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27、一国の最後


三人だけで、やり遂げたホール掃除。大の字で眠っていたらいつの間にか、会場は青い火が灯っていた。明かりに浮かび上がる、貴族のような姿。


「団長? これは一体どういう状況ですか?」


「ついさっき、始まりを知らせる鐘がなっていた。女王が開始を宣言して特別なお客様とやらを迎えに行った」


「そうだったのですか、金貨は持っていました?」

「ああ、首にぶら下げていた」

「どうにか、ゲットできませんかね?」

「どうだかな、今日のパーティーは交渉のチャンスではあるが」

『ブルートさーん、ビルさーん!! お飲み物持ってきましたー!!見てください、念力とやらが使えるようになったんですよ』

騎士幽霊の周りにグラスが2つ浮いている。思わず、受け取ってしまったが飲む気がしない。とりあえず、フリだけでもとグラスに口をつける。その時、鼻先をかすめたのは芳醇な....

「これはッ!!まさか、あの幻の酒」

一度だけ、口にしたことある。ドワーフの子孫が造り続けている酒。

「はわぁぁ....もう、死んでもいいかも......」

『あはは、ダメですよ~ビルさん。死ぬ気はなかったのに死んじゃった人がいっぱいいるんですから』

「そ、そうですね、軽率でした」

『いえいえ、それだけ喜んで頂けたということですよね。実はお客様がお酒を飲めないらしくて、無駄にしたくないからと私が貰ってきたのです!!』

「ナイスだ!!頑張った甲斐があったッ」

ちびちびと味わっていると、急に会場が明るくなった。その瞬間目の前には会場を埋め尽くすゴーストたち。同じ方向を見つめている。

「こんなに、いたのか....」

リーンという音が鳴り響き、視線の方向をみつめる。空間が歪み、豪華なドレスに身を包んだ女王らしき人物が現れた。胸元の金貨以外は色がなく、幽霊であることがわかる。女王は体を斜めに傾けると一歩下がった。彼女の後ろから現れたのは、金髪の少女。

「――うん? 金髪?? 生きている人間?」

ガタッと物音がして、横に目を向ければひどく動揺している団長の姿があった。

「団長――?」

少女の後ろにはまだ人がいたようだ。赤髪の青年と、暗い金髪の青年。それぞれモノクロの衣装を着ているが、肌や髪色から幽霊ではない。

「どうして、この城に人間が?」

『『皆のもの、最後のパーティーである!!大いに楽しめ!』』

ささやきのような歓声が聞こえる。どこか壁を挟んだような歓声。音楽が流れ始め、さっと中央が割れる。赤髪の青年が女王にエスコートし、中央に進んでいく。優雅でゆったりしたどこか物悲しい音楽。しっとりとした曲調に胸が締め付けられる。

「な、なんで。こんな泣けてくるんだ....葬式じゃあるまいし」

『あはは、よっているなビル? でも葬式といっても過言ではないかなー女王様楽しそうだよ。実はな、姫様がある人と婚約する予定だったんだ』

曲も途中だというのに、女王は元の位置に戻る。そうして、中央には女王によく似たお姫様が立っていた。赤髪の青年はひざまずき、手を差し出す。手を取ると2人は新たな曲に合わせて踊り始めた。

「優雅だよなぁあの人、王子様かなんかかな」

『ウッウッウ、姫様がッ姫様が喜んでおられる....』

女王に背中を押され、2人の人間も仲睦まじく手をつなぎながら向かう。くるくると楽しそうに踊る2人。拙いがとにかく、楽しげだった。女王は頬に手をあてほほえましく見守っているようだ。

(そういえば、団長。椅子から立ち上がったきり、固まっているけど)

「団長、どうしたんですか?」

「......ビル。あの三人は人間か? 幽霊じゃないよな??」

「え? なにを当たり前の事を。透けてないし、色もあるので人間ですよ」

椅子に再び腰掛けると頭を抱えてしまった。

「団長!?」

よく見れば、顔面蒼白である。こんな姿みたことない。

「いったい、どうしたんですか!」

重々しい口調で衝撃の事実をビルは聞くことになった。


「私の娘だ――。それにエレント公国の公子と保護した協会員だ」


『ありがとう、我らの願いを叶えてくれて。もう、思い残す事はない。金貨は君たちに贈呈し、城も使ってくれると嬉しい。本当にありがとう....』


女王の言葉を最後に、幽霊など存在していなかったかのように、月明かりが会場を照らしていた。まるで狐につままれたような気分。キラリと輝いた虹色の光に、自身の手にあるグラスが現実であったことを照明していた。


「アイザック......」


さっきまで、となりにいた異国の騎士を思い出し、涙が一筋流れ落ちた。




******



幽霊の城で出会う数日前の出来事....


