<第三章>
駿哉の前に突然現れた若くあどけない笑顔の藍。
そんな藍に駿哉は次第に夢中になっていく。
その気持ちを抑えきれず、彼女に会いに行ってしまう彼は、
止めどない恋心の深見へと嵌まっていく。
麻椰や子供達はまだ帰らない。そんな寂しさからなのか、
それとも忘れかけていた淡い恋の予感なのか。
駿哉にはその気持ちをまだ自分の中で理解出来ずにいた。
「若くて可愛い女の子が俺なんかに、これはきっと何かがある。
いいやそうじゃない。彼女の目を見れば解る。
彼女はそんなに悪い子じゃない。俺には解るそう感じるんだ」
駿哉が部屋の中でぼんやり過ごしている間にも、考えている事は
すべて彼女の事だ。彼の頭の中ではもう藍と言う一人の女性に、
その全てを埋め尽くされてる感覚だったのだろう。
そしてクリスマスイヴ当日、駿哉は藍にメールを送った。
「何処へ行けばいい?」
しばらく経って藍からのメールが戻って来た。
「地図送ったよ~、それを見て家まで来て!」
「えっ直接家に?」
「大丈夫だよ。私アパートで独り暮らしだから、他には
誰もいないよ」
そんなメールに駿哉の気持ちは更に高ぶった。
ホームセンターで昨日偶然会ったばかりの彼女に会いに行く為、
気付けば駿哉はお菓子や飲物を買い込んでいた。
そして緊張で張り裂けんばかりの気持ちで、彼女の部屋の玄関
の前に立っていた。呼鈴を押す手が小刻みに震える。
こんなに初々しい気持ちになったのは何年ぶりの出来事だろう。
「こんにちは、迷わなかった?。わぁお菓子だぁ~嬉しい!」
そう言って藍は可愛らしい笑顔を見せた。
駿哉はそれを見て一瞬ドキッとした。
部屋の中に入ると、女の子らしい可愛らしい置物が
たくさん置いてあった。駿哉は何故か麻椰と恋愛していた
時の事よりも、淡い初恋をしていた懐かしいあの頃を
思い出していた。
「はいっ!」
そう言って駿哉は藍にお菓子や飲物を手渡した。
そして・・・。
「あんまり高価なものじゃないんだけど、一応持って来た。
はいっプレゼント!」
少しハニカミながら渡した箱の中には、ピンクゴールドに輝く、
クローバーのブレスレットが入っていた。
「わぁ凄い!こんなの貰っていいの?嬉しい!大切にするね!」
「うん・・・」
気が付けば、駿哉はクリスマスの2日間、自然と藍の部屋で
過ごしていた。寒い外とは打って変わって、部屋の中で二人で
寄り添って互いを温めあった。勿論、アメリカにいる麻椰や子供
達はそんな事を知る由もない。
等々大晦日の日がやって来た。
今年最後の仕事を終えた駿哉は再び藍の部屋の前へとやって来た。
そして呼鈴を押した・・・
そうするとドアが開いて中から藍が出て来た。
寂しそうな顔で駿哉の顔を見詰める藍、
「来てくれたんだ!嬉しい!
だってもう来てくれないのかと思ってた・・・」
「ごめんねっ!年末で仕事が忙しくて・・・」
「そうだったんだ。じゃしょうがないね」
そう言うと藍は少し安心した表情を見せた。
「彼女と過ごしてたのかと思って、何だか勝手に妬いちゃってたよ><」
「大丈夫、彼女と過ごしてないから」
駿哉は少し暗い表情でそう答えた。
「もうすぐ年明けるね!駿哉くんはいくつになるの?」
「えっ俺?言い難いなぁ、おじさんだよ?」
「えぇ~そんな風には見えないよ?」
「来年は30歳だよ」
「そうなんだぁ、
全然見えなかった25歳くらいにしか見えないよ?」
そんな嬉しい言葉を投げかける藍。
「藍ちゃんはいくつなの?」
駿哉がそう尋ねると藍は
「18歳だよ 来年19歳」
「そうなんだ、大人っぽく見えるね」
「そう?」
純真であどけない表情で語りかけてくる藍に、駿哉は取り留め
の無い程にのめり込んで行った。
第四章へつづく・・・。