表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/39

35

 

 天気は快晴。しかし、とある男、ロジャーの心模様は荒れ狂っていた。苦労してやっと捕らえた魔物。昨日、けしかける前に別の魔物に追いかけられているのを発見して中断してしまった。そのまま死んでくれればよかったが、お節介な冒険者に助けられてしまった。唸り声をあげ、威嚇し続ける魔物。口に金貨を近づける。俺は愉快で仕方なくて笑った。


「ニック、お前もこうしていたよな? 見栄を張りたいがために」


「こんにちは、ロジャーさん。失礼しますねー」

「!?」

 背後から、拘束され身動きが取れない。腕に何かが刺され、力が抜けていく。グラグラと揺れる視界。手にあったはずの金貨がない。なんとか抜け出そうともがくがびくともしない。


 ――違う、俺が動けない!?


「お嬢様」

 拘束する男がいつの間にか目の前にいた仮面の少女に金貨を手渡した。手に触れたかという瞬間、金貨が削れていく。


 ――!?


「うん....うわっ....ボロボロに崩れちゃったよ」

「え!?」

 慌てる男の声。拘束がとかれ地面に叩きつけられる。俺の頭上に降る灰のようなもの。

「ごほッ」

 その場から逃げようと必死に重いからだを引きずり這う。

「何者だ、まさかアイツらの差し金か!? ゴホッ」

 這ってでも、奴らのところに行かなくてはいけない。復讐を遂げていない。俺にはやることがまだ残っている。しかし、強烈な睡魔に次第に体は動かなくなっていく。


「帝国金貨はありえないくらい大量につくられていた。混ざりものの噂があったが....」


 復讐心に憑りつかれていたロジャー。薄れゆく意識の中、最後に出てきたのは大好きなアシュリーの笑顔だった。


 ******


 ヘリオスという青年が突然、副ギルド長である俺を訪ねてきた。追い返そうとしたが騎士時代の事件を言い出されてしまったら聞くしかない。つい最近、そいつらが騒ぎを起こしたからなおさらだ。昨日のことを思い出して無性に腹が立ってきた。葉巻を取り出して、吸い口を切り落とす。小さな炎を指先から出したのを驚いた顔を浮かべる青年。煙を吐き出し、ほんの少し落ち着いた。


「それで、俺になにかようかな?」


 明るい茶髪、暗い金髪ともいえるあいまいな髪色の青年は、睨みにも臆することなく紅茶を味わっている。背筋はぴんと伸び、随分と厳しく躾けられたことがよくわかる。鋭い射抜くような目に爽やかな印象の声。誠実そうな青年だと観察していると口を開いた。


「金貨に関わる事は一切許されない。また、冒険者に犯罪歴のある者は、審査の対象になり、後で見つかった場合、処分の対象になると伺いました」


「その通り。冒険者が何人もなくなった。上位のランクは解禁しているが、扱いは別に任せるよう言ってある。トラブルも多いからな。ギルドの決まりをちゃんと読み込むものは少ない感心だよ」


 俺の言葉にうなずいた青年は


「実は、疑いがある人物がいます。冒険者ニックとサマンサ。レーベランの北部で起こった事件。金貨が関わっている事を聞き、騎士であったギレモア様が捜査に赴いたそうですね? 当時、九賢者での同盟賛同国であったレーベランには報告義務があった」


 ――ギレモア・ギーヴ。今その名で俺を呼ぶものは少ない


 鋭い探るような視線と図書館の資料のコピーを手渡された。青年の動作に注視しながらも資料を受け取る。未だ本題に入る気配がない。まどろっこしいのは嫌いだと葉巻に夢中になっていると前半に何を言っていたかつい聞きそびれてしまった。

「――調べていく中で、三人がそれぞれ違う主張をしています。当時、ニックはただ道で拾った金貨を低級魔物に飲み込ませた。それを3人で討伐。なぜそんなことをしたのか。アシュリーの気を引きたかった。サマンサはニックが好きで嫉妬した。アシュリーを騙し、森へと連れて行った。ロジャーは一連の事件を目撃していた。しかし信じてもらえなかった」

