別れ
「ごきげんよう、宮園様」制服を着ていない美しい彼女は良夢ちゃんだ。上品な丈の長いワンピース、というよりドレスに近いのかもしれないそれをつまみ少し屈むように会釈する。私はあの日を思い出した。出逢ったばかりのあの日を。「良夢ちゃん、」その隣には、あの少女がお辞儀をしている。
「さっき、良夢ちゃんの言っていたあの人が」「ええ、知っています」微笑む彼女は美しい、そして私の手の届かないような気がした。
「彼は私の国の王子、時期に王になるんです。でも、彼はこうして国を飛び出してしまうんです。私を追って」
「王子、……」たしかに、王子っぽい人だった。……でもどうして彼は良夢ちゃんを追い、良夢ちゃんは逃げるのか。「でも、こことは今日でお別れなんです。だから、大丈夫」「…え?」
「本来の私は、ここに居るべき存在じゃないんですよ、そして彼女も」こくりと頷くとなりの少女。そう、私は気付いてたいつかはここから居なくなることを。昨日だって言っていた、『あら、またどこかで悪魔が動いているわ』と。ここに長く居すぎたわねとも。分かってた、分かってたハズなのに。
「私はアナタを気に入ってます」いきなりそう告げられて少し戸惑う。なんと返せばいいのか分からず、瞬きを繰り返す。そんな私に彼女はくすりと笑むと「ラムリート・ブラットリー」「…?」「私の真名です、困った時は私の真名を呼んでください」
たとえ離れていても、アナタの力になる。
「サラ様、アナタはこの世界の勇者です。勇者の力になることは、魔女の誇りです」そう残して彼女たちは姿を消した。
ふっと何かが切れた、とめどなく流れるこの涙は嬉しさだ。漸く、「名前を呼んでくれたのね、様はいらないといったのに」
勿体ないなぁ、私だけ知ってる彼女の魅力。すべて忘れてしまった彼女のことを。誰も覚えていないんだ。
「サラ、」「…?」くるりと踵を返して驚いた。「ここで、なにをしてるんだ?」“ヒロイン”の虜になっていた学園一の王子、葉山透。
「えぇと、涼んでる?」「そうか、僕も涼もうかな」「…うん」そっと隣に座る彼に、私は微笑んだ。
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「ラムさん、私の悪魔の魅力で心から取り込めなかった人がいるんです」
「ええ、いるわよ。悪魔でさえも心の奥底から魅了できない人間がね」
くすりと笑う、魔女ラムリート。「本来の物語が進み出したのよ」
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