6、側にいてほしい男(朱里)
夜明け前――
ふっ、と・・・急速に意識が浮上する。
私の目覚めはいつもこうだ。
お父さんが亡くなってから。
朝の微睡みなんてものは、私にはない。
早朝誰よりも早く起きて、手伝いをしないと・・・・。
目がさめて、何よりも先にそう自分に言い聞かせる。
「・・・・・・。」
そして、再び・・・現実に返る。
そうだ、もう・・・就職したんだった。
寺を出て、今は1人暮らしなんだ。
早朝から手伝いをすることは、なくなったんだ。
緊張しかけた体から、力が抜ける。
そして、ふと。
ここが自分のマンションじゃなくて、自分のベッドじゃないと気がついた。
夜明け前の薄闇の中、ライトがついている窓側のテーブルへ目をやると。
バスローブ姿でソファーの上に胡坐をかいて、一心不乱に絵を描いている、氷室・・・匠が目に入った。
そこには、いつものおちゃらけた、ゆるい彼の姿はなく。
真剣な目の、匠がいた。
これが、本当の彼の姿なのだろうか――
昨日・・・あれから私達は、横須賀から品川までもどった。
まだ余裕で最終の新幹線に間に合う時間だったので、そのまま神戸に戻ると思ったのだが。
駅の近くのクラシカルなホテルを彼は指さした。
「もう、ライブハウスのイメージ、頭の中に溢れかえっててさー。今日、ここ泊まって、まとめたいんだけどー。」
あ、横須賀で泊まる予定だったし。
多分、本来の予定なら打合せの後、イメージをホテルでまとめる作業をするはずだったのだろうし。
だけど秋ちゃんと会った私の様子を見て、横須賀から離れるという気を遣ってくれたにちがいないから、私は彼の意見に頷いた。
ホテルに入り、フロントへ行こうとすると、匠が私の腕をつかんだ。
「こんな遅い時間、若い女の子が予約もなしに部屋ありませんかなんて言っても、ホテル側は怪しむだけだからー。俺がチェックインするからいいよー。ソファーで待ってて?」
それは、秘書としてどうかと思ったのだが。
確かに、夜遅い時間に予約もしていない飛び込みの女性客は、ホテル側は歓迎してくれない。
私は頭を下げて、彼の荷物を預かり、ソファーに素直に座った。
多分、緊張していたのだろう・・・ソファーに座ると、どっと疲れが押し寄せてきて。
一気に体が重くなった。
暫くして。
匠に、揺り起こされた。
どうやら、眠ってしまったようだ。
自分の失態を謝ろうとしたが、その前に、大丈夫と優しく言われ。
私のハンドバッグを持って、立ち上がらせてくれた。
荷物はポーターが運んでくれた。
眠りかかっていた私が心配だったのか、匠が部屋まで付いて来てくれた。
やはり、自由人で我儘ではあるが紳士なのだと思い、感謝を伝えようとしたが。
え。
何故か、ポーターが・・・私と匠のバッグを置いて、一礼をして部屋を出て行ってしまった。
そして、部屋には・・・大きな、ベッド・・・・。
多分、大人3人は眠れるだろうサイズ。
え。
驚いて、匠を見ると。
「ふふっ、だーかーらー。寺ちゃんの側にいたいって、俺言ったでしょー?」
固まる私を、匠はバスルームへ押し込め。
「早く、シャワー浴びてきなよー。先に寝ていいから。寺ちゃんが嫌なこと俺、する気ないし。たださ、側にいたいだけー。それに、俺のこと気にしないで。俺、これから作業するから、多分喋んないし・・・もう、イメージできてきてるから。」
ドア越しに、匠がそう言ったと思ったら、鞄を開ける音が聞こえてきたので、本当に仕事をするんだと納得した。