 ヘリオスが聞いたのはニックだけの視点。過去、酷いショック状態から聞き取りの行われなかったサマンサから聞き出したのだとか。サマンサは罪に耐えきれず告白した。アシュリーを森に置き去りにしたことを。ニックはきっかけで、アシュリーを殺したのは魔物だがサマンサが殺意をもって置き去りにしたということだ。『ゴールド・コイン』は安く買いはたいただけで今回の事件は関係ない。


「ニックにロジャーが狙っていると伝えました。そして....」


 ドンッという大きな地響きが建物を小刻みに揺らす。手から葉巻がこぼれ落ち、吸い殻が広がる。ヘリオスは自身の目を指差すと言った。

「ニックから金貨の光が漏れ出ていました。それも随分と大きな。俺だけでは対処しきれません。助けを求めここへときました」

 俺はテーブルを大きく叩きつけると言った。

「「なぜ、それを早く言わない!!」」

「あなたは滅多なことでは動かない。だそうですね、元レーベラン騎士。ギレモア・ギーヴ様」

「ヘリオス、お前のこと覚えたぞ。この事件の後でじっくりと話を聞かせて貰おうじゃないか」

「はい、ぜひ」

 いけしゃあしゃあと笑顔を浮かべる青年は見た目とは違い難癖もある人物なのかも知れない。だが、気になって仕方ない。大剣を背中に背負うと、青年を急かし、現場に駆け付ける。道中、小型の魔物の群れが行く手を阻んできた。あらゆる方向から集まってきているようだ。なぎ倒しながら横を盗み見る。洗練された剣裁き。ふと、懐かしい姿が思い浮かぶ。


――誰だったか....よく似た男....


 森の開けた場所で土煙があがっている。視界を覆い、中心で何が起こっているのか判断できない。その中に、青年は迷いなく突っ込んでいく。ギレモアは大剣を振り回し、土埃を振り払う。晴れた視界には、金貨を掲げるロジャーの姿。金貨に手を伸ばすニック。サマンサは地面にへたり込んでいる、そして、ヘリオスは仮面の少女を抱えていた。


「「なぜ、なぜおまえがこれを持っている!!」」


ロジャーがニックに問い詰めている。あいつのものじゃないんだろうか? ヘリオスはなぜか残念そうな顔を浮かべていた。


「ニック、この状況は何かな?」


「ギ、ギルモア副ギルド長!!」

「副ギルド長のボスー! ニックは嘘をついているよ、この金貨はねぇ。魔物がいっぱい引き寄せられたのはね、ニックの持っていた金貨だよー バレバレだよー!」

 ニックの後ろから飛び出してきた女の子は、ニックの横腹に足蹴りをする。ジャラジャラと金貨の擦れ合う音。再び蹴りをいれると、麻袋が落ち中から金貨が落ちてきた。


「っな....これは、一体どういうことだ?」


ヘリオスに抱き上げられた少女がなぜか挙動不審だ。髪が引っ張り落ち着かせられている。


「っぐ、ガキが....」

忌々しそうに、小さな女の子を睨むニック。女の子は、金貨の入った袋を回収すると逃げ出した。ニックが腹を抑えながら追いかけようとする。ロジャーがニックに飛び掛かる。サマンサが止めに入り現場は混沌とする。さらに、魔物が次々と草むらから飛び出し、2人の喧嘩を止める暇もない。


――雑魚なのは幸いだが、さっさと金貨を処理しちまわねえと


後ろから激しい殴り合いの音が聞こえる。雑魚だが、数が多い。金貨を処理するのが先だと辺りを見渡すが女の子の姿は見えない。


「副ギルド長、金貨の処理は終わりました。3人の回収をお願いします」


最後の狼魔物を切り捨て、隣をみるとヘリオスが立っていた。確かに魔物の気配はもうない。女の子が街の結界内に持って行ったのだろう。ヘリオスの服に返り血らしきものがついている。ちゃんと戦っていたのかと感心していると。指をさした。殴り合うロジャーとニック。


