婚約者からの求婚を断り続けてしまいました。そうしたら、溺愛されています。
2日で書き上げたので、基本会話になってしまいました…。
舞踏会にて。
「愛する我が婚約者メルヴィーネ嬢、私の求婚を受け入れていただけるだろうか?」
「え、嫌です。」
王宮の庭園にて。
「メルヴィーネ嬢、私と結婚してくれるかい?」
「ごめんなさい。」
学園のサロンにて。
「メル。どうか、俺と結婚してくれないだろうか。」
「無理です。」
「どうしてだ!?婚姻式の準備も終わって、あとはメルの意思だけなのに!」
執務室の中で、ヴェラルドは頭を抱えていた。目の前には書類が散らかっている。
「殿下が嫌われてるんじゃないですか?」
「ロマンチックさが足りないのか?舞踏会では指輪を持ったし、庭園では薔薇の花束を持ったし、サロンでは手を握ったのに!」
キーーーと唸り声をあげるウェラルド。
「貴族女性が憧れる求婚シーントップ3ですよねぇ。やっぱり、嫌われてるんじゃないですか?」
「二人きりのほうがいいのかと、庭園では人払いもしたが、人前のほうが良かったとか?」
「彼女、そういうの気にしなそうですけどね。やっぱり、嫌われてるんですって。」
「くそっ、母上に相談を…いや、ダメだな。なら、父上か…?」
「おーい。聞こえてますか?」
「いや、もっとダメだな。参考にならない。」
「僕がメルヴィーネ嬢にプロポーズしてみようかな。」
瞬間、ヴェラルドの眼光がギンッと音を立てた。
「お前、明日から後ろに気をつけろよ。」
「あ、聞こえてたんですね。」
「常に命を狙われ、頭頂部がだんだん薄くなっていくぞ。」
「何それ恐い。まだ、18なのに。」
「そして、25には周りの人間から存在がまぶしいと言われるようになるぞ。」
「冗談ですって。僕にも可愛い婚約者がいますから。ミレーナは本当に可愛くて、この前だって」
他人ののろけなど聞く気もないヴェラルドは扉のほうへ向かう。
「今日は夜は外で食べてくる。」
「わかりました。自棄飲みですか。」
「違う。メルと屋外レストランで食事だ。」
「へー。今度は星空の下で求婚ですか。これまた、ロマンチック。背中が震えますね。寒そうで。」
「お、お前もたまには役に立つな。メルの様子を見とかないといけないな。」
「常に、ですけどね。あ、そうだ。僕が困るんで風邪ひかないでくださいね。振られても。」
「お前はなぜそういうことを言うんだ!?」
「だって、そういう傾向ですから。本日、王子はまた振られるでしょう。」
「よし!今日こそ、理由を聞きだすぞ。」
「あ、また無視された。そして、志が低い。」
星空の下で、ヴェラルドはメルヴィーネを見つめていた。ウェイターが気を利かせて去っていく。
「メル、私の伴侶となってくれないか?」
「申し訳ありません。」
そのまま、一礼して席を去ろうとしたメルヴィーネの手をヴェラルドは掴んだ。その瞳は逃がさないという強い意志を持っていた。
「なぜだ。俺のことが嫌いになったのか?」
メルヴィーネは目を見張った。
「まさか!私が殿下のことを嫌うだなんて…あり得ません。愛しています。」
不意打ちの告白に、ヴェラルドの顔が湯気を立てる。
「あ、ああ。俺も愛しているぞ。では、なぜ俺と結婚してくれないんだ。」
「別に殿下と結婚するのが嫌なんじゃありません。その、王家に嫁ぐのが嫌なんです。」
「やはり、重圧が重いからか?」
「いえ、そうではなくて…。王妃様がダイニングに掛けていらっしゃる絵があるじゃないですか?」
唐突な話にヴェラルドは、目を丸くしつつも頷いた。
「ああ。幻の画家、バゼーラが描いた、邪神が鼻にポテトを突っ込んでいる絵だろう?確か母上が爆笑してダイニングに飾って、父上が外そうとしても外させない…。」
「ええ。あれは……が……です。」
「ん?」
「あれは私が描いたんです!」
「は?」
「暇つぶしで描いてただけなのに、侍従が爆笑してオークションに出しちゃって…。」
「そ、それはつまり、バゼーラがメルだということか?」
「はい…。」
「閻魔が舌引っこ抜かれて涙目になっている絵とか、天使がお尻ペンペンされている絵とか描いた、あのバゼーラだというのか!?」
「はい…。私、自分の黒歴史を見ながら毎日食事なんて耐えられないんです…。」
「そうか…。」
神妙な考え込むような仕草をしたヴェラルドだったが、ハッと顔を上げると、メルヴィーネの手を引いて自分の膝の上に座らせた。
「つまり、その絵さえどうにかすれば、俺と結婚してくれるんだな?」
普段より凛々しい顔のヴェラルドに、メルヴィーネは戸惑いつつも頷いた。
「そうか!」
喜色満面で喜びを表すヴェラルド。気持ちの高まるままに、唇を重ね合わせる。
「愛している。メルヴィーネ。」
「…私もです。」
顔を真っ赤にするメルヴィーネに、一層笑みを深めたヴェラルドは、そのまま額に、頬に、瞼に、そしてもう一度唇に、とキスを落としていったのだった。
ーーー1ヶ月後。
「ふふ。まさか、殿下があんな絵を描くだなんて思いませんでした。」
「しょうがないだろう。母上にあの絵を外したいのなら、アレ以上に私を笑わせる絵を用意しろと言われたのだから。そんな絵が都合よくあるわけないだろう。」
「それでも、まさか国王陛下がポテトを鼻に突っ込んでる絵を描くだなんて。陛下のお顔が凄いことになっておられましたよ?」
「公式に見せることはないから良いと、母上からは許可を貰っている。もう義父上だろう?メル。」
急に甘くなったヴェラルドにメルヴィーネは、赤らみながらも姿勢を正した。
「末永くよろしくお願いします。ヴェラルド様。」
「こちらこそよろしく。メル。」
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