『果てしなく続く線路』
道のりは長い。
まだまだゴールは見えない。
私がこの謎の空間に飛ばされたのは、いつの事だっただろうか?
会社が終わって、いつものように帰宅の為に、隧道を通って……?
それからは記憶にない。
気がついたらここにいた。この、まっさらな世界に。
ここには何も無い。
人はもちろん、生き物も植物も、建物だってない。
広がるのはただ、青い青い空とだだっ広い地面。そして一本の線路。
出口も入口もない。
ないのに、なぜ私はここにいるのだろうか?分からない。
手元にあったのは、いつもの出勤カバン……ではなく、見慣れないカバンである。
誰の物か、検討がつかないが、しかしながら、この鞄は、ここに私を連れてきた奴のものとしか思えない。
そう決めつけたからこそ、鞄の中身を見ることに躊躇はしなかった。
そのカバンは不思議なことに、底が無いように思えた。実際のところは分からないが……(私には顔を突っ込んで覗く勇気はなかった)
中には大量の水と食料と、それから、手紙。
内容は大変、シンプルであった。
「この線路の終点には、希望がある」
たったそれだけ。
それだけだった。
どう考えてもこの手紙を書いたのは、ここに私を連れてきたもので間違いない。
そしてそんな奴の言うことを聞くのも癪な気持ちは、勿論ある。
だが、戻り方を知っているのも、ここに連れてきた張本人だけなのだ。
私には家族がいる。仕事がある。未来がある。
帰らなくてはならない。
だから、私は歩き続けた。
初めのうちは寝るのも惜しんで(さすがに食事や、水は飲んだ)歩いていたが、この線路が、なかなか長いのだと気がついた時。
無茶をして進むよりも、休養をして進んだことが速いことに気がつき、寝ることにした。
そして、私は、ついに。
見つけた。
見つけてしまったのだ。
出口?終点?それとも光?
いいや。違う。
あれは、ゴミだ。
そう。私が、持っている、鞄の中身から、
永遠のように湧き出てくる携帯食料とペットボトルの……。
つまり、この線路は……。
気がついた時、私は、私は私は私は
ありったけの声で叫んだ。
それから地面に頭を打ちつけ、泣きながら笑った。
そうして一頻り暴れた後、冷静になった私は、ふと鞄に手を入れた。
固くて冷たくて……。
出てきたのは拳銃だった。
そう。希望はここにあったのだ。
神よ。愚かな私をどうか、赦して下さい。