本当なら。
こんな、仕事関係者と、一緒の部屋に泊まることなんてありえないし。
いたたまれないはずなのに。
シャワーから出た私は、テーブルに向かって集中している彼の姿を見て。
違和感なんてどこにもない事に、気がついた。
むしろ・・・その匠の存在は安心感を与え、私はベッドに入るとあっけないほど直ぐに眠りに落ちた。
テーブルに向かっていた匠の肩から、一気に力が抜けたのがわかった。
そして彼は大きく伸びをすると、何故かこちらを振り返った。
その予想外の行動にどうする事も出来ずに、私は彼と目がバッチリ合ってしまった。
「あれ?起きてた?・・・・さっきまで、良く眠っていたのにー。」
「は?・・・匠、だって。デザイン描いていたのに、なんでそんなこと・・・。」
わき目も振らず、テーブルに向かっていた先ほどの彼の姿を思い出す。
「うん、だけど。今日は、描いていても、時々寺ちゃをん振り返って見てたから。なんか、そこで寺ちゃんが寝てるってだけで、俺・・・凄く安心してさ。ゆったりとした気持ちでできた。寺ちゃんって、本当に不思議だよなー。」
ニコニコと笑う匠に、私は同じ事を感じていたのだと驚かされた。
だけど、何となく照れ臭くて。
「お、お茶でも飲む?」
そう言って、ベッドから起き上がった。
だけど。
「うーん、お茶って言うより、俺ひと仕事終わったからー、ビールが飲みたーい。」
「ええっ、朝から、ビール!?」
「うん、いいじゃん。まだ、4時半だし。この部屋15時までにチェックアウトすればいいように、とったから。別に、今日帰社しなくてもいいように、してあるよー?」
まあ、そうなんだけど・・・。
私が躊躇っているうちに、匠は冷蔵庫から瓶ビールとコップ、栓抜き、つまみの豊富にそろえられているバスケットを器用に持ってきた。
「ホラ、早く早くっ。飲むよー。」
朝からビールというシュチュエーションにテンションが上がったのか、匠がはしゃいだ声をだして、私をせかした。
不思議と、彼のこういうところは嫌いじゃない。
私がテーブルに行くと、ワクワクした顔で私にコップを持たせた。
だけど私は、ビールを注ごうとした彼を一旦制した。
「何だよぉ。焦らしプレー?」
「そうじゃなくて。デザイン見せて。先に。酔っぱらわないうちに、見ておきたいから。」
私がそう言うと、彼は口を尖らせながらも素直にビール瓶をテーブルに置いた。
鳥肌がたっていた。
凄いなんてもんじゃない。
「寺ちゃん?どしたー?」
デザイン画に見入って黙りこんだ私の顔を、不思議そうに匠はのぞき込んできた。
「私・・・・。」
「ん?」
私は、デザイン画から顔を上げて、匠の顔を正面から見据えた。
匠が私の顔を覗き込んでいたせいか、距離が案外近くて少し焦ったけれど。
「私っ、この仕事・・・匠の作品が出来上がるところまで、ちゃんと見届けたい・・・ああ、じゃなくてっ・・・匠の、この作品が完成するのを手伝いたい!!これ、凄い!!絶対に、成功させよう!?」
上手く気持ちを伝えられないのが、もどかしくて。
支離滅裂だけれど、とにかく、彼の作品を成功させたいと思った。
だけど、私の言葉に対し、彼は黙りこんでしまい。
ああ、出過ぎたことだったかも・・・と、彼との温度差に、少しヘコんだのだけれど。
何故か彼が、静かに私の両肩に手を置いた。
って、距離は近いまま。
って、近い!
本当に、近いっ!!
