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第9話~初めての授業~

教室に静けさが戻ると、メディクスはゆっくりと教卓に手を置いた。


「改めて、今日から君たちの担任をするメディクスです。専門は治癒魔法。軍にも所属しています」


ざわ、と小さなどよめきが起こる。


「ですが、今日は治癒ではなく“基礎”の話をしましょう」


黒板に、白いチョークで式が書かれる。


 威力 = 込めた魔力の量 × 熟練度


「これが魔法の基本式です」


「熟練度とは、慣れではありません。己を知ることです。怒りに飲まれないこと。恐怖に支配されないこと」


メディクスの目が一瞬だけ鋭くなる。


「特に――負の感情は、魔法を強くします」


空気が張り詰める。


「しかし、一定を超えると暴走します」


黒板にもう一つ言葉が加わる。


 暴走閾値


「暴走状態に入れば、魔力は制御を失い、破壊行動へと変わる」


誰かが小さく呟く。


「だから俺たちは集められたのか……」


メディクスは否定も肯定もしなかった。


「さらに君たちには魔性紋がある。威力は平均で一・五倍から二倍に増幅される」


「つまり、君たちは――壊しやすい」


その言葉が胸に刺さる。

アギトは無意識に自分の手を見る。


(壊しやすい……?)


「では実践しましょう」


メディクスは小さな水晶球を机の上に置いた。


「魔力を少量込め、灯りをともしてください。蝋燭程度で構いません」


一人目の生徒が成功する。

小さな橙色の火。

次も成功。

次も。

安定した光が教室に並んでいく。


「次、アギト君」


心臓が跳ねた。


「……はい」


水晶に手をかざす。

ほんの少し。ほんの少しでいい。

魔力を流す。

ぽ、と火が生まれる。

だが次の瞬間、色が揺らいだ。

橙から――紫色へ。

空気が一瞬だけ冷える。


「……!」


慌てて魔力を止める。

火は消えた。

教室が静まり返る。


「今の、何色だった?」


小さな声が聞こえる。

メディクスは何も言わず、水晶を回収した。


「初日はここまでにしましょう」


柔らかな声に戻っている。


「制御は焦らなくていい。昨日より今日、今日より明日。それで十分です」


授業が終わる。

ざわざわと教室が騒がしくなる中、アギトは動けなかった。


(あれは……なんだった?)


胸の奥が、ざらついている。

まるで何かが、内側から叩いているようだった。

教室の扉の外。

二階の廊下から、アウラは静かに教室を見下ろしていた。

紫色。

間違いない。

あの御伽噺にあった色。

すべてを焼き尽くした、暴走の炎。


「……やっぱりか」


小さく、誰にも聞こえない声で呟いた。


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