第6話~寮生活~
寮に着いたあと、俺はそのまま部屋へと連れていかれた。
案内役の人が扉を開ける。
「ここがアギトさんの部屋になります」
そう言って去っていった。
(ここが俺の部屋か……)
部屋は思ったより広かった。
二段ベッドに机が二つ。
生活に困ることはなさそうだ。
ここにはもう一人住人がいるらしい。
とりあえず挨拶だけしておこう。
「こんにちは……」
シーン……
反応がない。
外出中かな?
そう思いながらベッドに近づいた、その瞬間だった。
ガシッ
「うおっ!?」
突然、足を掴まれた。
驚いた俺は思いきり尻もちをつく。
「いやぁ〜ごめんごめん。そんなびっくりするとは思わなくて〜」
ベッドの上から這い出てきたのは、中性的な顔立ちの人物だった。
年齢は俺と同じくらいだろうか。
どこか掴みどころがない雰囲気。
「ボク、アウラって言います。2年生だよ。よろしくね」
先輩だったのか...
「よ、よろしく……俺はアギトって言います」
「おっけー。アギト君ね」
アウラは軽い調子で頷いた。
「ボクのベッド上だから、アギト君は下ね」
「はい……分かりました」
言われるがまま荷物を置く。
といっても大した物はない。
服が数着くらいだ。
その様子をアウラがじっと見ていた。
「……ねえ」
「は、はい?」
急に声をかけられて少し身構える。
アウラは俺の胸元を指差した。
「その痣」
心臓が一瞬強く跳ねる。
「ああ……これ、魔性紋って言うらしいです」
「うん。知ってる」
あっさりとした返事。
そしてアウラは自分の首元の服を少しだけめくった。
そこには、同じような紫色の紋様があった。
「ボクもだから」
一瞬、言葉が出なかった。
同じ。
その事実だけで、胸の奥が少し軽くなる。
「……そう、なんですね」
「怖い?」
「え?」
「ここ」
寮を指差す。
「魔人ばっかりいる場所」
少し考える。
正直――怖くないと言えば嘘になる。
でも。
「……前よりは、全然」
家にいた時より。
ずっとマシだ。
そう思った。
アウラは少しだけ笑った。
「そっか」
その笑顔は、さっきのイタズラっぽい雰囲気とは違って、
どこか安心させるものだった。
「じゃあ大丈夫だね」
「え?」
「ここ、意外と楽しいよ」
楽しい。
その言葉に少し驚く。
「明日、案内してあげる」
「案内?」
「食堂とか訓練場とか」
アウラはベッドにごろんと転がった。
「迷うと死ぬから」
「死ぬ!?」
「冗談だよ」
……たぶん。
いや、この城普通に危なそうだから冗談じゃない可能性もある。
「まあよろしくね、アギト君」
そう言ってアウラは手を差し出してきた。
俺は少し迷ってから、その手を握った。
温かかった。
家を追い出されて。
死にかけて。
わけも分からないままここに来て。
でも今――
少しだけ安心している自分がいた。
ここでなら。
もしかしたら。
ちゃんと生きていけるかもしれない。
そんな気が、少しだけした。