とりあえず、距離を取ろうと思い、何気なくテーブルの上に目を走らせた。
「ちょ、匠!ビール!!ビール飲むんじゃなかったの!?」
そうだ、ビールを飲もうとしていたんだ。
これで、距離がとれると安心したのもつかの間。
肩に置かれた匠の手が・・・1つは私の背中へ、そしてもう1つは私の後頭部へ回された。
「・・・ビールは、もう、どうでもいい。酔っぱらわないうちに、先に言っておきたい。」
何故か、さっきのデザイン画作成中の真面目モードで話し出す、匠。
「・・・・え、えーと?」
後頭部をがっちり押さえられて、目が逸らせない状態の私。
「さっきも言ったけど。いや、ずっと、ハッキリ言い続けているけど。2人っきりでちゃんと告白していないのと。寺ちゃんはハッキリ言わないとダメだと悟ったし。だから――俺の作品が出来上がるところまで見届けるんじゃなくて・・・・俺が死ぬまで、きっちり見届けてほしい。」
「は?」
いきなり、命の重さがテーマか?
「だからっ。俺、寺ちゃんよりひとまわり上だし。絶対俺の方が先に死ぬと思うんだよね?だから、俺は寺ちゃんが死ぬのを見届けられないと思うんだよね?結果、寺ちゃんが俺を見届ける事になると――「その、見届けるのは・・・ひっそり、こっそり、望遠鏡とかで、遠くから見守るってことで、いいのか?」
「!!!???っっっ!!!!ダ、ダメだよっ。ち、近くでっ。1番近くで俺を・・・じゃなくてっ。寺ちゃん!俺の奥さんになって!!側にいてほしい!!今みたいに、寺ちゃんが寝ていても、側にぬくもりがあったら、俺、滅茶苦茶安心できる!!こんなことって、なかったんだっ。もう、寺ちゃんと、俺、離れられない!!」
「・・・・・・。」
いきなり、プロポーズって・・・。
「返事はっ!?」
「・・・・・・。」
えーと。
「寺ちゃん、返事!!」
何か、喉が異常に渇いて来た・・・。
「と、とりあえず、ビールのもう?」
「ダメッ!返事しないと、ビールあげない!!」
テーブルの瓶ビールを、匠が抱え込んだ。
「返事って・・・・断りの、返事でも、ビール――「ouiって言うのしか、返事じゃないから!!」
「ええっ!?フランス語!?」
「そう!」
驚く私に、匠が、鼻をふくらませて返事を迫る。
って・・・フランス語って、意味不明。
そもそもこの人、私よりひとまわり上なんだよね・・・。
まるで、子供だ・・・。
だけど。
私は、何だか可笑しくなって、クスリと笑ってしまった。
そして。
私が、笑った事に抗議しようと開きかけた匠の口に、私は。
自分の唇を、寄せた――
ボトッ、とビール瓶が転がった。
慌てて、拾おうとしたのだけれど。
手をつかまれ、強く抱き寄せられた。
唇がピリピリするほど、激しくむさぼられる。
舌が・・・逃げ場はないぞ、といわんばかりに絡められ、上がる息。
優しいけれど、熱く這いまわる指に。
鼻からぬける、私の甘い声。
こんな自分に驚いて、愕然とする。
こんな事をしている自分が。
こんなに彼を求めている自分が。
「寺、ちゃん・・・ベッド、行こう。」
しわがれた、欲望を孕む彼の声に、私は体を震わせて・・・かすかに、頷いた。
私を抱き上げようと、彼が体の向きを変えた。
視界に倒れたビールが入る。
「た、くみ、ビールが・・・。」
倒れているから、なおしてと言おうとしたのだけれど。
何を勘違いしたのか・・・もぉ、寺ちゃんはーと彼が呆れた声を出した。
そして、彼が倒れたビール瓶をラッパのみをして。
それを私に口うつしをして、飲ませた。
苦い味が、何故か絡まる舌で、甘く感じ。
いつまでも、ソレを感じたくなった。
匠に抱きあげられ、自然と彼の首に腕を巻きつけていた。
そして、私も。
彼にずっと、側にいてほしいと感じている――
