「とあるカップルの地球最後の一日」
今日、地球が滅亡する。
それは実は何十年も前から予測されていた事だった。
だからこそ各国の研究機関は宇宙に移住する計画を進めていた。
日本の移住計画に携わっていた男は、研究に大いに貢献した。
しかしながら日本国民全員を宇宙へ連れて行けるはずもなく、地球が滅亡するという事実が国民に告げられることの無いまま、選別作業が行われた。
男は研究に貢献した特権として自分ともう1人、宇宙に移住させる権利を手にした。
男は喜んでその事を彼女に話した。
彼女と男は恋人同士であった。
男にはもう他に家族はなく、迷う余地なんてなかった。
彼女はうん、うん、と頷きながら、黙って話を聞いていたが、全ての話を聞いた後に、
どれぐらいの人が助かるのか?と問うた。
男は正直にその質問に答えた。
彼女はその少なさに呆気に取られた後、悲しそうな顔をすると首を振った。
私なんかよりも、もっと人類の未来に役立てる人が行くべきだわ。例えばそう、貴方のような……と。
男は目を見開いて、それから、申請書類をぎゅっと握った。
そして困ったような顔で、そうだね、君はそんな人だった。だから好きなんだ。と、笑った。
そして地球が滅亡する日、彼女は男が無事に宇宙に行けるように、と祈っていた。
しかし、彼女の家に男はやってきた。
僕もここで死ぬことにするよ、と男は一言。
女は泣いて何故?と繰り返していたが、男が黙ってただただ笑っているのを見て、本当は嬉しいと一言漏らした。
そして滅びゆく地球の上で2人は宇宙へ発射されたロケットを見守った。
そのロケットは天高く上り……爆発した。