11、伝わる思い②(匠)
俺は最初に品川で描き上げたデザインをすべて、描き直した。
寺ちゃんは、驚いていたけれど。
寺ちゃんとK大のチャペルで話をして、思いが全て変った。
その思いを一気に描き上げて、もう我慢できなくて夜明けを待って。
そのまま寺ちゃんをつれて、横須賀へ向かった。
「匠、昨日寝てないよね?品川についたら起こすから、少し眠るといい。」
寺ちゃんが心配そうな顔で、俺を見ながらそう言ってくれた。
5年前のトラウマなのか。
俺は人がいる所では、あれから眠ることが出来なくなった。
特に、自分のデザインを持っている時などは、異常に神経質になっていた。
それ以外でも、他人がいると気になって、電車や飛行機などが特に酷い。
それに、顔がお袋に良く似ていて。
未だにお袋の若い頃の作品が再放送になったり、CMで採用されたり、テレビ番組、雑誌などで特集を組まれたりで。
メディアの露出が多いため、俺の顔を見かけると雑誌記者、テレビレポーターなどが煩い。
空港、駅などではよく話しかけられる。
普段はそうでもないが眠れない時は、そういうことに神経質になる。
日本に帰りたくない理由は、それも大きかった。
ばあちゃんは、随分罪悪感を持っていたみたいだけど、そういう理由もあったので、返ってばあちゃんに悪い事をしたと思っているくらいだ。
だけど、寺ちゃんと出会って。
寺ちゃんが側にいるようになって。
まったく、そういうことが気にならなくなった。
俺は、俺だ。
そんな、気持ちになった。
寺ちゃんは、俺のことを心が広いっていうけれど。
俺にいわせれば、寺ちゃんのほうが偉大だと思う。
寺ちゃんさえいれば、俺は・・・この先、大丈夫だと思う。
この気持ち、寺ちゃんに伝わるといいな――