3人を縄で縛り付けると、とりあえずギルドに連行することにした。サマンサには殺人容疑。ロジャーは殺害未遂。ニックは規律違反。一体、どんな話が飛び出てくのるのやら。


「ヘリオス、俺はギルドに帰る。後でまた俺の部屋に来い」


  ******


「ふ、ふふふ。冒険者? アシュリーが死んだのに?? 冒険者になりたがっていたのはアシュリーだ。そのアシュリーはコインハンターに殺された!! そんな俺には冒険者になるしかない。これだけあれば、これだけあればアシュリーは戻ってくる。男は俺に約束した! ハリの街で、金貨を集めれば依頼を、願いをかなえると!!」

鼻血を滴らせながら、目が完全にいかれているニックがロジャーに叫ぶ。3人に飛び掛かろうとしていた魔物を剣で刺し、投げ飛ばす。

――ハリの街に押しかけた一人だったのか

俺は、魔物と戦いながら、3人の様子を窺う。

「やめて!! やめてよニック、全部、私のせいよー!! アシュリーを森に行かせたのは私なのッ」

「クソ野郎ー、がぁぁ! 貴様が偽らなきゃ、こんなことは起こらなかった! この人殺しども!」


 

「あはは、ゲットしてきたよ! はいはい、ちゃちゃっと浄化しちゃおう!」

ポティが茂みから顔を出す、驚いて剣を構えてしまった。セレスティアの手を取るとポティの前へ向かう。広げられた小袋いっぱいに入った金貨。両手を出したティアの手にポティは袋を逆さまにひっくり返す。手に触れる直前で金貨がボロボロに崩れ、砂状に変わり指の隙間を落ちていく。俺はしゃがみ白や黒とにかく色んなものが混じった何かを掬い上げる。さらさらと指の間から落ちていった。ティアの手の中に最後の金貨が落ち、溶けることなく残っていた。

「これは、どういうことだ」

「帝国が金で作っていたのは初期の頃だけなんだ。それ以外は、魔物の骨やら、鉄くずに色んなものを固めたもの。クレーテの魔力で形を保っていたということだな」

ビルードが俺の肩に手をのせた。差し出された手を取り、立ち上がる。

「見せかけだったのか....」

「そういうことだ。俺たちは幻想を見ていたんだ」

「メルネスと竜を召喚した金貨は消えてないから初期のものだったのか....」

「「俺の! 俺の金貨!!」」

ニックの叫び声が聞こえる。

「あんなに持ち歩いていたのに、なんで憑りつかれなかったか謎だな」

「それが、わかんないね。普通のなんの変哲もない袋だし....」

「アシュリーの死因はゴールド・コインの仕業じゃなかった。さすがに人を殺すまでは奴らもしないが近いことは平気でやる。死んだほうがマシな事を平気でな」

ビルードはため息をつく。ポティが、草むらか出たり入ったりを繰り返し遊んでいる。

「いやぁ~。ほんと、恐ろしいよ! 帝都は他のコインハンターがいたから大人しかったみたい! だからボクは初めて知ったよ?」

ギルモアのことをふと思い出し、辺りを見渡して見つける。丁度、最後の一匹を片付けたところだった。三人の回収を任せ、金貨のことは何も追及されずにすみ、ホッとする。


******


図書館に着くなり、館長は俺に詰め寄ってきた。なんと話を聞くつもりで仕事をほとんど終わらせたのだとか。モップで書棚の上をなぞりながら、広いどこかにいる館長の大きな声が聞こえてくる。

