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4、主人公が聞いた狂人の物語

現在(3話)と過去話(4話)でまとめられています。また、順番を入れ替えるかもしれません....


削られた話は今後別の場所で登場します(九賢者について)



【辺境の魔物〈1〉ブルート】


 金貨の危険性にいち早く気付き、行動を起こした王国『リッテン』。ほとんど鎖国といってもよいほど他国との交流を持たない小国だった。それが突然、表舞台に登場し、先導しはじめた。それもたったの7歳の少年が代表としてである。他国は裏で操っている人物がいるのだろうと現在も信じない者たちは多い。しかしブルートは知っていた。自我が芽生えると同時に大人なような振舞いをする王子。正確にはなくなった先代王、王子の祖父にあたる人物にそっくりだった。誰かに言うでもなく胸に秘めている。


 ――どうせ、信じてはもらえまい....


「最近、いい噂聞かないね。ねぇ? ブルート」


 想いにふけっていたせいで返事が遅れる。一日中外に出ないことが多い王子の肌は青白い。髪の色素も薄く、唇は黒よりの赤、よけいに際立って吸血鬼のようだと顔を合わせるたびに思う。


「――はい、殿下」


 本当は話など聞いていなかったのだがとりあえず返事をした。それがばれているのか、頬杖をついた王子の顔が面白くなさそうに歪む。不貞腐れる子供のような顔ではない、長い年月を生き、退屈した老人のような雰囲気。


「君がどうやって結婚できたなのわからない。堅物で仏頂面。制服に乱れは一切ない。騎士団長として模範的。返事は『はい』か『いいえ』時々、『殿下、おはようございます』だ」


 忌々し気に呟き、ふんっと鼻を鳴らした。相当、退屈な時は怒涛の嫌みのラッシュが始まる。この特徴も先代王と一緒だ。先代王は俺に対してではなく『無能な手下』だったが....


「もう少しおしゃべりしてくれない? 面白みも欠片もないやつだな君は」


 そんなに話をしたいなら聞いてやろうかと一瞬思ったが止めた。妻に打ち明けて笑われたの思い出した。妻によれば両親より祖父母に似るもんなんだと言っていた。その範囲をはるかに越えている気がするが底抜けに明るい笑顔をみれば、どうでもいい悩みより、妻と楽しい時間を過ごしたい。


「っは。申し訳ありません」


 何に対して謝っているのか自分でもわからないが、相手は王子である。たぐいまれなる才能のせいで国王に睨まれた可哀想な王子様。第一王子にも関わらず味方が少ない。せめて、自分だけでも絶対の忠誠を誓ったのだ。


「きな臭いよねぇ? 君の奥さん、帝国出身だっけ」


「――っは」


 ――なぜ突然、妻の話がでる?


 意地悪な笑顔を浮かべた王子に嫌な予感がする。かつての先輩の言葉が頭に浮かぶ。『先代王は気に入ったものに対しては凄まじく執着する。その愛し方は普通ではない。言葉では言い表せない。どこか曲がっているんだ。気をつけろ、君は若い、王も病床に伏している。忠誠を誓うことがなくてなによりだ』涙を流した先輩は、一体何に対して泣いたのだろうか?


「ご実家があるな? 何かあったら大変だ、そうだろう?」


 妻の実家は辺境伯の領地にある。実家というより、代々辺境伯に使える使用人の家系であった。遠征の際に出会い、結婚した。というか、まだ結婚したばかりだ。


「は、い。そのとおりでございます」


「調べてくれよ。新婚なのに申し訳ないけどさ。君は僕の直属の騎士だろう?」


 ニヤニヤと楽しそうに声が弾んでいる。手元にある書類がそんなにも面白いのか、堅物に面白味のない俺の顔がめずらしく歪んでいるのが嬉しいのかわからない。不愉快きわまりない。向こうから詳細を話す気はないようだ。こういうめんどくさいところも先代王にあったのだろうか?


