4. 問題発生
「ぜんっぜん、眠れなかったわ」
昨夜、リュシアンが帰ってからしばらく、妖精さん達と戯れてから、転移で戻った。
帰るとアレンが跪いてこうべを垂れていた。
「んえ?ちょっと、アレン?」
「……お帰りなさいませ、次期女王候補」
はぇ?? なんかいつもと違うくない??
「ちょっと待ちなさい、アレン。話が飛躍しすぎでなくて?」
「……陛下がお決めになられましたので。ジルベール殿下、アルベール殿下とシスティタニア殿下の御三方で、改めて王位継承者を決めると」
待ってくれ、いや待って下さいアレンさん。帰って早々に変な冗談言われても困るんですよ。
「冗談だと思ってます?違いますからね。直々に俺を呼び出してお伝えになられたんですから、冗談ではありませんよ」
……それは、ガチのやつ。国王である父に一臣下が呼び出されるとか、マジのガチだ。
しかし何故かな?私……王位継承、言っても第三位のはずよね?
「お父様とお話がしたいのだけど?」
「無理だと思いますが……?」
疑問符に疑問符を返さないで下さい。
でもこれほんと取りつく島もないね。
「明日の朝10の刻に謁見の間に出陣せよとのお達しであります。それではまた明日。逃げないでお待ち下さいませ」
逃げないよ!私どんな問題児よ!?
そんなツッコミをする暇もなく、アレンは下がってしまった。
あーはいはい、どうせそうですよね。アレンは私の従者である以前に、国に、王に仕えているんですもんねー。ちぇっ。
そして現在、朝になりまして9の刻。
朝食を済ませて、ドレスに身を包んでおります。
やだなぁやだなぁやだなぁ。お父様と一対一で話すのはいいけど、家族四人で話すのはもう家族での枠ではなく、王家会議である。合わせてお兄様二人は最近会ってもすらいないはず。
本格的に面倒だなぁ……。
「殿下、入られます」
うう、憂鬱だとか顔に出してられないな。
完璧なスマイル私は王女システィタニア笑えええええ!!
謁見の間に入れば、国王の椅子に父が座して、左右に大臣らが列をなし、父の前には兄二人が跪いて頭を下げている。
あああ!こう言うやつかぁ!大臣、宰相もいるのね!!! 内心とはかけ離れて、笑みを保ちながら私も中央へ進み、二人の兄の間に入り跪き、
「待て。システィタニアは面をあげよ」
なぬ?あ、返すのは不敬だね。父親といえど、国王陛下だもの。
「はっ」
「良い。みな楽にせよ」
いつもと違う、威厳たっぷりの陛下に戦々恐々。
でもやっぱかっこいいなぁ、お父様。
それにしても、楽にしていいと言われたけど、私の両隣は顔を上げないな。
「システィタニアよ、そなたはこの度この間に呼ばれた理由は知らぬな?」
「はい」
「そうだろうな。では説明をしてやろう。そなたの兄二人が、王位継承権を放棄した。よって、システィタニアを次期女王とすることが決定したのだ」
なんですと!?
アレンに聞いてたより状況がよっぽど酷いんですけど!!
なんで王子二人が王位捨てちゃうのよ!むしろ取り合えよ!
「発言をお許し願えますでしょうか」
「許そう」
「第一王子は、既に王太子として王位を継ぐことを約束していたと記憶しております。また、それでなくても第二王子がその助役としての義務を担っていたはずですが、それを許されたのはどういった了見でしょうか」
てかなんで兄二人は顔を上げないんだ。おい。
「うむ。勿論、二人には私から罰を言い渡した。放棄したこと自体が問題であるのも同義だ。故に、そやつらは王位を継ぐ器すらないと判断した。理由がどうではない。それらはもはや国の恥だ」
「……お父様、言い過ぎです」
「すまない。だがこれは決まったことだ。第一王子は冒険者になることを望み、第二王子は国を出ると言う。システィタニアには苦労をかけるが、次期女王としてこれから学んでいって欲しい。大臣達も、システィタニアならばと納得している」
成る程……。
いや成る程で済まされないけどね!!
お兄様たち、一体何があったの!急に冒険者になるだとか、国を出るだとか……ん??
冒険者……?リリアカーネと、出会ってから?
国を出る……セーラと別れたすぐ後に?
いやまさか。そんな、まさかね!
「陛下のご期待に添えるよう、全力で完うさせていただきます」
「うむ。では、これにて解散!」
ほんと、どうなってんのよー!!
**アレン
「ほんっっとうにすまない!」
「ごめんね、システィ……」
「お兄様たちの馬鹿!大馬鹿よ!どうしてこれまで積み重ねてきたものを崩してしまうのですか!?」
システィ様の自室では、王子二人による謝罪が繰り広げられていた。
だがシスティ様の怒りはもっともである。
お二人は、王位と言う名の縛りをシスティ様に押し付け、自由の身となったのだから。
「本当に酷いです。私はこの国が好きでも、王になることは望んではいませんでしたのに……」
「あぁ、知っていた。だが、お前は俺たちの誰よりもこの国を愛しているから。きっと出来る」
「出来る出来ないの問題ではないのです!お兄様は何もわかっていらっしゃらない!」
「落ち着いてシスティ。君なら上手く国を治められる。もしも世継ぎを産めないというなら、それは私が背負おう。君は私の子供が生まれるまで、この国を愛してくれれば」
「そういう問題ではありません……」
二人の兄達は、システィ様の何も理解されていない。
この場で俺だけが真に理解しているのだ。
システィ様はハイエルフだ。
長い時を生きる、嘆きの種族エルフ。陛下もご存知であるはずなのに、なぜお止めにならないのか。
この国の王族の身勝手さには呆れてしまう。勿論システィ様は別だ。
この王子達は優秀だの劣っているだの言っているが、システィ様に比べれば虫の子同然で、どうとでもなるというのに。
それでもいい。システィ様が女王となられれば、システィ様の望む世になれば。全てがシスティ様のものになれば。
俺は何がどうだっていい。
世界の全てはシスティ様のものになれば、それでいい。
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アレン一番歪んでる説(`・∀・´)