表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

ある冷蔵庫の中の風景

作者: 明衣

どうしてあんなことを言ってしまったのだろう。

冷蔵庫の中で僕は考える。


ちょっと素直に「墓穴を掘った」と言いたくなかっただけなんだ。

それまで手首の話題で盛り上がっていたら、小粋な会話の中でくらい手首になりたくなってもおかしく無いだろう?

そうは思わないかい?


いや、普通なら思うはずだ。

何故なら僕は普通なのだから。


それはさておこう。

「手首を残して埋まってくる」と言っただけで、本当に手首を残して埋められるなんて思わないじゃないか。

思わないだろう?


僕だって思わなかった。

でも、そんな常識が通じる相手じゃなかったんだ。


そして気がついたら僕は冷蔵庫の中ってわけさ。

腐らないように冷蔵してくれるのはいいのだけど、干からびるのが嫌とかで血抜きをしてくれなかったから、皿にたまった血でべたべたして気持ち悪いったら。

そのあたりもう少し繊細さを要求したいね。

それにしても、傷口を縛らなかったら結局血は抜けてしまって一緒んじゃないのかな?

僕としてもできれば瑞々しい肌は保っていたい。

次に彼女が顔を出したらそのあたりを要求してみたいね。


ちなみに、この冷蔵庫には先住者がいるんだ。

同じ階に、歩いているだけで鉢植えが降って来る彼がいる。ついに悪運尽きたところを彼女に捕まったらしい。

下の階は良く見えないけど、彼女の言葉からすると犬のタマと猫のポチがいるみたいだ。

そう言えば最近鳴き声を聞かないと思ってたんだ。

上はどうも生き物っぽくない。マネキンのかもしれないな。


どうやって見ているのかって?もう目が開くことも無いのに?

うん。それはもっともだ。でも、僕に聞かれても理由なんてわからないよ。


お。彼女が戻ってきたみたいだ。

「待った?」だって?

待ったといえば待ったかもしれないが、他にできることが無いという条件は無視しないで欲しい。


「寂しいかと思ってお友達を連れてきたんだよ」って、ちょっとまて。

どういうことだ?

何をしている?こら、鞄から出すな。

何だそれは。


「片方だけだと寂しいよね」

ん?何を言っている?おい、取り出したやつ、どこかで見覚えがあるぞ。

僕に似てる気がする。いやまあ、誰でもある程度にているといえばその通りなんだけど…

それにしても鏡に映したようにそっくりだ。











「君の相棒の左手だよ、右手君」

やっぱりか!こら、余計なことをするな。僕の意識は今右手にいるんだぞ?

左手の奴が来たら僕のアイデンティティーはどうなるんだ。

あ、こら!同じ皿に置くな。狭いじゃないか。

ほら、奴も微妙な表情をしているじゃないか。


いや、表情?やつにも意識があるのか?誰の?

「仲良くするんだよ」

って、おい。置いていくな!




…置いていきやがった。

どうしろっていうんだよ全く。

まあ、仕方ない。まずは挨拶でもするか。

よう!相棒。まさかまた会えるとは思わなかったよ。これからよろしくな。

ん?同じ手は二人要らない?彼女の関心は僕のものだ?今まで利き手として優遇されていたんだからもういいだろうって?


お前何言って、ってちょ、まて、話せばわかる。

だから、浅漬けの素に漬けるのは止めるんだ!

や、やめ………


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