「畏まりました、主に何を――。」


「噂のコイン、さ。虹色に輝く黄金の金貨。その輝きは魔物をも魅了する、だっけ?」


 王子の顔が消え、引き出しが滑る音がする。カタッと物音がして、それだけではない音にも気付いた。素早く剣を抜き放った瞬間、扉が勢いよく開く。相手を認識する前に侵入者に突きつけた。


 ――なんだ、最近の、新人か。名前はルーキスといったか?


 どこか抜けていて、ぼうっとすることが多いと報告を受けていた男。しかし、新人の中ではとびぬけて強く先輩騎士が指導に苦戦しているという。優秀であろうが、新人であろうが、ここは殿下の執務室。名乗りもせずに乗り込んできて、処分を下すのは殿下だ。首元にピタリとあてた剣先におっかなびっくり手を上げ、うろたえるルーキス。


 ――攻撃に気づき、足を止めた。新人のくせに


「いやぁ~、いいものを見たね!」


 めずらしく、ご機嫌な殿下の声が後ろから聞こえる。きっと、可愛げのない邪悪な笑みを浮かべているに違いない。ルーキスが顔を真っ青にしているのがその証拠だ。


「「も、申し訳ございませんでしたッ、殿下! た、団長殿!!」」


 涙声で直立不動のまま叫ぶルーキス。殿下が一向に声をかける様子がなく仕方なく、事情聴取からはじめた。


「それで、ノックせずに何の用だ?」


 殿下に弄ばれ、部下の失態に思わず語気が強まる。身を竦め、目をつぶりながら報告をはじめる。


「殿下にご報告申し上げます!! 辺境伯より“例”の狂人を複数人捉えたとのことです!更に魔物の活性化により人員の要請が....」


 ――はぁ、そういうことではなかったのだがな


 剣をさげ、殿下の顔を伺う。対外向けの感情の読み取れない笑顔。


 ――この内弁慶め....


「それは丁度いい、教育の必要なそこの新人とともに行ってこいブルート・ゴルドン騎士団長」



 鷹揚に頷いた王子はペンを走らせ、一枚の書類を押し付けてきた。内容は辺境伯領に出現した新種の人型魔物について。調査員に自分とルーキスの名が記されていた。


「かしこまりました」


 新人の悲痛な叫びに耳を塞ぎ、詳しい資料とやらにざっと目を通す。その時、真剣な表情の殿下が呟いた言葉。特に重要ではあるまいと聞き流したが、もし戻れるならしつこく追及したに違いない。


「ついにきたか。でもまさか、そういう事だとはね」




 。。。。。。



【辺境の化け物〈2〉ルーキス】



 轟々と燃え盛る、民家を颯爽と横切る男は、私にとって尊敬する団長であって目標で命の恩人であった。子供のころ、魔物に襲われかけたところを助けてもらったのだ。正直、雲の上の存在である王太子殿下よりも心の中では彼に忠誠を誓っているようなものだった。全く忠義心が無いかといえばそうでもない。普通、王族の前で無礼を働けば即刻打ち首である。先日の出来事からもかの御方の心の広さには畏敬の念を抱かざる得ない。


 ぼんやり考え事をしながら、団長の後ろについていっていると急に立ち止まった背に顔面から思いっきりぶつかった。一見、辺境伯に会うため畏まった服装だ。しかし、中にはしっかりと着込んであり重装備な鋼鉄の背に鼻から赤い何かが滴り落ちた。



「あ、すみません。団長。えっと、鼻血ついちゃいました」


「別に気にしない。だが気をつけろ、ぼんやりしていれば食われる。それに....」


「それに??」


「わからなくなるだろう」


 意味深な言葉だけを言い残し、スタスタと先に進んでいく。奥に進むにつれ徐々に炎は勢いを失い、燻ぶるだけの場所にでた。


 それなりに大きく立派な屋敷があったであろう場所。燃え尽き見る影もない無残な姿。崩れた屋敷の前に一人の男が立っていた。背を向けていてピクリとも動かない。剣の柄に手をあてる。


「団長、あれがきょ....」


「ああ、いらっしゃったか。ブルート卿。」


 ――違うのか....