そんな自分の心に、気がついた。
シャワーから出て、何か飲もうかと思い、冷蔵庫を開けたら。
私のスマホが鳴った。
こんな時間に電話がかかってくるというのは。
「はい、寺島です。」
『三浦だけど・・・今いいかな?明日の予定変更なんだけど。』
「お疲れ様です。はい、大丈夫ですが、少し待っていただけますか?」
私は麦茶のポットを取り出し、冷蔵庫を閉めた。
麦茶のポットを置いたテーブルと、ソファーの間に直接床に座り、業務手帳を取り出す。
『ああ、こんな時間に悪いなぁ・・・国井専務が、ぎっくり腰だと。明日の阪神ドラッグの、有馬店舗のオープン式典無理みたいなんだよ。常務か、最悪・・・取締役クラスで空いている役員いなかったか?』
三浦秘書室長のいる場所は、接待なのか電話の向こうで飲み屋の喧騒が聞こえた。
そういえば、今日は午後から氷室グループの室長会議で、直帰だった。
出先なら、スケジュール確認は無理だろう。
スマホを一度テーブルに置く。
そして慌ててパソコンを開き、いくつかパスワードを入れる。
社外秘なのだが、入社して秘書室に配属された時に、自宅のパソコンを秘書室とオンラインでつながるようにした。
これは、三浦室長の指示で、氷室会長も許可している。
会長付きは秘書室では、三浦室長と私だけで、こういう役員の緊急時のスケジュール調整は私たちの担当業務だ。
役員の明日のスケジュール画面を出し、スクロールさせていくが・・・。
私はため息をつくと、スマホをとり上げた。
「室長・・・どうしましょう。明日スケジュールが空いている関連部署の役員の方は1人もいらっしゃいません。空いているのは・・・資料室の、氷室晃取締役だけです。」
『ええー、最悪だろ・・・不味いなぁ・・・どうすっかなぁ・・・。』
私の答えに、困惑する三浦室長。
氷室晃取締役というのは、氷室会長の長男である、氷室製薬社長の次男だ。
だけど、社交性は全くなく・・・神戸の・・・あまり偏差値の宜しくない私立大を8年かけて卒業し・・・2年ほど引きこもりをしていたらしい。
一応パソコンは得意らしく、資料室配属となっている。
時計を見ると、22時を回っている。
仕方がない、三浦室長もそう思ったらしく。
『とりあえず、連絡してみる。明日は俺も同行するが、寺島も同行してくれ。あと、ふり仮名をふった式典の式次第を用意してくれ・・・あと、祝辞のほうは・・・はぁ、帰宅してから俺が作るから。』
「はい、分かりました。お疲れ様です。」
そう言って、電話を切ろうとしたが。
『寺島。』
今までの業務連絡の声とは違ったトーンで、三浦室長が私の名前を呼んだ。
すると、いきなりソファーから手がのび、私は抱きあげられた。
「はい・・・。」
『明日、よかったら・・・式典が終わったら、久しぶりに飯でもいかないか?・・・返事は、寺島がその気になるまで待つって言ったけど・・・何となく、氷室匠さんに先越されそうで、俺、実は焦ってる・・・あー、確か肉、ダメだったよな?じゃあ、懐石でもどうだ?蟹は、大丈夫だったよ――「悪ぃけどー、あんたの予想通り、先越したから。ばあちゃんにも、報告済み。だから、明日の食事は無理。俺が許さないし。ああ、それから、寺ちゃんは、肉大好物だし?ただ、マズい肉は嫌だから普段食べないだけー。」
はあぁぁ。
やっぱり・・・。
どんなに、仕事のことだから、黙っていてって言ったって、無理だったらしい。
スマホを置いた隙にスピーカー機能にするわ、パソコンを見ているのに自分の膝へ私を移動させるわ・・・まったく。
『え・・・氷室匠、さん?』
「はい、もう寺ちゃんが買ってくれたセンスのいいパジャマに着替えてくつろいでる、氷室匠でーす!」
もう、頭を抱えたくなった。