「そういう揉め事は冒険者に多い。君のところも男女半々だと言っていただろうー?」

「それでやたらあの本を押していたのですか館長ー」

「はは。似たような事件も載っているっ!」

「今回の件で思い知らされたので読んでみます」

「それがいいよ。彼らはどうなったんだい?」

顔をひょっこりとのぞかせた館長に一瞬ビビる。人の気配も感じ取れないで人を守れると思うのか?というリッテン騎士のビルの言葉が聞こえてくる。

「ロジャーは釈放されました。金貨で襲おうとしたのは未遂ですし....ニックとサマンサは結局牢の中で狂ってしまったようです」

「なんとも後味の悪い事件だね。ここへきて早々。この国を嫌いにならないでくれよ」

「それくらいでなりませんよ。幸いなのが、彼らが狂人にならなかったことです」

「そうだね。大量抱えていたくせに、魔物も来ないし、3人とも無事」

「ニック達は『出戻り』の一人だったようです。サマンサと町で働いていたそうで、ニックはハリの悪夢にもいたのだとか」

「それで大量の金貨を持っていたわけか。わざわざ、冒険者に戻った理由はなんなのかね?」

「さあ、見当もつきませんね。金貨は欲しいけど、ゴールド・コインのせいで死んだと思い込んでいたわけですから。最期までアシュリーの名を呟いていたそうです」

「死してなお、時を経ても2人の男に愛されるアシュリー。さぞ素敵な女性だったのだろうね」

「そうですね。愛していた、異常なほどに......金貨に憑りつかれない人ってまさか....」

「どうしたんだい?」

「金貨に憑りつかれない人は一般的に『耐性』があると言われています。その共通点は未だわかっていない。逆に憑りつかれやすい人は欲深い人間。それで」

2人の共通点はひとつ。兄弟でも、性格も正反対だが。アシュリーを愛していた。

「なにがだい?」

「強い愛。金貨の付け入る隙間のないほどの......」

館長は唸りながら、人差し指でこめかみを突っついている。

「ガデス・クレーテは愛に飢えていたという....金貨はクレーテの怨念。可能性はなくはない。私も事件を洗ってみよう。ヘリオス」

「ありがとうございます!」

「なあに、暇だから構わないよ。君が金貨について解明するんだろ?」

「そのつもりです」

「金貨の冒険者。その道は険しいだろうが応援しておるよ。ついでにギルモアにちょーと目をつぶるよう言っておいてやる」

「ははは、そこまでされなくても」

「私がやりたいのだから気にするな。さてさて、早速だかこれだ」

 手渡された新聞を広げる。一面にでかでかと記されたのは『金庫荒しが全世界で多発!』という文字。建物の壁にうつる影、犯人は捉えられていない。謎の事件。

「怖いですね」

「狙ってやっているのかは知らないが、ゴールド・コインの金貨専用庫がやられたらしい。今までの金庫も1枚以上入っていたそうだよ。冒険者も無視できないと私は思うがね」

気になることが多すぎて時々、わけがわからなくなる。そういう時の仲間の存在はとてもありがたかった。そして最後の、見習い期間の終わりを告げる言葉。

「さて、今日はもうおしまいにしよう。お疲れ様。新人冒険者」

「まだ、気が早いですよ」

 笑い声をあげる館長。照明のおちた図書館をオイルランプ1つで進んでいく。今日は珍しくランプなどいらないくらい月の光が降り注いでいた。


  ******


 強面が目の前にある。両肩は掴まれびくともしない。ソファの前までそのままで移動させられると無理やり座らせられた。後ろから恐々と付いてくるメンバー。ビルードの目くばせに頷く。一歩前にでたビルードがぺこりと挨拶する。

「はじめまして、ギルド長。このパーティーのリーダー、ルーです」

「ようこそ、わざわざすまなかったね。直接君たちとは話をしたくてね」

 滅多に顔を出さないことで有名なギルド長に呼び出され、ギルドの2階にやってきていた。ギルド長は未だ現役で凶悪な魔物を中心に依頼を受けているらしい。ギルモアは何か言いたげな顔で俺を睨み続けている。