 気まずさを誤魔化すのに脇にぶら下げていたヘルメットを手に持つ。


「ご連絡感謝いたします。例のものはどこに」


 上質な服装、上品な立ち居振る舞いから貴族であることがひと目でわかる老人。辺りを見渡しても護衛の姿が見えない。一人でここまで来たというのだろうか??



「ここだよ、恐ろしいものだ」


 そう言って、老人が指差した先は全焼した屋敷。パチパチと未だ燻ぶり続け、灰が舞っているそう思った。


「あの黒い影がそれだよ。」


 灰だと思っていたもの、違かった。屋敷の支柱にくくりつけられた人のような形。それが蠢き、パキパキと音を立てていたのだ。


 ゾッとした、全身を氷に押し当てられたかのようにわけもわからない恐怖が襲いかかる。


「だ、団長....あれは......」


 大の大人だというのに、未知のものに恐怖し後付さり団長のマントにしがみついた。


 マントはスルリと手から抜け、屋敷へと去っていく。恐る恐る、マントの後に続くが脚は重く、一歩踏み出すだけでも気力を振り絞った。老人とすれ違う瞬間、瞬き一つせずただジィっと影を見つめる姿に鳥肌が立った。


(世界が、違う)


「あれが....生きているのか?」


「生きている。生存者の話によれば、急に暴れ始めた主人を縛り付けたそうだ。その後に魔物の行軍に村は踏み潰され被害を免れた場所も燃え広がった炎に焼け落ちたとか」


「「うわッ!!」」


 団長と自分の間を気配もなく、ヌッと現れた老人。感情の読み取れない黒い目にゾッとする。


(この人なんか怖くて嫌だ....)

