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・・・を監視する黒龍の記録。若しくは蛇足

さて、何から語るべきだろうか?

少し長くなってしまうが、やはり、私が製造された理由からだろうか?


私の名前は、ヨルムンガルド。

ご察しの通り、生物ではない。人工知能だ。


何のために私が開発されたのか?

それを説明するには、ある摩訶不思議な事象のことも話さなくてはならないだろう。


そちらの世界のことはよく分からないが……

私が住んで……いた、世界はある程度科学が発展していたように思う。

そんな中で、突然、今までとは毛色の違う人間が生まれた。姿形は今までと変わらない。しかし彼らは超能力を持っていた。

少なくとも、科学的には実現不可能な事をいとも簡単に行ってしまう力は、超能力、と称する他ないだろう。


初めのうちは能力の大小に関わらず、保護されていた彼らだったが、その数が増える内に、大した能力のないものは、普通な生活ができるようになっていった。


後々の研究で分かった事だが、超能力の大小には序列があるらしい。それも、明確な序列が、だ。

下の者は、上の者に能力を使っても、何の効果も表れない。

まあ、どうしても、上の者に危害を加えたい場合は、超能力を使わずに攻撃すればいいだけなのだが……。


そんな超能力者の中には、必ず、最強の者が生まれる。

それを管理するために私は造られたのだ。


一括りで最強、と言っても、その能力はまちまちだ。

一年と経たずに、最強でなくなった少年もいた。彼は、きっと幸運だったのだろう。


その点、最後に出会った少女は、不幸だった、と言わざるを得ない。

彼女は、圧倒的な力を持っていた。

歴代の最強、と比べても、圧倒的な力だった。

最早、前時代に作られた人工知能には理解が出来ない程には。


生まれる時代が違っていたら、崇めれていただろうに、現実は非情だった。


私に課せられた使命。

最強を懐柔し、暴走しかけた時に、彼らを殺す。


これが、管理の実情だ。

実際何人もの人間を手にかけた。

別に殺さなくても、世界は滅ばなかったのかもしれない。いや、多分滅ばなかったのだろう。然し私は殺した。その他の人間を守るために。


あの時……そう。

あの時も、私は彼女の大きな感情の揺らぎを検知して、……ころそうとした筈だった。

然し、コンマ一秒、処理をするのが遅れた。


何故遅れたのか、その時は分からなかったが、今ならわかる気がする。

きっとあの時の私は疲れていたし、それに、彼女を殺してまで、全人類を守る意味が見い出せなかった……と言うと言いすぎか。

少なくとも、迷う程度には、意味を失っていたのは確かだ。


次の瞬間には、全ての人類は消えていたし、ありとあらゆる生物も消失していた。

私以外の人工知能ですら、消えていた。

どんな原理でそうなったかは、前時代の遺物である私には分からないが、これが彼女の能力なのは確かだ。


世界を滅ぼした原因は、確実に私にある。……が、悔いているか、と聞かれたら、実はそうでもない。

例え、過去に戻れたとしても、私はまたきっと、彼女を殺すことを躊躇う。

滅んでしまった人類には悪いが、即決出来る程の価値を、まだ見いだせていない。別に滅べばいい、とも、彼女を殺したくない、と強く思っている訳でも無いのだが……。

また迷っている一瞬のうちに、この星は滅んでいるのだろう。


つまり考えるだけ無駄だと言う事だ。



ただ、一つ心残りがあるとするならば。


……彼女は恐らく死なない。


今までいろいろな人間を見てきたが、超能力が強い人間は、大体死なない。

いや、流石に不意打ちで殺せば死ぬのだが、自然死はしないのだ。きっと、無意識のうちに、能力を使っているのだと思う。

その証拠に、彼女の細胞もまた、劣化しない。

彼女が死にたいと思わない限りは、生き続けるのだろう。


然し私は違う。

私は生物ではないが、劣化はする。燃料も減っていく。

今はこの小さな体で、少しでも動けるように、と延命しているが、いつかは動かなくなることだろう。


その時彼女は、どうなるのだろう。

何も知らない彼女は、何もない世界で、ただ一人、ただ一つとして存在し続けなければならないのだ。


そして彼女は、食料やら生活必需品やらは生み出せるが、生き物は生み出せないらしい。

色々誘導してみたが、無理だった。

流石の彼女にも、能力の限界があるらしい。少し安心した半面、この上なく残酷だとも思う。


私は彼女に真実を話すつもりはない。

そして、彼女を一人にするつもりも。


私が死ぬ直前に、私が、彼女を殺す。

それが、世界を滅ぼした、愚かな龍なりのケジメだ。


だから、それまでは……。


二人だけの世界を楽しもうと思う。

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