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第32話 悪意

更新遅くなりました‥‥!


「人質をとられたのです‥‥」


アンジェリーナは悔しそうに唇を噛んでいた。握りしめた拳はふるふると震え、怒りを堪えているようだった。


「3日後までに注文した通りのものを納品しないと、人質の命はないと‥‥」


「ブランシュの従業員のどなたかが連れて行かれたのですか?」


ティアナはそこにいる虚な目をした従業員たちを見ながらアンジェリーナに聞くと、アンジェリーナは首を振ってティアナの質問に答えた。


「従業員の子供が誘拐されてしまったのですわ‥‥!」


聞けば、誘拐されたのは母子家庭で育てられている10歳の女の子で、預けられる親戚もいないので、いつも家で一人で留守番をしていたそうだ。そういう事情もあり、時々ブランシュに訪れて従業員である母を待つ間に店の雑用を手伝ったりしていたので、ほとんどの従業員とは顔見知りになってしまったそうだ。


「明るくて、可愛くて、人懐っこくて‥‥皆自分の子のように可愛がっていたのですわ‥‥!」


「10歳の女の子が‥‥!心細い思いをしているに違いありません!すぐに皇太子殿下に相談するべきではありませんか?」


「もちろん、私もそうしようとしたのですが‥‥」


誘拐された女の子の母親から待ったがかかったらしい。その従業員はウィルバートに迷惑をかけたくないと話したという。

彼女たち母娘は、ウィルバートが私財から出資して建った寮に住んでおり、そこに住まうことができたおかげで母子二人でもなんとか生活できているので、ウィルバートには大変恩を感じているのだという。

彼に迷惑をかけずとも、希望通りの品を希望通りの日数で届ければいいだけなのだから、という結論に達したようだ。


「そうなのですか‥‥。でも、到底無理な要望なのではないのですか?だから皆さんこんなに‥‥」


その先をどう続けていいのかティアナは迷った。皆一心不乱に針を動かしている。食事や休憩や睡眠もろくにとっていないのだろうと思われる、不健康そうな顔色をした従業員たちがそこにはいた。


この人たちと、誘拐された女の子。皆を助けるにはどうしたらいいか‥‥。ティアナは最善の選択を考えた。


「では、こうしましょう。」


ティアナは考えをまとめるように話した。


「何かあったときの保険として皇太子殿下の側近のランドール様にお伝えしておきましょう。彼らの負担になるような伝え方をしなければ大丈夫です。ランドール様のことですから既に把握されているかもしれませんし。念のためお耳に入れておいて、万が一が起こらないようにサポートしていただきましょう。その上で、ドレスがアマンダ様の要求通りに仕上がるよう私もお手伝いします。私にどのようなお手伝いができるのかはわかりませんが‥‥」


「とんでもない!ティアナ様にしかできないことなのです!どうぞご教授くださいませ!!」


アンジェリーナは興奮して言い募りつつ、ティアナの提案については協力を申し出た。


「ランディには私から伝えますわ。今はティアナ様を迎えるためのお掃除に奔走していますので、捕まりにくいのです。私なら確実に伝えられるルートがありますので。」


ランドールは皇帝派を抑え、皇太子派を盛り立て、皇帝を廃し、ウィルバートを擁立するために文字通り彼の手足となって奔走しているのだろうと想像できた。

皇太子殿下の大事な時期に、婚約者のアマンダはなぜ皇太子派であるクラーク公爵家のアンジェリーナを困らせるようなことをしているのか、ティアナには理解できなかった。


だが、ティアナが今でも彼の婚約者であったとしても、何ができたかわからない。

同じ派閥の人たちを困らせることはしなかっただろうけれど、彼にとってプラスになることをすることができたかと問われれば口を噤まざるを得ない。


(ウィルは私を妃にと望んでくれたけれど、私にはその価値はない‥‥皇后の器ではないのだから。)


ティアナはそっと目を伏せ、自己評価を一層低く見積もった。


そんなティアナの様子に気付いたサミュエルは、そっとティアナに寄り添い、力を分け与えるかのようにティアナの背中に手を置いた。


ティアナはサミュエルに気遣ってもらったことに気付いて笑みを作ろうとしたが、失敗して苦笑になってしまった。


「さあ!ティアナ様のご協力も取り付けましたし、はりきってドレスをつくりますわよ!」

全ての方に感謝しております‥‥!

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