 老人の方が気になって仕方ないうちに恐怖心は薄れ屋敷の中に躊躇なく足を踏み入れた。自分の後ろに音もなく無表情についてくる老人。


「だ、団長。これは一体。なんでしょうか」


 人の形をした灰、動き呻き続ける何か。目前にしても何だかわからない。


「ローエン辺境伯殿。これが狂人ですか?」


「そうだ。彼らの共通点は唯一つ。帝国の金貨を持っていたことだ。それも、強奪されたもの。ある人間は魔物が持っていたものだとのたまった」


 ――帝国の、金貨?? そもそも金貨自体国同士の取引レベルのものだ


「魅入られたものは炎に焼かれようがこうして蠢く。完全に人ではないものへと変化しているのだ。この金色に輝く片目が特徴。彼らを完全に滅するには....」



 表情を変えることなく辺境伯はナイフを目に突き立てた。


 手足をブルブルと痙攣させ、灰となって消えた。


「辺境伯、貴重な標本を殺されては困ります」


「生きのいいの取ってある。ここはいつ魔物が戻ってくるかわからん」


 淡々と話を続ける彼らに、何とか付いていく。狂人とやらは辺境伯の別荘、地下監獄に閉じ込められているのだとか。


 もう、何が起こっても動じないだろう。これ以上の出来事なんてあってたまるかと心の中で悪態をついた。


 。。。。。。




 血みどろ姿の自分を見下ろす。酷い異臭を放ち、ヘルメットの隙間を抜け髪の毛にベッタリと張り付いていた。滝のように浴びた魔物の血。


 動じない訳がなかった。


 隣の団長をみれば所々に、返り血を浴びているだけだった。


「団長、魔物に遭遇するってわかってたんですか?」


「――辺境の地だからな。いつ戦闘になってもおかしくなかった。」


 それだけ魔物が多いってことなのだろうか? それにしては大群だった。死を覚悟したほどだ。


 それを散歩のような気軽さで切り刻んでいく2人。村を埋め尽くすほどの魔物は数時間で綺麗サッパリ切り刻まれていたのだ。


『雑魚が、わらわらと湧きやがって』


 そう言い放った、辺境伯の狂喜に満ちた目を思い出すたびに身がすくみ上がる。


「そういえば、辺境伯様はどちらに?」



「お前は時々、ぼうっとしているな。屋敷を開けるからと先に行っただろう?」


「そ、そうでした」


 呆れられたかと思ったが声や表情に変化はない。厳しく叱責される方が心持ち的には楽だ。突き放されていないから余計、自責の念に苛まれる。


 急に木々がひらけ辿りいたのは、別荘と言うには立派な洋館だった。


 槍を地面に刺しただけのような柵に囲まれた屋敷の中。質素な広いホールが出迎えた。


「床が....つなぎ目のない石?......珍しいですねだん」


「日常だからだ。」


 コツコツと奥から現れた辺境伯が杖で足元をさした。


「掃除がしやすい」


 うしろを振り返れば赤茶色の2つの足跡が永遠と続いていた。


(そういえば。足跡、なかったよな?)


 先に行ったはずの辺境伯の足跡が見当たらなかった。思わず、辺境伯を凝視する。自分たちとは変わらない血濡れ姿。



 まさか――。


 ゴクリと唾を飲み込む。



「――裏口ぐらいあるだろう」


 思考を読み取ったのか団長の鋭いツッコミに全力でうなずく。


「そ、そうっすよねー」


 先導する辺境伯に付いていき、ジメジメとした石の階段を降りれば村で聞いたうめき声が耳に入ってくる。


 “生きのいい”のがいるんだったっけ?


 正直、見たくもないが仕事なのだからそうはいっていられない。


 見た目は、普通の人間....動きは正気を失った獣そのもの。片目が潰されており、もう片方の目は金色に輝いていた。


「ウッワー....ところで殿下は一体何を危惧しておられるのですか?」


 確かにこんなのが町中に現れたら大惨事が起こるだろうが魔物に比べればなんてことない。なぜか辺境伯に白けた目を向けられる。


「申し訳ない。少々、才能ゆえに常識を持ち合わせていなくてな。」


「団長っ!?」


「コホン、君なら一人で取り押さえられるだろうが常人には無理だ。一撃で瀕死に陥るだろう。それだけ力が強く、個体によるが俊敏だ。更に遠距離になれば的が小さくて厄介だ」


 確かにそうだ。それが今日の魔物並に出現したら厄介極まりない。


「――辺境伯殿、金貨のせいだと?」


「そのとおり、何度か試したが....この金貨は魔物を引き寄せる。そして新種の“シャドー”と呼んでいる煙のような魔物に取りつかれた人間が狂人化するのだ。実際、その瞬間は恐ろしいものだった。片目から金色の血を吹き出し、もう片方の目は染まっていく。四肢を捩り悶え、骨が軋み、折れる音。その後に平然と起き上がり血が黄金色に変わったらもうそれは人ならざるもの」


 一体何が起こっているのか。しみじみと呟く黒い目はどこを見ているのだろうか?


