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20、とある人物の企み

*後半、過去編です....



「さぁて、今日は座学だぞー。金貨が魔物を呼び寄せるっていうのは聞いたと思うが実は金貨によって呼び寄せられる魔物が異なるんだ。」



イアンの簡単講座!!

*金貨は帝国歴686年~698年の12年間つくられました。

*金貨は年数によってクレーテの想い(怨念)の深さが増していきます

*新しいものほど魔物を呼び寄せます!

*必ずしも年数だけでは決まりません。

*無念の狂人の血や魔物の血を浴びるとさらに凶悪化します!

*魔物は金貨を飲み込んでしまいます、目が金色になって凶悪化します。

*強い魔物の血ほど力もあがります。(飲み込んでいない周辺の魔物もパワーアップ!!)

*凶悪度を視れるアイテムがあります。

*凶悪度が高い金貨は魔物の巣を生み出しあたり一帯を魔物で埋まります。

*最近、金貨で魔物を召喚するという噂もあります!!


「以上!!」



「お、恐ろしい....」


 実物だという、金貨をむき出しでしかも素手でつまんでいるイアン。怖いもの知らずなのかしれないが怖くてしょうがなかった。でも、思い返せば会長も素手で持っている。こんなところで取り出していていいのか疑問でしょうがない。


(イアンさん、なんともない!? あの虹色の光をみると気持ち悪くて吐き気がする)


ケゲンに触ってみるか提案しているイアン。


「えーということで。この特殊なケースに入れとけば結界外だとしても魔物が寄ってきません! 狂人化も防げます。街で取り出しても平気な理由は結界の中だからだな。しかし、もしなんらかの原因で結界が解かれていたら今この瞬間魔物の群れが街に埋め尽くすほどやってくるでしょう」


虫眼鏡を手渡され、覗き込む。金貨の周りにうねうねと動く黒い影がある。うねうねはイアンの手や腕にのぼろうと動いている。


「今、見てもらったのは、初期のころのものだ。魔物までは魅了しない金貨。しかし、人に対して異常に執着がある。そしてもう一枚」


虫眼鏡を通さなくてもわかった。危険なものだと。レンズ越しの金貨はどこにあるのかわからないくらいあたりを黒い霧で包んでいた。


「これが、街一個分など簡単に滅び、魔物の巣が出現する可能性の極めて高い。災厄の金貨と分類されるものだ。このレベルは今、団長じゃなくて会長が派兵されている大規模魔物掃討だね。運よく周辺に町や村がないのが幸いだよ。ということで座学も時々挟むからよろしく。では、今日は終わり、解散!!」


終わるなり、さっさと教室を出て行ったケゲン。イアンがいることで気まずさは多少軽減されているがなんだか寂しい。


「まーた。娼館かな?? 若いっていいねぇ」

「あのショウカンってなんですか?」

「大人のお店さ。まあ、君の場合....お嬢様に殺されたくなかったら知る必要のない場所だね。教えた私が殺されそうで恐ろしい。」


「よくわからないですけど、わかりました」


「今日はなにもやることがなくて暇そうだね?」


「そう、ですね。お嬢様に会うのをルーキスさんがあまりいい顔しないので」

「ふーん。君はお嬢様のことをどう思う?」

「かわいいですよね!」


「へぇ、さらに若くていいねぇ。私には無縁の感情だ。さて、じゃあ。今日は私に付き合ってもらおうかな? 実はね、ゴドーが寂しがっているんだよ?」


「そういえば、あれから全然お会いしていないです!」


「よし、決まり。地下に集合だ」


イアンは剣を取り出すと自分に突きつけてきた。この人は剣に触らないといけない癖があるのか話の終わりには必ずといいほど登場する。もうだいぶ経つが慣れる気配はない。





「それで? なんで、ここで剣振り回しているんだ。しかも剣舞ってヘリオスを何に仕上げるつもりだよ。イアン」


「ふふ、剣だけでは生きていけない」


「大道芸か?」

「舞踊は体幹を鍛えるのにいいと思ったのだが」

「戦場でいっつも踊っていたのって理由があったのか!?」

「戦場のあれは、団長のお心を楽しませるものであって」


「あーわかったわかった! それで、開店前に連れてきて何の用だ」


「定時報告さ。ミケはグレー。教団員であることは確かだ。真意はわからない。ケゲンはすっかりふさぎこんでいる。まあ、今は自分の出生というより兄と思っていた人物への不信感と言ったほうがいいか」

