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「兄弟若しくは姉妹の三角関係」

 私は彼のことが好きだ。

 彼と初めてであったのは、2年前の夏。近所の公園だった。

 風に飛ばされ、木に引っかかってしまった風船。その風船を木に登り、取ろうとする彼。

 初めは優しい人なんだな、とただそれだけだった。

 いつからだろう?公園に毎日足を運ぶ私に彼が話しかけてきたのは。

 私自身は突き放していたつもりだったけれど、彼はしつこく話しかけてきた。

「へぇ、じゃあ同じ高校を受験するんだね、そこで会えるといいなあ」

 と向けてきたきらきらとした笑顔は今でも覚えている。

 でもそれも今日で終わり。

 お兄様も彼のことが好きみたいだから。私は邪魔者なんだ。

 だから、消えなくちゃ。

 消えなくちゃいけないの。

 私は……

 偽物だから。


 ・


 俺は彼のことが好きな訳じゃない。

 彼と初めてであったのは2年前の秋。どこだったかは忘れた。だが俺と彼が正面から向き合っていたことだけは覚えている。

 トラックか何かに轢きずられて死んでしまった猫。その猫を抱き上げ、地面に埋める彼。

 初めは偽善者なんだな、とただそれだけだった。

 いつからだろう?いつもついてくる彼に俺が話しかけたのは。

 彼はつれない反応を繰り返していたが、話していくうちに、態度が緩和していくのがわかった。

「何故、人間は殺し合うのだろうね」

 そうぽつりと呟いた顔は今でも覚えている。

 俺は好きな人を殺してしまう。

 そうであれと作られたのだ。

 だから、俺は彼のことが好きなんかじゃない。

 絶対に。


 ・


 このクソ田舎ではどんなに小さな事件も瞬く間に広がっていく。僕は彼女が自殺未遂を図ったと耳にした。慌ててここらで唯一の病院に駆け込む。彼女が入院するならここしか無いはずだから。

 病室では彼女が横になっていた。目立った外傷は……ない。良かった。無事なようだ。

 ああ、あまりにも慌てていたから何か持ってくるのも忘れてしまった。

 怒られるのを覚悟しながら、俺は彼女に話しかける。

 彼女は呆然としていた。

 話しかけても、反応はない。

 表情も動かない。

 ただ一筋、彼女の目から涙が零れ落ちた。

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