は咲かなかった。
「お兄ちゃんもできるの、これ。」
もちろん私にだって出来る。
枝を借りて魔力を込めた。
アルティさんのよりちっちゃい白い花が咲いた。
「可愛い。」
「ちっさいな。」
マツバに枝を返すと再び花を咲かせるために念じ始めようとするが、食事がまだ終わって無いので先に食事を片付ける事にした。
食事が終わった後も寝るまでマツバは花が咲くように念じ続けた。
のーんびりな旅になるといいねぇ。