頭上で言い争う声が聞こえる。随分と騒がしい。そしていつものやわらかなベットではない。

――あれ、俺。どうしたんだっけ?

「だから、そんなことは俺の専門外だよ。絵のこと以外は一切知らない」

「私のことは知っているくせに!!」

「それは、たまたま聞いたんだよ」

――あれ....?

いきなり飛び起きて咳き込んだ。

「ゲホ、あれ? 2人とも....?」

普通、このパターンは病室の上だと思っていたのだが....

「おお、やっと目覚めたかヘリオス。お嬢様が先ほどからご機嫌斜めなんだよ。なだめてくれ」

「どうしたの?」

「ヘリオス! ジョーンがここに来れないのっ。きっとこの部屋他と繋がっていないわ」

訳が分からない。外に出られないということ何だろうが

「つまり、あの窓も全部、偽物って事。異空間に閉じ込められた」

イクウカン? 偽物? じゃあ、金貨もドラゴンもケゲンも?

「それは本物だな。顔に全部でてるぞ」

「じゃあ、どうするんだよ」

「無理やり破る。ただどこに放り出されるか全く見当もつかない」

「でもそれしか方法がないんじゃ、しょうがないよね?」

「その通り、ヘリオスの意見待ちだったわけだ」


2人の手をとり起き上がる。えぐれていた皮膚は多少マシな見た目にホッとした。


「いいもんじゃないから全快しないけどマシだろ。出血も酷かったから、あまり無理に動くなよ」


ひしっとくっついて離れる様子のない少女。目が潤み、今にも涙が零れ落ちそうだ。そっと涙を拭うように撫でる。ますます腕にしがみつき、じくじくと痛みを思い出す。しかし、目を潤ませる少女の姿を見てしまえば離してほしいとは言えない。なぜだ。


「それで....? どうすれば??」

「はは、なんか変わったねぇ。ヘリオス。どっか一歩引き気味のお前よりそっちの方が断然いいよ。」

(そう、だろうか――。でも、これだけはわかる。見ているだけでは何もしないのと同じ。絶対に後悔のないように俺は....)

「どの、ヘリオスでもいいもん」

「あはは....」

「さて、ではでは。選んで欲しいね。一つは、俺たちが入ってきた黒い扉。もう一つが玉座の後ろ、お嬢様はヘリオスなら見えるって言っているけど?」

「うん、ヘリオスの血の能力。見通す力....お母さまの血族の力」

「ヘリオスの年なら儀式受けてないはずなんだけどな?まあ、いいや扉を見てくれ」

そう言われて、両方の扉を確認する。黒い扉は真ん中、紋章のような所に光が集まっている、それを指で触れれば指先が貫通した。もう片方の宝石が埋まった扉は全体が青い光で満ちていた。試しに腕を伸ばしてみれば風を感じる。

「こっちは外に繋がるみたいだ。向こうより入口も大きい」

「罠の可能性も無きにしも非ず、だな。どうする? どこに飛び出すかわからないが賭けるか、元に戻るのか」

「先に進みたい。向こうはさらにその先が出られるかわからない」

「確かにそうだ。あの廊下も異空間の可能性ある。それに会場に戻れたとしても燃え盛っている真っ只中に飛ばされてもね」

少女はぶんぶんと頷いている。誰かが言うまでもなく手を取ると、扉に向かって一気に飛び込んだ。


そうして、降り立った地は荒れ果てた女王の寝所だった。


ベットのカーテンが風もなく揺らめく。黒い人影が起き上がり出てきたのは透けてはいるが美しい人物であった。胸元がはだけた寝間着に露になった太もも、豊満な胸に乗っかる金貨。呆けていると頬を思いっきりつねられた。


「いたぃッ!?」

「――フン」


『その様子だと、狼藉ではないようだな?貴様ら、何者だ』


「もしや、メルネスの女王陛下ではありませんか? 私はエレント公国、大公の息子ビルードと申します。異空間に閉じ込められ、ここに飛ばされました」


『その、赤髪。見覚えがあると思えば帝国の血か。その者たちは』


「親友にございます」


『ふむ、女王の寝室に立ち入るなど、われの願いをかなえれば赦してやろう』


次話、主人公たちに戻ります....

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