Vol.8 『ネタ』
まだ8話なのに、『ネタ』がない……
そんなときこそネタがないことをネタにする。
次の話が思い浮かばないとか、続きがどうにも出て来ないとか、物語を書くのにもっとも大事なことがサッパリだ!ってことありません?
そういうときは、別のことを想像するんですよ。
昨日、見た夢の話とか。感情繋がりで妄想するとか。
奴隷について考える――その話を書いていたはずなのに、あれよあれよと愛憎劇になっていくのをどう修正するべきか悩んだとき、愛と憎しみの経験はないが憎しみはあるんで最近ムカついたことをなんでムカついたのか、そのときどんな思いが胸の内でとぐろを巻いていたのか、気持ちの整理をするんです。
で、続きは書けました。でも気分が乗らないから投稿してないんですけどね、アハハ。
あと、夢を見たときは、夢って不思議の山ですからここからヒントを得ることが少なくないです。ついでに書いて、投稿したりね。夢は記録してあると便利かもしれません。
温泉地のとある旅館で、カマボコに齧り付いている私に女将が言った。
「うちは混浴風呂しかありませんからねぇ…」
眉をハチの字にし、着物の袖で口元を隠して思案する彼女は自分の母と同年齢には見えず、その色っぽさにカマボコを齧る手も止まった。
私は、女将を安心させたくて「それが醍醐味ってやつですから、気にしませんよ」と素早く口内に残っていたカマボコを飲み込んで言った。
しかし、女将は首を横に振る。
「だってね、今日のお客さんはあなた以外は男性しかいなんですよ。流石に、酔って羽目を外したおじさん達の中に放り込めませんもの」
「いやいや大丈夫ですって。温泉は24時間入れますでしょう? 寝静まったときにでも入りますよ」
また笑みを見せて言ったが、やはり彼女は納得しない。それがこの旅館の売りではないのかと疑問に思い始めたとき、彼女は何かを思いついたのかポンっと拳で手のひらを叩いた。
「そうだわ! 私も一緒に入りましょう! そうすればあなたを見る目の数も減りますでしょう?」
女将は、そうだそうだと頷き、入浴の準備をするため部屋を出て行った。
その後ろ姿を茫然と見つめながら、私は妹から出掛けに言われたことをふと思い出した。――「あそこの女将さん、嫉妬深くて惚れっぽいんだって」―― 一体、どこから聞いてきた話なのか、けれども女将の唐突な訪れにも理由がつくな、と一欠片になったカマボコをぽいっと口に投げ入れた。
妹――からは付け加えたものですが、あとの部分は夢で見た内容であります。
すごくカマボコが美味かったこと、何故か意気揚々と温泉に一緒に入りたがる女将、なんでそんな夢を見たのかと起きてから悩む自分に理由を付けるための後付……
いつか『ネタ』として、『ネタ』の『ネタ』にもなるかもしれないモノは、記憶しておくかメモっておくか作品にして投稿してしまうか、ただボケっとしているより何かしら書いていると、ふっと降りてくるものもありますから。





