第14話 密談
第9話と同じ時間軸のお話です。
ティアナがメアリーと宮殿を抜け出した頃、ロバートは皇帝陛下に謁見していた。
「ロバート、私の耳に入れたい話とはなんだ。」
フランネア帝国の頂点に立つ皇帝リチャードは、豪胆な性格で貴族的な遠回しな言い方を好まない。
皇帝の気質をよく知っているロバートは単刀直入に話し始めた。
「実はティアナが継承者とされているプロスペリアの宝玉ですが、現在はマリウス国王陛下から私が預かっています。」
話がプロスペリアに関わる内容と理解した途端に皇帝の目の色が変わった。それに気を良くしたロバートは、内心ほくそ笑みながら続けた。
「ティアナに持たせるよりアマンダに持たせた方が都合が良いと思われませんか?」
それは事実上プロスペリア王国の宝玉をフランネア帝国が奪うということだ。
リチャードは考えた。実際、プロスペリアの宝玉はプロスペリア王家の血を引くものでないと持っていても意味はない。だが、それを知る者はプロスペリア王家の者の他はリチャードしかいない。リチャードも皇帝を継ぐ時に父から伝え聞くまで知らなかった事実だ。
だから、多くの人間は宝玉さえ持っていれば膨大な魔力が使えると思っている。実際はそうではないのだが。
リチャードは事実が誤認されていることを承知の上で、ロバートの陰謀に加担することにした。最終目的のプロスペリア王国、ひいては魔水晶鉱山が手に入れば重畳。プロスペリアの宝玉はフランネア帝国の中でも広く認知されているため、象徴としての価値さえあればいい。
プロスペリア王家の血を引く者でなければ結界は張れないだろうが、魔水晶鉱山を手に入れた後、そこで獲れる質の良い魔水晶を使って結界を張ればいいのだ。
「どうするのだ?」
「プロスペリアの宝玉は継承者と血の契約をするのだそうです。その契約者をアマンダにすればいいだけです。」
そのような前例がないことをすればアマンダはどうなるかわからない。ロバートは自分の娘がどうなってもいいのか‥‥?
少しそう逡巡したが、どうでもいい、と考えを放棄した。
「ティアナはどうする?」
「あの娘には婿を取ってルスネリア公爵家を継がせます。フランネア帝国に根を下ろさせればマリウス国王陛下にとっては可愛い姪とその家族の住む国。めったに手出しはできますまい。」
「なるほど、人質に取るのだな。」
「ティアナも私がここまで養った分の恩を返したいと言っていますからね。婿取りにも協力的ですよ。」
「わかった。何をすればいい。」
「まずは、皇太子殿下とティアナの婚約を解消させましょう。書類はこちらで準備してありますので皇帝陛下と皇太子殿下ご両名のご署名をお願いいたします。」
「わかった。」
こうして準備された書類は、ウィルバートの抵抗も皇帝の命令の前では意味をなさず、即座にルスネリア公爵邸に引き返したロバートによってティアナの元へ届けられたのであった。
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今回短くてすみません!




