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なにも知らない
彼女は落ちた。
高いところから一気に落ちた。
「さようなら」も言わずに何かを抱えたまま死んだ。
随分前のことが最近のように思えた。
確か、彼女が死んだのは小学4年のときだった。今から4年も前のことだ。
でも、はっきり覚えてる。
俺の学校の屋上には鍵が掛かっていた。
そう、彼女は窓を飛び越えて死んだんだ。
なぜ、死んでしまったのか。
彼女は軽いいじめを受けていた。口を聞いてもらえず、ノートや物がよくなくなった。
小学4年の夏。俺は彼女に声をかけた。
「おはよう。」
笑顔で言った。それでも彼女は目を合わせずに呟いた。
「×××××××××××?」
もう、四年も前のことだ。彼女の言葉は雑音が入って聞き取れなかった。
忘れていく俺の記憶を止めようとはしなかった。