「不信感?」

「そりゃ、本当の兄弟でもないのに溺愛する兄、アーノルド君が不思議で不思議でしょうがないんだろう。」

「アーノルドのせいか」

「彼の普段の振舞いのせいだよね~。他人に対して興味を示さないアーノルド君が人が変わったようにベタベタするんだもん」


「そこで、なにかいい方法ないかなぁと思って。孤児院に行くことにしたんだよ!」


「血のつながりがなくても人を愛せるんだってか?」

「そうそう、無償の愛。すごく慈愛に溢れ、美しい院長がいるらしいんだ」

「お前のことだから院長見たさに行くわけではないだろうが、何か企んでいないよな? ケゲンがちゃんと誰だかわかって行動しているよな?」

「もちろん、毎日可愛がっているさ」

「その割には、そこのヘリオス、ボロッボロだけどな」

「彼は、まじめだね。すこし追い詰められている感じがあって優秀だ」

「そりゃ、そうだろうさ。幼馴染の命がかかっているんだから」

「おや、ゴドーには話したのかい? ケゲンは知らないっぽいのに」

「俺の人徳の成せるわざだな」

「照れながら言うな。私が恥ずかしい。もうちょっと自信をもって言ったらどうだい?さて、ということで孤児院について情報はないのか? ついでに伯爵も」


そんなこと一ミリも思っていないだろうと非難めいた視線を視線をおくる。


「どっちもろくにないさ、お前さんの言っている孤児院ってのは南地区のものだろ? 貴族たちの支援して成り立っている孤児院。最近、代表が変わったとか?」

「へぇ、どこの誰ですかね?」


「とにかく、気をつけろよ」


「孤児院が?」

「最近はどこも安全じゃねえ。」

「わかっているさ。でも今のアイツらには荒療治が必要でしょう??」

「おい、イアン。やっぱ、なにかあるんじゃないのか? その孤児院。お前さんのいう荒療治とやらは危機を乗り越えてってやつじゃないのか??」

「まさか、心配ならゴドーも来ます?」


口を固く閉ざし、凄まじい形相でヘリオスをみる。猛将のオーラに気付いたヘリオスはおどおどとしながらこちらへやってくる。本人にその気はないが、叱責を恐れる部下と上司の姿である。


「あの、ゴドーさん。どうされましたか?」


「――うん?ヘリオスこそどうしたんだ?」


「あ、いえ。名前が聞こえたので。俺になにか至らぬことがあったのかなって・・・」


「いや。特にないぞ」

「??(凄まじい圧を感じたんだけどな?)」


「孤児院に行くことにしたよ! 社会奉仕の一環だ。ゴドーも行こうか迷っているんだよ」


「それは、突然ですね」

「才能のある若者を引き入れないと! ミケに言われているだろう??」

「それは、そうですけど。いくらなんでも若すぎではないですか?」

「いまから、良いイメージを与えとくのさ。私たちの所に来たい!って思うような」

(イアンの奴、まあぺらぺらと理由が思いつくもんだな)

勢いに負けたのか頷くヘリオス。こいつに任せればろくなことにならないと改めて思ったゴドーであった。


******


風が吹かない土地柄故にすえた臭いが野営地の立ち込めていた。その中でも強烈な異臭を放つ幌馬車があった。汚物や腐ったものとにかくこの世の臭いものを詰め合わせた臭いに騎士たちのみならず、馬にも影響を与えていた。戦闘前だというのに疲弊している、その悲惨な状況にゴドーは団長の元へと進言しに出向いたのだった。


