血の宴
「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
嗚呼、何度聞いただろう?この断末魔を。
「さぁ、どうぞ?」
何度見ただろう?
この、いやらしい、誇らしげな眼を。
夜行は、三時くらいに終わった。
だが、これからだ。地獄の時間は。
「皆さんもお気づきの通り・・・」
ほら。狸が笑ってる。獲物を見つけた、そんな目で。
まぁ、獲物はホントに居るんだけど。
「今日の夜行に・・・紛れ込んでおります」
一斉に全員が、後ろから四番目に並んでいた少女を囲む。
皆人型をとっているけれど、私達は所詮妖怪。
人間の、敵。
「いや・・・い、や・・・」
少女が後ずさる。
だけど、逃げられはしない。
逃げることは・・・出来ない。
「さぁ・・・宴の始まりです!!!」
恍惚とした目の狸がそう叫ぶのと同時に。
血の宴は、幕を開けた。
人間一人では出られないであろう山の奥。
町には叫んでも聞こえないだろう、その場所で。
彼女は文字通り、食われる。
逃げようとした腕を掴まれ、生きたまま背を剥がされ。
仰向けにされ、中心から開かれる。
この頃にはもう、彼女の意識は痛みによってほぼ消えかかり、身体は痙攣を繰り返す。
そのまま内臓を引きずり出され、血を吸われ・・・
「風華様」
やってきたのは、其処に混ざって食っていた、蛇族の男。
「お召しにならないので?この年頃のものは、真に美味にございますが・・・」
男の言葉に反応したのか否か。
今まで食べる事に夢中だった奴等が、私の周りに集まってきた。
「そうでございます。さぁ、お召し下され」
そう言って鬼族の頭は、手に乗せた心臓を私によこす。
「人間の心臓は、身体の中で一番美味なところにございますれば。さぁ」
まだ動きのあるそれに。
生臭い人間の血の匂いに。
私は嫌悪感を覚えた。
「・・・いらん。人間は、嫌いだ。その血肉など一滴とて身体に入れるつもりはない」
「・・・そうでございますか・・・」
納得しない、そんな顔をしながらも彼は、別の妖怪にそれを献上した。
妖怪に世界は、人間の世界と似ている。
身分、というものがあり、上の者に気に入られればそれだけ良い待遇が受けられる。
私は身分的に上の一族だから。
だからこうして、媚を売られるのだ。
先ほどの行動も、彼等は良かれと思ってやったのだ。
実際、私の一族の者でなければ喜んだ事だろう。
しかし私にとっては嫌なことだったのだ。
早く終わらないだろうか・・・?
そう思いながら私は、ただ感覚を閉ざした。