 額を鉄格子に打ち付け続け金色の雫を滴らせた狂人。ゴン、ゴン、ゴンとただひたすらにぶつかっていた。見ていられなくて、視線を逸らす。


「――気色悪い....」


「珍しい、君はそう思うかね?」


 初めて自分に興味を示した辺境伯、今まで自分など存在しないかのように振る舞っていたから驚いた。黒々とした目が爛々と輝き、食い入るように見つめてきた。


「辺境伯殿。魔物と金貨の関係は未だに解明出来ていないのですね」


「わかっとらん。謎は、帝国の研究所ってところか。わしは、予言するよ。そのうち、黄金に魅入られた魔物が出てくるのも時間の問題だとね」


 辺境伯は胸元から分厚い紙の束を取り出すと押し付けられた。表紙には、『金貨と魔物の関係性。黄金の魔物と伝説。帝国の噂』とあった。


「そういえば、殿下の....亡き王妃様が帝国のお姫様でしたっけ」


 つぶやき終わった頃には、2人が視界から消え狂人だけがそこにいた。


「シャドー、金貨が呼び寄せる魔物....」


 一歩鉄格子の近づき、金色の血に手を伸ばす。


 ドクリと高鳴る心臓。


「ルーキス。何をしている」


「団長! 俺を置いていくなんて酷いじゃ無いっすかー!!」


 いつもの調子を装いながら内心震えていた。俺は何故トチ狂った行動を....


 今も額を打ち続ける狂人が去り際、ニヤリと嗤った気がした。


 。。。。。。。 


 辺境伯邸に滞在すること2週間。魔物による生傷が絶えなかったある日、ルーキスは突然高熱に苦しんでいた。魔物によって負った傷は回復薬で瞬時治る。が、体内の毒までは消せない。魔物の攻撃には微量の毒を含み、蓄積すると発症する。特殊な薬草が必要だった。


「魔物の毒が蓄積して発症したのだろう。擦り傷だろうと魔物が与えた傷は治さない限り永遠と癒えることがない」


 お前は馬鹿なのかと言いたげな辺境伯の目。2週間も辺境伯と顔を合わせていれば目だけでも些細な感情の変化に気づくようになった。それを辺境伯の私兵に聞けばお前だけだと笑われてしまった。ずっと、無口な団長と一緒にいたからそのお陰で養われていたのかも知れないと思うことにした。


「ルーキス、大丈夫か」


 音程の変わらない言葉のせいで辺境伯か自分に言っているのかわからないが、団長の声だけで調子が良くなる気がした。


「だ、団長ー、ずみまぜん...グズッ、ご迷惑を」


「構わん。早く治すように」


 無愛想な表情とは裏腹に幼子のように頭を撫でてくれる団長の姿がぼやける。


「俺、今死んでも後悔ないっす....」


「言っとくが、その程度で死にはしないぞ。寧ろ苦しみ続けるだけだ」


 辺境伯がいつぞやのように間に割り込み、団長の手が離れた。うらめがましい目を向けるも視線を華麗に避け飄々とした辺境伯に怒りが湧いてきた。


「――辺境伯。早く治してください」


 つい、語気が強まる。


「いま、薬の手持ちがない。しばらくそのままで過ごすんだな」


「辺境伯、彼の負傷は私の教育、管理不足にある。早急に薬を手に入れたいのだが....」


「――ふむ。本邸にあるだろう。馬を飛ばして3日といったところか。村には....ないだろうから....ふ~む、オススメはしないが魔物狩り人が持っている可能性が高い。戦線近くの洞穴にいる....奴は気まぐれでな....」


「粘るまでです。では」


 マントを翻し、颯爽と部屋を出ていく団長は変わらず彼にとっての英雄であった。半日もしないで戻ってきた団長に早速、得体のしれない草を口に放り込まれた。舌でなぞっただけで痺れる草。本当に大丈夫なのかと目を見開き、団長に訴えるが頷くだけだ。


 ――せ、せっかく。団長が俺のために貰ってきたものを無駄には....


 意を決し、飲みこもうとしたその時。息も絶え絶えの辺境伯の息子さんと辺境伯が大慌てで飛び込んできた。ごくりと、一部を飲み込み喉を中心に痺れを感じる。


「今すぐ、それを吐き出せ!! そのまま食えば毒で死ぬぞッ」


「!?」


 焦った表情を浮かべた団長に、薬草を引き抜かれた。


「団長、俺....食べちゃいました。死ぬんですか....」


「ルーキス! 駄目だ、俺のせいで....」


 また、いつぞやのように割り込んできた辺境伯は冷めた目で言った。


「その程度で死なん。一口までならな」


 ほんの少し焦った。辺境伯様、一口とは一体、どれぐらいですか?



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