第8話~入学式~
そんなことがあり、俺は魔王学園の入学式を迎えた。
アウラが案内してくれたおかげで、迷うことなく会場に来ることができた。
指定された席に座り、周囲を見渡す。
同年代くらいの生徒たち。
そして、胸元や腕に浮かぶ紫色の紋様――魔性紋。
(……ここにいる全員が、俺と同じなんだ)
少しだけ安心する気持ちと、不安が入り混じる。
学園での生活には期待もある。
でも同時に、自分がここでやっていけるのかという不安も消えなかった。
この学園で何を学ぶのかは、まだよく分からない。
だが、訓練場で見た人たちのように魔法を自在に扱うことになるのだろう。
(俺にも……できるのか?)
そんなことを考えているうちに、前方の壇上に人影が現れた。
「それでは入学式を始めます」
会場が静まり返る。
「皆、まずはおはよう」
低くよく通る声。
「ワシはオブスキュリタスという。もう知っておる者もいるかもしれんが、魔王兼校長をしておる」
魔王自らが入学式に出ていることに、少し驚く。
「たまにこうして皆の前に顔を出すことがあるが、その時はよく話を聞くように」
そこで一度言葉を区切り、周囲を見渡した。
「では今からクラスの発表を行う。最前列の者から確認してくれ」
そう言われ、最前列の生徒たちが立ち上がり、壁に貼り出された紙の方へ向かっていく。
どうやらクラス分けが書かれているらしい。
俺も人の流れに合わせて立ち上がり、掲示の前へ向かった。
(アギト……)
自分の名前を探す。
「あった。一年B組……」
小さく呟くと、少しだけ緊張が増した。
(知ってる人、いないよな……)
その時だった。
「アギト君」
後ろから声をかけられる。
振り向くと、そこにはアウラが立っていた。
「え?なんでここに?」
「迎えに来た」
当然のことのように言う。
「ボク、一応先輩だから」
そういえばアウラは二年生だった。
「クラス分かった?」
「一年B組です」
「じゃあ案内してあげる」
そう言って歩き出すアウラの後を追う。
正直――少し安心していた。
教室は城の一角にあった。
「ここだよ」
「ありがとうございます」
「困ったら呼んで。ボクの教室、上の階だから」
軽く手を振り、アウラは去っていった。
一人になる。
(……よし)
小さく息を吐き、俺は教室の扉を開けた。
中にはすでに何人かの生徒が座っている。
全員、魔性紋を持っている。
だが雰囲気はそれぞれ違った。
無表情な者。
楽しそうに話している者。
鋭い目をしている者。
(ここで生活するんだ……)
少し緊張しながら空いている席に座る。
すると、扉が開いた。
入ってきたのは見覚えのある人物だった。
「あ……」
思わず声が漏れる。
「今日から君たちの担任をするメディクスです」
優しい声。
訓練場で見た治癒魔法の人だ。
「まず言っておくね」
教室を見渡しながら続ける。
「ここにいる時点で、君たちは普通じゃない」
空気がわずかに揺れる。
「でも安心して」
メディクスは微笑んだ。
「普通じゃないのは、みんな同じだから」
その言葉に、少しだけ肩の力が抜けた気がした。
「これから君たちは、魔法の制御、戦闘技術、知識を学んでいくことになります」
やはり訓練するのか。
胸の奥が少しだけ緊張する。
「最初はできなくて当たり前。焦らなくて大丈夫だからね」
その言葉を聞きながら、俺は静かに拳を握った。




