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「兄弟若しくは姉妹の三角関係」のその後

「やっぱり、ここにいたんだね」

 男は白い花束を持って、墓石の前にしゃがみ込んだ。

 女はそれに気が付き、慌てて立ち上がる。

「あ、いや、ごめん。邪魔するつもりはなかったんだ。僕が帰るから、君がここにいてあげて」

「いえ……そういう訳には……私はそろそろ帰ろうと思っていたところだったから……」

 彼女のいなくなった墓石はどう見ても掃除途中、と言ったところで到底そろそろ帰ろうと思っていたようには見えない。

「じゃあ二人でお参りしよう。その方が××さんも喜ぶよ」

 男はにかりと笑った。

 女は渋々、と言った表情で墓の前にしゃがみ込んだ。

 2人は並んで手を合わせる。


 数秒後、男は顔を上げた。女はまだ手を合わせている。

 その横顔はとても綺麗で……男はじっと見つめていた。

 すると、目を開けた彼女と視線が交差する。

 どちらともなく、目を逸らした。

 数秒。


 先程とは違い重い空気が辺りに漂う。

「お兄様はなぜ私の代わりに死んでしまったのかな……」

 泣きそうな声で女は呟く。

 男は目を伏せた。

「それは、きっと、君のことが好きだったんだろう……」

 女は唇をぐっと噛み締めた。口からつうっと血が流れる。

「私は、これから、どうすればいいんでしょう……」

 途方に暮れたような女を、男は慰めたくて、抱きしめようとして、やめる。

「お兄様は私にどうして欲しかったんでしょう……」

 男は女の手を握ろうとして、手を伸ばし……やはりピタリと止まる。

 しかし、女が素早く手を伸ばし、亀のように引っ込んでいく男の手を掴んだ。


「今日だけ、今日だけだから……」

 そう、涙声で、男の手をぎゅうっと強く握る。

 男は押し殺すように泣く女を壊れ物を扱うかのように優しく抱きしめた。

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