「バッシュだ。よろしく。それで話だが、君たちというよりヘリオスっていったかな? 元々はガデス・ハントにいたんだって? 金貨の専門家だって連絡が彼らからきてね」

「ギルト長!! こいつがそんなすごい奴だったんですか」

「ギルモアくん、落ち着きなよ。英雄殿に憧れるのはわかるけどさ。それで、君たちには特別に許可しようと思ってね。金貨がらみの依頼も優先的に回す」

「本当ですか!?」

「まだ、決定したわけじゃないよ。ランク昇級の規定はそのままだ。そうだな、それなりに認められる『B』になれたらというのはどうかな」

「『C』では駄目でしょうか? 『B』以上のランクは急に条件が厳しくなり時間がかかりすぎます。そんな悠長なことを言っていられませんので」

「そのとおり、日々あちこちで事件が起きている。それではこうしよう。『C』ランクにはなってもらう。とあるテストをクリアしたら『B』いやそれ以上の依頼も特別に回そう」

「ありがたいですが、そう特別に対応してくださる理由をお伺いしても?」

「....金貨には随分と恨みがある。はやく解決したいだけだよ」

 見習いタグから『F』ランクへと変わった。ひよこのような黄色いタグに名札を入れ替える。これは冒険者としての身分証になる。今日も賑わう冒険者ギルド。人の間を縫い、掲示板の前に立ったビルード。真剣な顔つきで選ぼうとした依頼。伸ばしていた手を俺ははたいた。


 *薬草の採取!! 魔物の傷薬やポーションにも使われ......


「ビルード。それじゃないことは確かだ」

「ヘリオス、母上みたいに怒った時もビルードと呼ぶね?」

「どうでもいいので、真面目に選んでください」

「あはは、ヘリオス怒らせたー! 敬語のヘリオスはめちゃくちゃ怒っている証拠! ビルードが怒らせたと」

「ヘリオスを除いてうるさい。これでいいわ」

 べりっと雑にはがした依頼書をセレスティアから受け取る。

「『ランクA 砂漠地帯にて大規模な魔物掃討作戦。いまだ、首魁を打ち取れずにいる。金眼の魔物が多数。負傷者多数により、無条件の参加』」

 ヘリオスはそっと掲示板に戻す。すぐ隣にあった、狼の討伐依頼をビルードに渡した。

「無条件って書いてあるけどランクA指定だよね?」

「ギルド的には無駄死にさせたくないからな。所属先関係なしに募集するって意味でもある。ソロだろうが魔物狩りだろうが冒険者だろうがコレクターでもな」

「こういうところの金貨は誰のものなんだ?」

「一応、手に入れたもの勝ち」

「うわ、金貨目的じゃ荒れそう」

「その通り、だから普通は無条件に募集しないんだ。金貨御法度の冒険者だけとかここの魔物狩りだけとか。それをしないってことはよっぽど人がいないんだろうな。見ると、3か所でほぼ同時に起きている」

ビルードが他の高ランクの依頼を指差した。確かにどれも大規模発生の魔物討伐とある。

「団長だけじゃ対処できないのか」

「いくら英雄でもな。そのうち父上も出兵することになりそうだよ」

「エレント大公様....」

「強者に与えられた義務だな。さて、俺たちも父上どもと同じ舞台に立てるよう頑張るぞ」

 めずらしく張り切るビルード。ふと下をみると傍にぴったりくっついたセレスティア。その場にしゃがみフードの上から頭を撫でる。ついこの間まで、のんびり夕日を浴びながらおしゃべりをしていた。遠い日のように感じる。

「昨日の、金貨に触れて不調はなかった?」

「うん、なんともないよ。ヘリオスこそ平気? 毎晩、仕事していた」

「大丈夫。ティアも、みんなもいるから」

「....む、ヘリオス。抱っこ」

「っえ? 今??」

 急に機嫌の悪くなってしまったセレスティア。抱き上げて、そのままギルド内を移動する。あきれ顔のビルードに目を輝かせるポティを見なかったことにして外へと出た。心地よい風が吹き付ける。フードが外れ金色の髪がなびく。自分を見つめているであろう仮面に手を伸ばす。髪だけでも見惚れてしまうのに仮面の下を見てしまえばどうなるのだろうか? 直前で、手を握りしめる。行き場の失った手でフードをかぶせた。


 ドキドキと高鳴る心臓を落ち着け、街の外へと向かう。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