10、伝わる思い①(朱里)
K大からマンションに戻って、時間も時間なので、何か夕食を作ろうと思ったのだけれど。
有無を言わせず匠がラブラブモードになり、そのままベッドへ直行となった。
早朝4時過ぎから起きている身としては、かなりハードな匠の・・・・で、私はそのまま眠ってしまった。
だけど、ふと。
最近、すっかりなじんでしまった匠の温もりが無い事に気がついて。
不安になって、飛び起きた。
「どしたー。ここにいるから、大丈夫だよー。」
テーブルに向かっている匠が私に背をむけたまま、優しくそう言った。
私の心なんて、お見通しらしい。
私は何だか照れくさくて、もう一度ベッドに寝転んだ。
すると、匠がこちらへやってきた。
そして、私の顔を覗き込んで。
「俺達の、結婚式は・・・横須賀でしようかー。」
突然そんな事を言い出した。
戸惑う私に、私のお父さんに私達の結婚式を見せたいと言ってくれた。
「・・・・・・。」
8年も。
どんなに、悲しくなっても泣かなかったのに。
もう、ダメだ・・・。
昨日から、すぐに涙があふれてくる。
でも、お父さん。
これは、悲しい涙じゃない。
すごく、幸せな、涙なんだ。
だから、嫌いなんて言ってごめんなさい。
私を、この世に出してくれてありがとう。
私を、匠とめぐり合わせてくれてありがとう。
やっぱり、お父さんの言う通り・・・シュウちゃんじゃ、ダメだった。
匠じゃなきゃ、こんな幸せな気持ちになれなかった。
ありがとう、お父さん・・・。
私の思いは、伝わっていますか?