追憶
「黒間……」ハーフアップの彼女のことを、そう呼んでいた周りの女生徒たち。それが、どうも引っかかり思わず呟く。「サラ?行くわよ」いつの間にかぼんやりとしていたらしく、友人に言われハッと我に帰る。彼女の後ろ姿を食い入るように見ていたがしぶしぶ離れる。
「そうね、行きましょう」
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不思議、どうして私は探しているのだろうか?昨日のはっきりと聞こえた囁きは誰のモノか確証もないが、勘では彼女、黒間という女生徒のものに気がしてならない。なにより、この私に巣くうモヤモヤを彼女が知っている気がしてならない。
「にゃおん」
一匹の黒猫が優雅に佇み、鳴いた。毛並みが美しくその佇まいも美しい。黒猫は日本では不吉と言われるがサラにはそう思えない。「どうしたの、こんな所で」
まず、猫は校内にいるのはおかしい。「迷い込んだのかしら?」でも、彼女にはそうは言ってられない。「ごめんなさい、私人を探しているの。アナタを助けてあげられないわ」悲しげに言えど、猫はまた一鳴きするのみだ。
「にゃおん」
スッと起き上がり尻尾を優雅に揺らしつつ、去ってゆく。時折、振り返る仕草は一体なんなのだろう?猫は一直線に進み階段をのぼってゆく。屋上へと続く階段をのぼってゆく。サラは思わず後を追う、どうしてかついて行かないといけない気がしたからだ。
ギィィイ、と軋む音を立てつつ屋上の戸を開く。猫は既におらず、ひとりの女生徒が屋上に立ち風を受けてサラサラと髪を靡かしていた。その、後ろ姿には見覚えがある。昨日見た、黒間という女生徒のものに違いない。
彼女は、サラに気づくとスカートをつまみ上げ小さく会釈した。「ごきげんよう、宮園様」
優美に微笑む彼女は、美しく二重の瞳は黒曜石のようで吸い込まれそう。何より、真っ白な素肌によくはえてその瞳と同じ色の髪はサラサラと風に靡く。
ほんのり色づいた頬に紅を引いたかのような唇。全てが、揃っている美しい彼女を見つめた。
「お忘れですか?宮園様」
風が吹く、「あ…」その言葉を私に言うのならあの囁きは彼女のもの。どうして、私にそう言うのか。
「終わらせましょうか、」
その続きをゴクリと息をのみまつ。
「この、ループを」
その言葉を聞いた瞬間全てが雪崩れ込んでくる。「あ…あ…」思いだした、私のやるべきこと。「……良夢ちゃん…」「ええ、良夢です」
メガネをかけた、地味な黒間良夢はもういない。美しい黒間良夢は、優美に微笑んで「宮園様、あなたは未来になにを望みますか?」
「私、は……このループの世界を終わらせたい…っ」
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「あなたなら、できる。この世界の勇者なのだから」
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