「失礼します。団長。ゴドーです。例の魔物除けですが、人や馬に影響が出ていまして....」


作戦本部のテントをくぐると、3人の隊長格と補佐官が出迎えた。


「ああ、ゴドー。君を呼ぼうとしていたところだよ」

若くして団長の右腕までに上り詰めた男イアンが強烈な臭いを放ちながらゴドーの肩に手をのせた。


「ゴホッ、いったいなんだ!! その臭いは!?」


団長が目の前にいたのも忘れてブチぎれる。今まさに頭を悩ませていた臭いがやってきて嫌がらせのようなタイミングに堪忍袋の緒が切れた。目をまん丸に開き、驚くイアンの珍しい表情に頭が一気に冷える。


「ああ、ゴホン。失礼しました。」

「卿は潔癖症なのか? まあ、私も今のイアン卿には触れられたくないが」

「そんなこと言わないでくださいよ、補佐官殿。皆さんの為に体を張っているんですから」

「その通りだな。ゴドーの懸念はもうしばらくで解消するから問題ない」


団長が資料の隙間から顔をのぞかせると

「ゴドー、効果のほうはどうだ?」

「鼻がないやつには聞きませんが、戦闘をかなり抑えられています」

「運搬に問題は??」

「やはり、牛たちに引かせているので移動にかなり時間がかかります。馬は嫌がって使い物になりません」

「そうか。結界を用いる以外の方法があればと思ったのだが」


今回の遠征は実験も兼ねていた。道中、魔物との戦闘なしに移動する方法についてだ。結界はその場所に固定しないといけないため他の方法を模索中だった。魔法使いは希少な存在。魔物除けの香や煙も完全に回避は出来なかった。


「金貨を飲み込んだやつらはどうだ??」

「そうそう遭遇してはたまりませんよ、接敵しておりませんので....うん?」

――カーン、カーン、カーンッ

「丁度ですね。団長。イアン行ってきてもいいですか?」

「頼んだ。方向的にはゴドーの部隊が近いか? 間に合わなければ追加で連絡をおくるように」

「っは、失礼します」



一歩遅れてたどり着いた場所ではイアンが魔物と対峙していた。


イアンが一歩進むたびにじりじりと引き下がろうとする魔物。

数は大型が3体。うち1体が強化版。


イアンが剣を抜き敵意をあらわした瞬間、突っ込んでくる金目の魔物。


ほか、2体は未だ動く気配はない。


直前までくると一瞬ひるむ魔物、その隙に鋭い太刀筋で一般的な木ほどの太さの足を両断する。雄たけびを上げ、倒れこむ魔物は大口を開けイアンを飲み込もうとする。


すぐに後方に下がり土埃が上がる中、目に突き刺し、続けて飛び上がると脳天を突き刺した。


魔物の絶命を確認すると分厚い腹を切り付ける。飲み込んだ金貨を探しているのだろう。


部下をいくらかおくると、後ずさる魔物に向けて一斉に弓矢を放つ。


ほとんど分厚い皮膚にはじかれダメージは与えられていないが今までの態度が一変、猛烈な勢いで突っ込んでくる。地響きがなり、大剣を構える。引き続き矢を放つがほとんど突き刺さりもしない。


「強化版をいとも容易くやっちまうなんてな。後輩ながら恐ろしい奴だ」


「私のこと呼びました?」


血まみれのイアンがいつの間にか横に立っていた。

「人を送ってくれましたので、金貨は任せてきました。こうして臭い私がきても引き下がらないということは気を引いてしまわなければ効果があるってことですね」


「ああ、そういうことだな。イアンが体を張ってくれたおかげだ」

「実をいうと、そこまで思っていないんですよ。まだトロールの便所よりはいくらかましですから」

「....お前さん、普段なにやっているんだ?」

「なにって? 団長の右腕として情報収集ですよ」


敵の前だというのに不思議な後輩に気取られてしまった。もちろん、先輩として無様な姿を見せぬよう大剣を大きく振りかぶった。




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