しかも私がパジャマを買ったって・・・なんだかやたらと輪郭がはっきり見えるボクサーパンツで目の前をうろうろするから目障りで、仕方がなく買っただけだし。
『どう、して・・・寺島は、恋愛に興味がないって・・・。』
はい、確かに恋愛に興味はありませんでしたけど。
「どうしてって、何ー?えー、恋愛に興味が無いんじゃなくてぇ、三浦さんに興味がないんじゃないのぉ?・・・・・いてっ!?・・・・何っ?寺ちゃん、俺本当の事いったのにー。だって・・・・わかった、わかったからっ、寺ちゃん、睨まないでぇぇ・・・。」
もう、どうしようもない匠からスマホをひったくり、リアクションを考えるのが面倒になって、私は何事もなかったように話し出した。
「では、明日は準備もありますので、早めに・・・7時半頃には出社致しますの――「あー、そうだっ!知ってたぁ?俺、一応、氷室製薬の取締役なんだけどー。社内の役員一覧には載ってないけどぉ、定款には載ってるからぁ。間違いないよー。だから、条件次第では、明日式典俺が出てもいいよぉ?」
とんでもない事を、匠が言い出した。
「はぁ、これで、三浦室長も、牽制できたしー。俺最初から三浦室長は絶対に寺ちゃんに気があるって、やきもきしてたんだー。これで、俺のモノだって言えたしー。明日は、三浦室長の前で、イチャイチャしてやろー。」
「仕事中に、そんなことしたら、ここから追い出すぞっ。」
「ええっ!?そんなぁ・・・寺ちゃんともう離れるのムリー。」
あろうことか匠は、式典の代理出席を引き受ける代わりに・・・三浦室長が、今後一切私を口説かないという交換条件をつけたのだった。
はあ・・・安い、取締役だ。
品川で・・・その、あの日・・・・そういう仲になって。
何故か匠は、そのまま私のマンションについて来て。
単に送ってくれたのだと思ったのに・・・まんまと居座られた。
私の狭いベッドで2人眠るのは大変だからというのに、毎日体を丸めて私にくっついて眠る。
横浜から戻った日に、デザインの報告をするため、氷室会長のもとを訪れた匠は。
第一声、私との仲をバラし。
ジョージのライブハウスが完成したら、私と結婚すると氷室会長に宣言した。
って、まだ、結婚の返事(oui)を出していないのに。
だけど、氷室会長が滅茶苦茶喜んだ。
その反応を、驚く私に。
「匠のお嫁さんは、寺島さんしかおらんって思っとったし。いつまでもフラフラしとらんで、そろそろ身ぃ固めさせなあかんって思い立ってなぁ・・・で、NYへ行って、強引に寺島さんと見合いさせたろ、って・・・でも、見合いって言う前に、匠、寺島さんに一目惚れしたみたいやし?あんなに帰国せんって、頑張ってたのに、あっさり帰国するしなぁ・・・まあ、自然にまかせよ思て?だけど、匠、あんたやるときはやるなぁ?えろう、早よ口説き落としたなぁ?ま、結果オーライや!おめでとう!これで、私も安心や!寺島さん、匠のこと、よろしゅうなぁ?」
上機嫌で信じられないことを言う氷室会長・・・やはり、ハメられたのは、私だったらしい。
NYについてすぐ着物に着替えさせられたのも、見合いだったからだそうで・・・。
しかも、この件は、とっくに叔父も了承済みで・・・。
今度の氷室家の法要の時に、両家の挨拶をするらしい・・・。
って、何度も言うけど。
まだ、私は結婚の返事(oui)は、出していないのに。
いやそもそも、なんでフランス語!?
「って、ことでぇ。かくにーん!」
匠がそう叫ぶと、いきなりスマホを奪い私のパジャマのボタンをはずしだした。
抵抗すると。
「俺に側にいてほしいって、寺ちゃんが思ってるって・・・確認したーい。」
そう言って、匠は私の耳たぶを噛んだ。
そんなこと、とっくに思っているけれど。
なんか、匠のペースにまんまとハメられているのが、癪で。
絶対に言わないぞ。